■想う数だけ聞こえる音色(十翔)■

■手放せない恋のお題

 










 


「やっほー万丈目くん。お誕生日おめでとう」
アポなしでやってきた翔に万丈目は思いっきり渋面を作って見せた。
「何その顔―せっかくお祝に来てあげたのに」
翔は高校時代と全く変わらない調子でぷうと頬を膨らませる。
アポも無しで押し掛けて来ておいて何を言って居るんだか。
尤も来るだろうとわかってはいたのだが。
「お前、オレの誕生日を祝いに来たわけじゃないだろ」
「そんなことないよ。はいプレゼント」
可愛らしくラッピングされた箱を受け取って万丈目はやれやれとため息をついた。
「お前の目当てはコッチだろうが」
「うん。まあソレもあるけどね」
悪びれずに翔は笑う。
でも久しぶりに万丈目くんに会いたいなと思ったのも本当だよ、と付け加えるのも忘れない。
「まったく」
一応嫌がる素振りは見せるものの、此れはお約束と言う奴だ。
「おジャマ共、出てこい」
呼びかけると相変わらずデッキに居付いているファニーフェイスなモンスターたちが顔を出した。
もちろん翔には見えないが、万丈目が精霊が見える人間であることを知っているから特に驚いた様子はない。
『万丈目のアニキ、例の事ね』
『そんな時期なんだな』
『この間の対戦相手がノース校の近くで見たって言ってたわよ〜』
おジャマは知っていること、というか、対戦相手のデュエルモンスターの精霊たちから収集していた情報を万丈目に告げる。
この時期、その情報を翔が欲しがると知っているのだ。
「ノース校の近くで見たものが居るらしい」
「本当?!ありがとう万丈目くん!」
礼を言って嬉しそうに帰っていく翔を見送って万丈目は携帯を取り出す。
「ヨハンか?」
『あ、もうそんな時期なんだね』
電話の相手も心得たものだ。
「多分、そっちも行くと思う」
『わかってる。こっちも十代の事、宝玉獣や精霊たちに聞いて貰ってるよ』


十代。

翔がアニキと慕う男は、卒業と同時に姿を消した。
とは言っても、デュエルと精霊が居る所にこの人在り。
そう言う訳で翔はこの時期同じように精霊の見える万丈目やヨハンを訪ねて、十代が何処に居るか探すのだ。
彼の誕生日を祝うために。
翔は万丈目達だけではなく、他の皆の所にも行って十代を探す。
そのため、都合のつくものはそのお誕生日会に参加することになる。
十代は良くも悪くも皆に影響を与えたデュエリストだった。


彼に関わった多くの人間が、また十代とデュエルがしたいと望んでいる。



其れがわかっていて翔も万丈目達だけではなく他の皆の所も回るのだろう、と万丈目は踏んでいる。
まるで同窓会だ。
呆れたものだ、とは思う。

けれど自分たちも其れを楽しんでいる。



楽しんではいるけれども、翔の思惑通りに動くのも何だか気に食わない。
だから。
『今年は翔の誕生日会も兼ねてるんだろう?』
「ああ。他の連中にも声をかけている」
きっと今年は例年になく大勢の人間が集まるだろう。
翔の誕生日が十代のそれよりも一か月近く先の事だなんて知ったことか。




『「楽しみだな」』





その声は諮らずとも心底楽しげにハモった。








 

 


END

 

 




十翔
卒業後
風来坊アニキの居場所を特定するために
準たんやヨハンを訪ねて回る翔

アニキお誕生日おめでとう
正確には漫画版のお誕生日ですけども
まあアニメも一緒でいいよねってことで

お題はこちらから
恋したくなるお題 (配布)

2014.08.31

 

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