■「願いことはもうしない」(十翔)■

剣山くんをダシに十翔でいちゃいちゃ(^_^)







流れ星に願い事をしたんだ。

 

ずっと一緒に、居られますように。

 

 

「あー負けたぁ」
十代ががくり、と項垂れたのと部屋のドアが開くのがほぼ同時だった。
「あ、お帰りー剣山くん」
勝った翔は扉に向かってひらひらと手を振ってみせる。
「・・また来てるザウルス」
「いいじゃん。キミだってイエローの癖に勝手に居座ってるんだから」
不満そうに呟いた一年坊主に言い返す。
「だいたい」
年下だが、自分よりも大分大きい剣山を見上げて偉そうに胸を張る。
「アニキの弟分の座はボクのもんだって言ってるだろー」
「十代のアニキはオレの太陽だどん」
「アニキって言うな」
「まあまあ」
翔は剣山に食ってかかる。
もう毎度のじゃれあいのようなものなので十代も本気で止めに来ない。
「デュエルしていたザウルス?」
口喧嘩では翔に敵わないと見たのか剣山は話題を変えてきた。
「ああ、シミュレーションをやってたんだ。対戦する?」
小型の対戦用機器を示して翔が聞いた。
「よし!いいどん!!オレはデュエルの挑戦からは逃げないどん!」
「翔はつええぞー」
十代が自分の機器を剣山に渡しながら言った。
「シミュレーションの鬼と呼んでくれたまえ!」
十代の言葉を受けて翔が再び胸を反らす。
ついでに笑い出した翔を見ながら剣山がぼそりと言った。
「シミュレーションじゃなくたって、強かったどん」
「・・ああ」
それに十代が同意する。
剣山はこの間の昇級デュエルのことを言っているのだろう。
翔は少し恥ずかしげに頬を掻いた。
「でもボク、人前でデュエルするのって苦手なんだよね。緊張しちゃうし」
あはは、と翔は笑った。
「そのくせ有利になると気が大きくなってすぐ調子乗っちゃうし」
十代にも『悪い癖』と評されたそれを、翔も自分で自覚している。
人前でデュエルをするときにはあがってしまってかあっとなってしまうのもいけないと思う。
「駄目なんだよなぁ」
それでもなかなか直せない。
視線を落とす翔に剣山が言った。
「自分のことそんな風に言ったら駄目だどん」
「え」
その言葉に顔を上げる。
「駄目だ駄目だ言ってると本当に駄目になってしまうザウルス」
「・・剣山くん」
「いいこと言うじゃん、剣山」
十代が言った。
「翔は駄目なんかじゃないぜ」
十代は翔の後ろから手を回してぎゅっと抱きしめた。
「オレは翔のいいところ沢山知ってるもんな」
「アニキ・・」
翔が肩越しに十代を振り返る。
間近で見る十代の笑顔に頬が熱くなった。
赤くなっているのだろうと思う。
何か言葉を続けようとしたが、それは剣山の大声で遮られた。
「さすが十代のアニキだどん!」
邪魔をされた気分で一年生を振り返る。


「自分のいいところを見つけられないようなヤツに、他人のいいところは見つけられないどん」


「いいこと言うじゃん、剣山」

先ほど十代が言った言葉が甦る。



大真面目に言い放つ剣山は、何処か十代に似ていると思った。



大事な事をさらりと何でもないことのように言ってくれる。



カリスマはともかく、クラスでは人気者だろう。

年下で生意気だけれど、嫌いじゃないと思う。
「いいこと言うじゃん、剣山くん」
十代の言葉を繰り返してみる。
そうして翔はまじまじと剣山を見た。
「な、何だザウルス」
口喧嘩ばかりしている翔に誉められたことで気恥ずかしくなったらしく、剣山は身を引いて少し構える。
照れているのか、頬が少し赤い。
翔は言った。
「剣山くんてさ、何かカワイイよね」
「か」
自分の気持ちを上手く表現する言葉が見つからず、可愛いと評すると剣山はさらに大声を出した。
「可愛いとか言うなザウルス!」

「可愛いなんて・・そう、あれは中学3年の春・・・」

「あ、この語りは長くなりそう」
回想に入ってしまった剣山を置いて翔は十代に向き直った。
「アニキ、もう一戦しようか」
「そだな」
十代は回想中でぼんやりしている剣山の手から、自分の機器を取り返して向かい合わせに座る。


「ボクもアニキのいいところ沢山知ってるよ」



デュエルが大好きなところも

絶対諦めないところも




ボクを呼ぶ声も




全部、好き。





「ああ」
十代が笑った。



大好きだから、ずっと一緒に居たいんだ。




「ガッチャ!」
今度は十代が勝利したとき、万丈目が帰ってきた。
「お帰り万丈目くん」
扉の方へ翔は手を振ってみせる。
「何だまた来ていたのか、丸藤翔」
『また』を強調する万丈目の憎まれ口に、当然でしょ、と翔は舌を出す。
「お茶飲む?」
「自分の部屋のように振舞うなっ」
きぃっと怒鳴る万丈目を尻目に翔はカップの用意をする。
「いいじゃん。翔の淹れてくれたお茶美味いし」


「オレずっと翔の淹れるお茶が飲みたいなー」



「馬鹿かキサマはっ」
万丈目は重大発言とも取れる十代の台詞を切って捨てた。
「お前もいつまでも初恋話を声に出して言ってるんじゃない!恥ずかしいやつめ」
矛先は剣山にも向けられる。
「は!また声に出していっていたザウルス?」
慌てる剣山に翔は言ってやった。
「ボクのことは情報屋と呼んでくれたまえ!」

 


欲しいものは、自分の手で掴まなきゃ。

ずっと一緒に居たいんだ。




願い事は、もうしない。


 

 

 

 

END

 





剣山くんをダシに十翔でいちゃいちゃってことで(^_^)

 
翔がイエローに行っちゃったのはショックですが
でも将来の事を考えての選択だから。
翔は花嫁修行に出たと思えば!

通い妻すればいいよ。


んで剣山はすごくイイコだと思うのです。
クラスの人気者だと思うのです。
可愛いよね!

で、情報屋翔に初恋話暴露されるのでした(笑)


 

2005.11.02

 

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