■「一番になりたい」(十翔)■

十翔。お兄さんに対抗心持ってるアニキ。お兄さんがエドに負けた後。





一番になりたいんだ。

 

 



何処へ行ったのかと捜していたら、案の定海の見えるところに居た。
地べたに座り込んでじっと夜の海を見ている。
「翔」
後ろから背中に声をかけると、びくり、と肩を竦ませた。
「・・アニキ」
ゆっくり振り返った翔は明らかにいつもと違う。
元気がない。
理由はわかっている。

カイザーがデュエルで負けた。

そんなこと、ありえないと思っていた。
結局引き分けで勝てなかった相手。
一回負けているから、負け越してることになる。


いつか絶対、勝ってやるんだと思ってた。



翔もカイザーが負けるなんて思ってもみなかったんだろう。
かなりショックだったようですっかりしょげている。
「・・・お兄さん負けちゃったっス」
「元気出せよ翔。勝負なんだからどっちかが負けるさ」
大きな目に涙を溜めて俯く翔を慰めてやりたいのに、なんだか上手く言葉が出てこない。
どうしてだか、薄々わかってる。
正直、ちょっと面白くないからだ。

口を開けば、お兄さん、お兄さんって。



アニキ分として不満に感じても仕方ないと思う。
もう追いかけない、って言ってラーイエローに移ったくせに、翔は相変わらずカイザーの後姿ばかり見てる。
まるで鳥の雛みたいに後ろをくっ付いて歩きたがってるんだ。
きっと生まれたときにそういう風に刷り込みされてしまったのに違いない。


近くに居なくても、卒業しても、翔がカイザーを求めるように。


翔の中ではカイザーが
 

一番強くて

一番正しくて



絶対の存在なんだ。


 

そんな刷り込み、要らない。




「んでもさ、オレもう一回エドとデュエルしてみてぇなー。ヒーローとヒーローが闘ったらどうなるんだろ?」
カイザーには悪いけど、と小さく付け加える。
「アニキ、その時は負けないでね」
翔はオレの目を見て真剣にそう言った。
「おう」


翔がオレを見たことでようやく満足する。




カイザーの次なんて、ツマラナイ。

 

翔の中で一番になりたいんだ。


 

 



オレのことだけを見ていて欲しいんだ。

 

 

 

END

 





十翔

 

独占欲の強いアニキでした(^_^)
お兄さんに対抗心バリバリっすよ!
アニキってワリと何にでも執着無さそうだけど
翔にだけは執着してくれてると思うのです。

 

2005.11.06

 

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