■「その花を曇らせるのは誰?」(剣翔)■

■空色模様の恋模様
その花を曇らせるのは誰?(剣翔)


剣翔+吹雪
2期目のクリスマス。
剣山くんはまだ好きって自覚なし。










「ところでそろそろクリスマスだね」
万丈目ルームで唐突に、自称・恋愛の魔術師、吹雪がにこやかにそう言った。
明日香の兄ではあるが、どうも性格はだいぶ違うようだ。
吹雪が絡んでくると話が面倒になる気がしてならない。
万丈目が師と仰いでるあたりも、なんだか胡散臭い、と内心剣山は思っている。
「そうっすね」
しかし吹雪の振った話題に、此処のところ沈みがちだった翔の顔は、いくらか明るくなったようだった。
「今年はサンタさんに何を頼むつもりなんだい、翔くん」
「去年はハネクリボーのぬいぐるみを貰ったから・・・」
しばらく考えて、翔は困ったように笑った。
「まだ何も考えてないっす」
「それはいけないねぇ」
吹雪は言った。
「サンタさんは世界中の子供たちにプレゼントを配るのに忙しいんだよ?早く決めてくれないと当日までに用意出来なくなってしまうよ」
「それは困るッス」
大仰な吹雪の言い様に、真剣に翔は答える。
「ちょ、ちょっと待つどん。サンタさんって・・」
「そうだ!」
口を挟もうとした剣山を制するように吹雪が言った。
「亮とお揃いで使えるものなんてどうだい?ストラップとか、キーホルダーとか」
「・・・いいっすね。・・でも、お兄さんが使ってくれるかどうか・・」
「翔くん」
俯く翔に吹雪は優しい笑顔を浮かべて言う。
「人間ってものは変わっていく生き物だけど」


「でも根本的なところはそうそう変わらないものなんだよ」


翔が席を外した隙に、剣山はこっそりと吹雪に尋ねた。
「丸藤先輩ってサンタをまだ信じてるどん?」
「そう」
うっとりと吹雪は言った。
「奇跡だよね」
まったく奇跡だ。
そんな高校生が居るだなんて。
吹雪は静かに言った。
「亮が、とても大事に守ってきたんだろうね」
「・・・そんなの、知らないざうるす」
剣山は資料や、アカディミアに残っている映像でしかカイザー、『丸藤亮』を知らない。
それと、この間テレビでやっていた、ヘルカイザーのデュエル。


それを、泣きそうな顔で見ていた翔しか知らない。


「・・・今年は丸藤先輩のところにサンタさんは来ないかもしれないどん」
テレビの画面に映っていた、ヘルカイザーの表情を思い出して剣山は言った。
「剣山くん、翔くんにも言ったけど」
諭すようにゆっくりと吹雪は言う。
「人間そう根っこの部分は変わらないよ」
「そう、ざうるす?」
「そうさ!」
きっぱりと吹雪は言い放ち、いつもの調子で高らかに言った。
「剣山くん、キミはボクの弟子にしてあげてもいいくらいの優しいし気も使えるイイ男候補だけども、一つ足らないものがある」
そう言って吹雪はびし、と剣山に指を突き付けた。
弟子になんてなりたくない、と思いつつも気迫に押されて剣山は訊ね返す。
「足らないものって何ざうるす?」


「経験さ!」


それは仕方がないだろう。
一年、年下なのだ。
「とりあえず翔くんには、剣山くんは去年あまりいい子じゃなかったから、可哀相にプレゼントを貰えなかったらしいよ、って言っておいてあげるよ。きっと何かプレゼントを用意してくれるよ!」
楽しそうにうきうきと吹雪が言う。
そんな事を言われたらまたどんな騒動に発展するかわからない。
慌てて剣山は言った。
「余計なこと言わないで欲しいどん!」


言ったところで、この状態の吹雪を止められはしないとわかってはいたが。





END





剣翔+吹雪
まだ好きって自覚はないけどお兄さんに対してちょっと嫉妬な剣山くんでした。
2期目の年末というとお兄さんがヘル化したあたりだなぁと思いまして
正確にはクリスマスより後なんですけどね(^^ゞ
コミケの前日であったと記憶しております。


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恋したくなるお題 (配布)

2008.12.23

 

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