■「押しても駄目なら引いてみる」(剣翔)■

■意地っ張りに恋したお題

押しても駄目なら引いてみる
まだ仲悪い感じの剣→翔。とちょこっと三万。










「いったー!!!」
消毒液の染みたガーゼを押し付けられて翔が悲鳴を上げる。
「やかましい」
万丈目はそう言ってさらに乱暴に傷口を消毒した。
「痛い、痛いってば万丈目くん!!もう少し優しく出来ないのっ」
翔はぎゃあぎゃあと訴えるが、もちろん万丈目もわざとやっているのだ。
高校生にもなって、喧嘩の理由がくだらな過ぎる。
毎回迷惑を被るのは此方なのだ。
「これに懲りたら、いい加減喧嘩をするな」
「やだっ!」
しかし懲りていないらしい翔は即座に拒否してきた。
「だってボク悪くない、剣山くんが悪いんだもん!ボクのアニキなのに!」
何だその理屈は。子供か。
『ボクのアニキ』ってのがまず何なんだよ、と問いたい。
実の兄が居るというのに、同級生をアニキと呼んで慕う、その気持ちが万丈目にはさっぱりわからない。
まだ後輩である剣山が、『アニキ』と呼ぶ方が理解できるというものだ。
そのボクのアニキとやらは居残りで此処に居ない。
当事者のくせに全く腹が立つ。
万丈目はため息をついた。
「お前なぁ、相手は手加減してくれてるんだぞ。わかっているのか」
此れだけ体格差があるのだ、剣山が本気を出せば翔はきっと大怪我をしていることだろう。

甘やかされているのだと、わかっていないのだろうか。

しかし諭すようにして言ってみても無駄だった。
「だからムカつくんじゃん!」
年下のくせにぃ!
キィと翔が叫ぶ。
手加減して貰っているのもわかっていて、さらに其れが気に入らないらしい。
万丈目は再びため息をついた。
「年下だと思うなら、もっと年上らしく振舞ったらどうだ」
「やだ!!」
この場に居ない『ボクのアニキ』に万丈目が呪詛を吐いたとしても誰も責められないだろう。
とりあえず万丈目は翔を説得することを諦めた。



食堂では剣山が三沢に手当てされていた。
剣山は翔と違って大騒ぎはしていないが、三沢は所詮数学馬鹿だ。
こういったことはどうも不慣れで、もたもたしている様子なので仕方なく交替してやった。
「まったく小さいくせに肉食恐竜みたいだどん」
剣山がぼやく。
小さいとかチビとか、いわゆる禁句を、本人の前で言わなくなったな、と思う。
「チビだから全力でやらないと負けると思っているんだろ」
「それにしたって乱暴すぎるざうるす。加減てもんを知らないどん」
酷く腫れあがった蚯蚓腫れを差しながら剣山はさらにぶつぶつ言った。
文句を言う割に、きちんと自分は手加減出来るのだから、此方の方がよほど大人だ。
いややはり甘やかしているだけなのか。
感心していると横から蚯蚓腫れを覗きこんだ三沢が余計な口を挟んだ。
「ああ、オレも良く万丈目に引っ掛かれるよ。背中とか」
阿呆なことを口走った三沢の足の甲を踏み抜いてやる。
相当痛かったようで悶絶する三沢を無視して、万丈目は言った。


「アイツは甘えられる相手にはとことん甘えてくるから、気を付けろよ」


「何の話どん?」
剣山は首を傾げた。
「いや、別に・・こっちの話」
自覚なく甘やかしているのなら仕方ない。
後輩の恋の行方よりも、自分の問題の方が大事だ。


時々口が軽いく空気を読まない三沢に、一度きつく言っておかなければなるまいと万丈目は思った。
此方は甘やかすつもりはない。





END




剣→翔で三万。
押してダメなので少し引いてみてるんだけど
今のトコ裏目に出てる剣山くん(自覚なし)でした☆
そしてさらっと三万要素を混ぜてみたけど
三沢が空気読まないので台無しなカンジ(笑)
天上院兄妹対決の「年齢的にぎりぎり」は笑ったなぁ。
空気読めよ三沢(^−^)



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2009.10.04

 

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