■エバーグリーン約束しましょう■金色お月様だけが知っている■桜色に頬染めた君と■甘く訪れた純白のキセキ■
万丈目ルームでのささやかなクリスマスパーティの後、丸藤先輩が小さく言った。
「こういうのって終わっちゃうとなんか寂しいよねえ」
やってる間は楽しいんだけど。
その気持ちは何となくわからないでもない。
去年も丸藤先輩は同じようなことを言った。
その時オレは来年また一緒にやればいいザウルスって答えたんだ。
けれど今年は其れが言えない。
来年丸藤先輩はこの学園に居ない。
卒業して居なくなってしまう。
今、もし、来年も再来年もずっと一緒にクリスマスパーティをしたい、丸藤先輩と一緒に居たいと言ったなら、どうするだろう。
どう、なるんだろう。
どうしても言うことのできない自分はただの臆病ものだ。
***
剣翔
恋するカレンダー12題
エバーグリーン約束しましょう
12.12.22
レッド寮を出てイエローの寮まで二人で歩く。
丸藤先輩の話はだいたいアニキのことばかりだ。
だからオレもそれに倣うようにアニキの話をする。
本当はもっと違う話をしたい、なんて思うようになったのは何時だろう。
アニキの話ばかりじゃなくて丸藤先輩の話をしたい、丸藤先輩のこともっと知りたいなんて考えるようになったのは何時だろう。
だいたいいつも一緒に居るから、何でも知っているような気になっているけれど。
たった一つばかりの年の差の壁に阻まれることもある。
誕生日だって当日知る有様だ。
もうちょっと早く生まれてきたかった。
そんな風に思う気持ちを、月は照らしてくれている。
金色お月様だけが知っている
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翔、お誕生日おめでとう
剣→翔
年の差萌え
12.09.25
「新入生だ!可愛いねえ」
今年も新入生が船に乗ってやってきた。
自分も去年はああやって船でこの島へやってきたのだ。
「初々しいどん」
「キミは最初っから全然可愛くなかったけどね」
今年3年になった小さな先輩はいつものように笑って憎まれ口を叩く。
丸藤先輩だって相当憎たらしかったザウルス。
なんて言うと喧嘩になってしまうので「そんなことないザウルス」と返しておく。
自分も相当この先輩の扱いに慣れてきた。
「でもキミと初めて会った時はこんな風にお喋りするようになるなんて思ってもみなかったッス」
それは、自分もだ。
最初はアニキを取り合って喧嘩ばかりしていた。
小さいくせに本気でかかってくる相手に此方も本気で応戦する訳にもいかず傷だらけになったりもした。
この先輩に恋をしてしまうなんてあの頃の自分は思ってもみなかった。
未来はわからないものだ。
「剣山くんどうしたッスか?顔赤いよ」
覗きこんでくる先輩にさらに狼狽してしまうことだって数秒前にはわからなかったことだ。
桜色に頬染めた君と
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剣→翔
12.04.30
クッキーの詰まった可愛らしい包み。
ガタイのいい自分にはちょっと似合わないラッピングの此れを、さてどうやって意中の人に渡したものか。
其れが大問題なのだった。
先月、小さな先輩にチョコを貰った。
勿論向こうはそんなつもりはないだろうが、世間ではバレンタインデーと言う日だった。
買ってあったチョコをお腹空いたから半分こして食べただけ。
それでもちょっと嬉しかった。
だからホワイトデーである今日、さりげなくお返しを渡したいとか思った訳なんだが、どうしてそれが難しい。
「何持ってるの剣山くん」
らしくもなくため息をつく剣山の後ろから翔が顔を出した。
「うっわ丸藤先輩っ」
目聡く箱を見つけた翔は可愛らしく両手を出した。
「あ、これモロゾフのクッキーでしょ。いいなーちょっと頂戴」
「あ、あげるザウルス!」
箱ごと押しつけて遁走する。
「もー意気地無しだなあ」
翔がそう呟いたことなんて剣山はもちろん知らない。
甘く訪れた純白のキセキ
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確信犯的な。
12.03.18
恋するカレンダー12題2
お題Fortune
Fate
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