■「アレが欲しいと思ってしまった」(剣翔)■ 十翔前提で剣→翔。
アニキが何か言って、髪の毛をかき回すように乱暴に頭を撫でた。
そしたら すごい嬉しそうに笑ったんだ。 アレが欲しいと 思ってしまった。 食堂へ向かうために寮の階段を下りる小さな上級生の後頭部を見ながら、剣山はこっそりため息をついた。 人の事を言えた義理ではないが、ラーイエローに昇格したこの二年生はなんだかんだと言って結局オシリスレッドに入り浸っている。 昨日も結局、ラー寮には帰らずに此処に泊まった。 それは十代と一緒に居たいがためだということはよくわかっている。 だけどなんだか落ち着かない。 顔を合わせれば、どっちが十代の弟分か張り合って、口げんかになってしまうせいだろうか。 その更に前にもう一人、学園の制服を着ない黒髪の上級生が歩いているのだが、背の高いそちらよりどうしても小さい方が気になってしまう。 「あ、蜘蛛の巣」 万丈目に続いて食堂に入ろうとしたとき、唐突にその小さな手が空を指した。 指差す先を視線で追う。 食堂の向こう側の木に、朝露に光る蜘蛛の巣。 「きらきらして綺麗だね」 綺麗だ、と。 まさにそう思った瞬間振り返って同意を求められた。 同じものを、綺麗だと思った。 それが何だか少し嬉しくて、オレもそう思った所だったと、返事をしようとしたら大声に遮られた。 「ぎゃー!蜘蛛―!!」 翔と剣山の間に、食堂の庇から蜘蛛が降りてきていた。 ぎゃあぎゃあと喚く翔にため息をつく。 「蜘蛛さんは嫌いざうるす?」 「嫌いだよーそんなでかい毒もってそうなのー」 確かに大きいし、毒々しい色をしてはいる。 だが多分、毒は持っていないと思う。 とはいえ蜘蛛に関しては詳しくないので、一応触れないように棒に蜘蛛の尻から出ている糸を絡めとると、ぽい、と蜘蛛ごと向こうの茂みへ投げた。 「・・死んじゃった?」 剣山の陰に隠れるように茂みを窺いながら翔が訊く。 「蜘蛛さんは風に乗って移動する虫どん。こんなことでは死なないざうるす」 「そっか。よかったあ」 翔は安心したように笑顔を見せた。 蜘蛛を怖がったくせに、死んでないと言ったらほっとするなんて。 変なヤツ、だと思う。 こんな風にころころ表情が変わるヤツは他に知らない。 怒ったり 泣いたり 怖がったり 蓑虫になったり ・・笑ったり。
十翔前提で剣→翔、みたいな。 喧嘩ばっかりしてますが 意外に気が合うんじゃないかと思ってるんですけどどうでしょう(^_^) 剣山は兄貴肌(自称)だから 小さい子(年上だけど)には親切なんじゃないかと思うんですが。 まあ仲良しだったらいいな、という妄想で(いつも妄想だけど・笑) 需要のなさそうなカップリング(笑) 2005.11.16
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