■「強く抱きしめたら」(剣翔)■ 剣翔。129話後。
強く抱きしめることが、出来たなら。
「オレより丸藤先輩をみて欲しいどん」 剣山が言うと倒れた翔の一番近くに居た三沢が、その顔を覗き込んで言った。 「大丈夫、気を失っているだけだ」 その言葉にほっとする。 剣山よりも小さく細い先輩は、乱暴に扱ったら壊れてしまいそうで、怖い。 実際はそんなにヤワでもないと知っているけれど。 「とりあえず、皆を中へ」 言われて剣山も立ち上がった。 自分の使った『ジェラシックインパクト』のせいで少しフラフラするけれど、人手が足らないのだから休んでいるわけにはいかない。 何より、翔のことは自分が運びたかった。 小柄な先輩をそっと抱き上げる。 強く、強く、抱きしめてみたいけれど そんなことをしたら壊れてしまいそうで 出来ない。 意識のない身体はくたり、と腕の中に納まった。 ふわ、と髪が香る。 使っているシャンプーの匂いなのか、翔はいつも甘い匂いがする。 いつでも近くに居た、嗅ぎ慣れたその匂い。 ホンの数日離れていただけなのに、自分の腕の中に翔が居るということに安堵する。 剣山は学園の敷地内にゆっくりとその身体を下ろした。 きっと目が覚めて、正気に戻っていたら、まず一番に「アニキは?」って聞くんだろう。 そんなこと、わかってる。 それでも、今は。 これくらい、なら。 そっとその髪に唇を寄せた。 伝えられない気持ちを其処に込めるかのように。 と、ぱちりと翔が目蓋を開いた。 間近で目が合って、しばし固まる。 「・・・丸ふ」 「ぎゃあ!!」 慌てて何か言おうとした剣山を翔は悲鳴と共に突き飛ばした。 「いくらお腹が減ったからってボクの髪の毛食べないでよね!!ボクの髪の毛は草じゃないよ!キミ草食恐竜なのっ!?」 一気にまくし立てた後、あっけにとられる剣山を尻目に、翔は辺りを見回して訊いた。 「・・アニキは?」 思ったとおりの質問に苦笑する。 「元に戻ってよかったざうるす」 「丸藤先輩はやっぱりその方がらしくていいどん」 アニキのことが大好きな丸藤先輩、だからこそ。 強く、強く、抱きしめることが出来たら その心まで自分のものにすることが出来るのだろうか。 今の関係を、壊して。 END 剣翔 129話、剣山くんの翔好きっぷりが大変萌えでした。 アニキが大好きな丸藤先輩が好きだから 今のままでいいんだけど でもホントは自分のことももっと見て欲しい、みたいな。 だけどそれを言っちゃうと今のままではいられないしね。 という片思いがやっぱ萌えるのでした(^^ゞ ようやくゾンビから元に戻るみたいなのでその前に捏造(笑) お風呂入ってないだろうから髪の毛汚いんじゃね?というのは 気がつかなかったことに(笑) 2007.04.07
|