■「一年後の約束」(剣翔)■

剣翔・167話、クロノス先生のデュエルの後。











クロノス教頭と十代のデュエルは、十代の勝利で幕を閉じた。
「・・クロノス先生が勝ってくれたらよかったどん」
「はあ?!何言ってるの剣山くん」
思わず洩らした呟きは小柄な先輩に聞き咎められる。
「クロノス先生が勝ったらボクたち本当に単位が足らなくて卒業できなかったかもしれないんだよ?」
そうなればよかった、と剣山は心の奥で思う。
卒業なんて出来なかったらよかったのに。
そうしたもう一年一緒に居られる。
昏い感情をなるべく隠して剣山は言った。
「でも、アニキたちが卒業しちゃったら寂しいざうるす」
「もー何言ってるのさ剣山くん」
翔は明るく剣山の背中をばしり、と叩いた。
「ボクらが居なくなったら、キミがこの学園を引っ張っていかなきゃ!」
2年生の中ではリーダー格なんだからさ。
揺れる翔の髪を見下ろしていると、更に焦燥感が募る。
わけのわからない苛立ち。
思わず、聞いていた。
「丸藤先輩は、寂しくないどん?」
翔は驚いたように剣山を見上げた。
そんなことを言われるとは思わなかった、と言うように。
「ボクだって寂しいよ」
嘘ばっかりだ、と剣山は思う。
翔は卒業したら、実兄であるヘルカイザー亮と新しいプロリーグを作るのだそうだ。
とても嬉しそうに話してくれた。
翔は今、そのことで頭がいっぱいなのだ。
兄と作る未来に夢中で、残る剣山のことなど考えても居ない。
置いていかれる立場のものの気持ちなど、顧みない。
黙ってしまった剣山をどう思ったのか、翔は言った。
「でも、一年くらいすぐだよ」
「一年・・」
「そう、一年」
翔は頷いた。
「剣山くんも卒業したらプロになるつもりなんでしょう?」
プロに。
もちろん考えた事が無かったわけではない。
でもまだ先の話だと思っていた。
「そりゃ、なれたらなりたいと思ってるざうるす」
「なれたら、なんて剣山くんらしくないっすよ。絶対なるって言わなきゃ」
「でも、」
なれるかどうかなんて、わからない。
万丈目もプロになるためにかなり苦労をしているようだった。
プロへの道は狭く厳しく、一握りの者しか通れない。
「なれるよ、キミなら」
翔は言った。


「キミの強さはボクが一番良く知ってる」



対戦もしたし、タッグを組んだこともある。
最初は喧嘩ばかりしていたのに。


今では。



「だからさ、剣山くんもプロになったら、ボクらの作る新しいプロリーグに参加してもらいたいな、って思ってるんだ」
翔はそう言って笑った。
「それって、オレが、参加しても、いいざうるす?」
思ってもみなかった誘いに、上手く口が動かない。
翔の思い描く、新しい未来に自分も入っていってもいい?
「当たり前だよ」
剣山の動揺に気付く風でもなく翔はさらりと言った。
「・・・頑張るどん」
頑張ってプロになって、そして。




だからそれまで、待っていて欲しい。


 

最後の言葉はまだ心の奥に仕舞っておくけれど。

 

 


 

END









剣山くんもプロになって翔を追いかけてきたらいいよ!
ってことで(^_^)
一年くらいすぐです。
そんでプロになったら告白して結婚すればいい(無理です)
しかし今の翔はホント兄さんとのお仕事のことで頭いっぱいだろうなぁ。

此処のところ卒業、進路関係の話はすっごくよくって
でも良い分、ああほんとうのそろそろ終わるのねぇと寂しくもあったり。
それにしてもホント良い話が続いてるので
もうミスターTなんか出てこなくてもいいよ!ってカンジなのですが(笑)
異世界の人お断り。

2007.12.29

 

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