■「ごめんなさい」(亮翔)■ 亮翔。元に戻ったお兄さんと翔の話。
ごめんなさい。
・・・ごめんなさい。 ベッドに横たわるお兄さんの手をそっと握ってみる。 長くて綺麗な指先は、いつもよりずっと冷たく感じられる。 いつもはもっと温かいんだ。 いつもはもっと優しいんだ。 顔色もまだ良くなくて。 目を、覚まさない。 「お兄さん」 そっと呼びかけたらほんの少し指が動いた気がした。 「お兄さん」 もう一度呼びかけて手を強く握る。 睫毛がかすかに震えて、それからゆっくりとお兄さんが目を開いた。 「お兄さん」 お兄さんはボクの声が聞こえたのか、ほんの少し顔をこちらに向けてくれた。 「・・翔」 「お兄さん」 お兄さんがボクの名前を呼んでくれただけで、それだけのことで涙が出そうになった。 黙っていたら本当に泣きそうで、慌てて口を開く。 「お兄さん大丈夫?どこか、痛い?」 「・・・翔」 まだ覚醒していないのか、それとも身体に残っているダメージのせいで喋るのが億劫なのか、お兄さんはただもう一度ボクの名を呼んだ。 それからボクの指を確かめるように力を込める。 確かめる、ように。 「ボクは大丈夫だよ。なんともない」 「・・・そうか」 お兄さんは小さくそう言ってほっとしたように微笑んだ。 優しい笑み。 そうしてお兄さんはボクの手を握ったまま、また眠りに落ちてしまった。 「お兄さん・・」 ぼたぼたと涙が零れて、お兄さんの手を握ったままの自分の手の上に落ちた。 お兄さんが安心したように笑うから。 自分のことより、ボクの心配をしてくれるから。 ごめんなさい、お兄さん。 ボクは本当にあの時、ボクなんかどうなってもいいと思ったんです。 ボクなんかデュエルも弱くて 下の下もいいとこで 兄弟だなんてとても大きな声で言えない だから そんなボクのせいで お兄さんが負けるなんてそんなこと 絶対駄目だと思ったんです。 だから ボクなんか 死んじゃっても いいんだって。 なのにお兄さんが 自分の勝ちよりもボクを選んでくれて ボクを助けてくれて 嬉しかったんです。 嬉しかったんです。 嬉しかったんです。 ごめんなさい、お兄さん。 ・・・ありがとう。 END
亮翔 アニキ対カミューラ戦後、お兄さんが元に戻った後の捏造です。 翔はちょっと自分のこと卑下しすぎ。 お兄さんはそんな翔に 世界でただ一人の一番大切な弟だよ、と身を持って言ってくれたわけですよ。 素晴らしい! 翔もあんな素晴らしいお兄さんに大事にされてるんだから もっと自信を持てばいいと思う。 しかし人形から元に戻るあたりはなんかすっごいさらっと流されちゃった(^^ゞ ・・そんなわけで補完。 でも相変わらず言葉が足らないウチのお兄さん。 「お前が無事でよかった」くらい言えればいいのになぁ。 2005.05.20
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