■「お兄さん」(亮翔)■ ■丸藤兄弟でかこう!10のお題■卒業式後。お兄さんをお見送り。明日香さんと丸藤兄弟。
「遅いわよ、貴方達」
ようやく船着場に現れた十代たちに明日香が少し呆れたように言った。 まさか遅刻してくるとは思っていなかったのだ。 「悪い」 走ってきた十代がまだ息も荒いまま、ともかく謝る。 「ごめんなさい、明日香さん」 わずかに遅れて到着した翔も十代に倣うように謝った。 「私に謝るのは間違ってるでしょ?」 柔らかく、そう告げて視線を流す。 その先に亮が立っていた。 昨日はアカディミアの卒業式だった。 そして今日、卒業生はこの島を出て行く。 卒業生代表で答辞を読む亮を、翔がとても誇らしげに見ていたのを思い出す。 「こいつが」 万丈目が翔を指して言った。 「出掛けに見送りに行きたくないなどと捏ねたんだ」 「・・だって」 翔は何か言い訳を探すように視線を下に落とした。 「あら」 明日香はそんな翔の様子を見ながら、ちょっと驚いたように言った。 「亮が今、そう言っていたところなのよ。翔くん」 見送りに来たがらないのではないか、と。 「え」 顔を上げた翔が明日香を見る。 「さすが兄弟ね」 明日香の台詞に翔の表情が明るくなる。 この兄弟は、少し言葉が足らなくて、壁を作ってしまっているように思っていた。 だけど本当はそんな壁は無かったのだ。 誰よりもきっと、弟のことを亮はわかっている。 そう、明日香は思ったのだ。 黙っていた亮が、口を開いた。 「見送りに来たくないのなら、別に来なくて構わない」 翔の身体がびくり、と竦む。 「亮!」 明日香は咎めるように名を呼んだ。 違うでしょう。 そんなことを言いたいのではないでしょう。 喉から出掛かったその言葉を、結局明日香は飲み込んだ。 わかっている、と言いたげに亮が明日香に視線を流したからだ。 亮は明日香を制しておいて言葉を続けた。 「これきり会えないわけではないし」 「何処にいようと」 「オレとお前は、兄弟だから」 「・・お兄さん」 翔がぐす、と鼻を鳴らした。 「ごめんなさい、お兄さん」 「謝ることは無い」 亮の手が優しく翔の髪を撫でる。 翔は亮の腰に手をまわして泣き顔を隠すように顔を押し付けた。 亮の手は翔の髪をゆっくり撫でる。 「・・ボク、お兄さんにお別れを言うのが嫌だったんだ」 「これきりではないと言っただろう」 しゃくり上げながら、翔は続けた。 「でも、もっと、学校でいろいろ喋ったり、教えてもらったり、しとけばよかったって、そう思って、そしたら」 「いつでも出来る」 兄弟なのだから。 「・・うん」 亮の言葉に翔は涙を拭いて、ようやく笑顔を見せた。 翔は船が水平線に消えるまで其処に立っていた。 明日香はそれを見ながら兄弟の別れ際の会話を思い出す。 「手紙書くね」 「今度の冬休みは帰るから、デュエルしてね」 亮が船に乗り込むまで一生懸命翔は話しかけていた。 今まで話せなかった分を取り戻そうとするかのように。 「・・・まるで長距離恋愛みたいね」
お兄さん3年だから卒業しちゃうんだなぁ、と。 卒業前にもっと兄弟話をやって欲しいです。 デュエルとか! お兄さんは「別に来なくてもいい」とか言って明日香さんに「迎えに行って来い」って怒られてたんですよ(笑) 其処へ翔たちが来たの(笑) ぶっちゃけ最後の明日香さんの台詞を入れたかっただけの話(笑) アニキが出てくると十翔前提で亮→翔みたいになっちゃうので 出番減らしてみました(^^ゞ ■丸藤兄弟でかこう!10のお題■ 丸藤兄弟同盟 2005.06.27
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