ボクの血は青いのです。
きっとお兄さんとは違うんです。
ばちん、と音がした。
会議室なんかでよく使う折りたたみの机の脚を開こうとしていたのだけれど、どうも自分の手まで挟んでしまったみたいだった。
びっくりしてしまって、ただ、血がぼたぼた落ちるのを、見ている。
真っ赤な、血。
結構深いみたい。
そんなことを思いながらぼけっと血が床に落ちるのを見ていたら、アニキが飛んできた。
「何やってるんだよ、翔!」
そう言って手を掴むと教室の隅に何故か置きっぱなしになっていたトイレットペーパーで、指をぐるぐる巻きにしてくれた。
白い紙があっという間に赤くなる。
「ほら、もっと手を上げろって」
「あ、うん」
何処か怪我したときは心臓より高く上げると血が止まるっていうもんね。
アニキの言うとおり手を少し高く上げる。
一緒に机を運んでいた隼人くんと万丈目くんが覗き込んできた。
「大丈夫かー?」
「馬鹿め、ぼんやりしているからだ」
「うん、大丈夫。ごめん」
言葉は違うけど二人とも心配してくれてるのがわかったから、そう答えた。
「とりあえず保健室連れてくからさ」
「じゃあ此処はオレたちでやっておくんだな」
「ごめんね」
大徳寺先生に頼まれて運んできたのだけれど、結局自分のどじのせいで仕事を押し付ける形になってしまって、もう一度謝る。
「いいから早く行け」
万丈目くんが怒ったように言った。
「うん、ありがと」
もう一度謝ったら本当に怒り出しそうだったので、礼に換えておくことにした。
「せんせー、翔が指切ったー」
保健室の扉が開くなり、アニキが言った。
「鮎川先生なら今居ない」
返ってきたのは保険体育の鮎川先生の声ではなかった。
「カイザー」
「・・・お兄さん」
衝立の向こうから顔を出したお兄さんは吹雪さんのお見舞いに来ていたみたいだった。
吹雪さんは寝てる。
明日香さんは席を外しているらしくて姿が見えない。
「えー先生居ないのかよ」
アニキはぶーぶー言いながらその辺をがたがたと探し始めた。
「カイザー、消毒薬とか何処にあるかわかるか?」
その間にお兄さんは無言で立って、引き出しを開けると中から消毒液とガーゼを出してきた。
「翔」
促されて空いているベッドの上に座る。
指を出すとお兄さんは巻いていた紙を捨てて奇麗に傷口を拭いてくれた。
ちょっと沁みて痛かったけど、お兄さんが手当てしてくれているので我慢した。
昔、お兄さんが彫刻刀で指を切ったときに、ボクの方がわんわん泣いちゃったことを思い出した。
自分が切ったわけでもないのに。
お兄さんは傷口にガーゼを当てて包帯でくるくると器用に巻いていく。
「・・・ちょっと、大袈裟じゃないかな・・?」
指を切ったくらいで包帯なんて。
遠慮がちにそう言ってみたけどお兄さんの手は止まらなかった。
「これくらいで丁度いい」
「そうだぜ」
引っ掻き回した引き出しを表面上片付けてアニキが覗き込んでくる。
「指の先なんてうっかりどっかにぶつけようモンならすっげぇ痛いからな」
「それで傷口が開いても困る」
「そっか」
なるほど、と納得してそう言った。
これだけ包帯巻いとけば、指先を意識するからうっかりぶつけたりもしないだろう。
「そっか、じゃないぜ、翔。自分のことだろ」
アニキが言った。
「ったく血がぼたぼた出てるのにぼーっとしてんだからな」
アニキは『そっか』を他人事みたいな返答ととったらしい。
ぶつぶつ文句を言っている。
「こっちがびっくりしたぜ」
「・・・ごめん」
心配してくれてる文句だとわかるので謝る。
アニキとの会話を黙って聞いていたお兄さんが口を開いた。
「翔は」
「人が怪我をしたときの方が大騒ぎするんだ」
人が怪我をしたときの方が
「え」
びっくりしてお兄さんを見上げると頭を撫でられた。
「気をつけろよ」
お兄さんはそう言って少し笑った。
そのまま保健室を出て行く。
お兄さんも
同じこと
思い出してたんだ
「何だよ、兄弟にしかわかんねぇ会話して」
「・・ごめん」
アニキが再び不満げに文句を言ったのでもう一度謝った。
笑っていたせいかアニキはまだ少し不満そうだった。
ボクの血はちゃんと赤いのです。
それはお兄さんと同じ色なのです。
END
だって兄弟だもん(^_^)
翔はお兄さんと自分は全然違う生き物みたいに思ってるんじゃないかなぁと。
地下五階の駐車場とか言うしね(^_^)
吹雪さんが寝てるのは名探偵サンダー前に書いてたからです。
生ものは出来たらすぐUPしないとおかしなことになるなぁ(^^ゞ
丸藤兄弟お題を書くにあたって自分内約束事
1、アニキの出番を減らす(十翔になっちゃうから)
2、準たんを出したがらない(意味なく出したがってる気がするから・笑)
守れない方に千点。
そしてお題から遠い・・(^^ゞ
トイレットペーパーは良く教室においてあった・・ハナをかむ用に
■丸藤兄弟でかこう!10のお題■
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