■「壁」(亮翔)■ ■丸藤兄弟でかこう!10のお題■お兄さん卒業デュエルに向けて捏造。丸藤兄弟と、アニキ。
超えられない、壁がある。
広いデュエル場に自分の足跡が響く。 先ほどまでの喧騒が嘘のようだ。 ついさっきまで此処はデュエルの熱気で暑いくらいだった。 卒業デュエル――― 一年の遊城十代と三年の丸藤亮。 卒業する・・・お兄さんのデュエルで。 それも終わって、 今は 誰も 居ない。 翔のほかには。 観客席のひとつに腰を下ろして翔は膝を抱えた。 誰も居ないデュエルリング。 だが目を閉じると先ほどのデュエルが鮮やかに甦る。 ボクだったら、どう闘ったかな。 サイドデッキを取り出してメインのデッキと何枚か入れ替えてみる。 そして頭の中でデュエルをシミュレーションしてみようとして、やめた。 多分、十代でなければあんな風に白熱したデュエルにはならなかっただろう。 一瞬たりとも目が離せない、素晴らしいデュエル。 だからこそ、亮は十代を指名したのだ。 それは、わかる。 わかるけれど。 「ボクもお兄さんとデュエルしたかったな・・」 翔の知る限り、一番強いデュエリスト。 お兄さんのようになりたかった。 いつかお兄さんに追いつきたかった。 だけど なんて なんて 遠いんだろう・・・・・ 兄弟なのに。 翔は膝の間に顔を埋めてぐす、と鼻を鳴らした。 デュエルが、したかった。 お兄さんに認めてもらいたかったのに。 これじゃボク全然変わってないや。 思ってるだけで、行動出来ない。 それじゃ駄目だってもう知っている。 デュエルがしたいなら行動しなくては。 翔は零れそうになった涙をぐい、と拭いて立ち上がった。 デュエルを、申し込みに行こう。 泣いていたって仕方ない。 断られるかもしれないけれど、何もしないで此処でべそをかいているよりは全然マシな筈だ。 卒業しちゃったら当分会えない。 そんなの嫌だ。 ボクだってお兄さんとデュエルがしたいんだもの。 翔は椅子の上に散らかったカードをかき集めるとデッキホルダーに仕舞い込んだ。 それから出口へ向かって、駆け出した。 まず寮に戻って、デュエルディスクを持ってこなくては。 兄はオベリスクブルーの寮に居るだろうか。 丁度その時場内に十代が入ってきた。 「翔」 「アニキ」 「此処に居たのか、捜したぜ」 十代の言葉を翔は遮った。 「ごめん、アニキ。ボクちょっと・・」 「何だ?どっか行くのか?」 急いでいる様子の翔に十代が訊ねる。 「お兄さんの所へ、行くんだ」
2005.09.18
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