■「キミはボクに甘過ぎる」(斎エド)■

斎エド。ヤキモチ焼きなエド(^^ゞ

 







「ボクは結局何も出来なかった」
そう言ったら斎王は吃驚した顔をした。
そんな事を言われるとは思っても見なかったらしい。
「そんなことはないよ、エド」
斎王は言った。
「キミが雨の中でも進む勇気をくれたのだから」
斎王はボクの背中に両手を回して、ぎゅ、と抱きしめてくれた。
「・・・斎王」
 

斎王の腕の中は温かくて、ボクは泣きそうになる。

 

その時近くの茂みががさり、と音を立てた。
ボクは慌てて斎王から離れようとしたのだけれど、斎王の方が腕を離してくれなかった。
離してくれない、というか、単に反応が遅いだけなんだが。
こんなところ誰かに見られたら恥ずかしいじゃないか。
こういうときは、ぱっと離れるもんだよ。
まったく斎王は鈍くさいなぁ!
「あ、エド」
草むらから顔を出したのはヘルカイザーの弟だった。
えっと・・・名前は。
「翔!居たか?」
そうそう、そんな名前だった。
って十代も居るのか。
げんなりとしたとたん、メガネの後に続いて十代が顔を出した。
まあこの小さいのが居て、十代が居ないはずはなかった。
いつでもべたべた引っ付いて歩いてるんだからな。
ついでにバンダナを巻いた恐竜と、黒い汚い上着を着たのが出てくる。
後から出てきたのは、万丈目とか言う名だった。確か。
光の結社時代には斎王の側近みたいな感じだったんだよな。
一番、近くに居て。
思い出したらちょっとムカついてきた。



「あ、なんかお邪魔だった?」
「何の用だ!!」
メガネが小首を傾げてボクと斎王を見比べたので、口から火を吹きそうな勢いでボクは怒鳴った。
斎王はそこでようやくボクを開放した。
だから遅いってばっ!
そう言うところも好きだけど!
ボクの剣幕なんてまったく気にもせずに十代はへらへらと笑う。
「エドの船無くなっちまったみたいだからさ。まともに飯喰ってないんじゃないかと思って、呼びに来た」
「今日はレッド寮はご馳走なんだ!エビフライの日なんだよ」
エビフライ・・ってご馳走か・・・?
まあそんな疑問は置いておいてボクはきっぱり言ってやった。
「いかない」
「え、なんで」
「エビフライだよっ?!」
いやだからエビフライってご馳走ってほどのもんじゃないだろうフツー。
なんでそんなエビフライエビフライ連呼されなきゃいけないんだ。
そんなに飢えてるように見えるのか?ボクは。
そもそもなんかいい感じだったのに、邪魔しにくるなっていうんだよ。
「行かないと言ってるだろう」
しつこく騒いでいる十代たちにそう言うとボクは踵を返そうとした。
それをやんわり、斎王の声が止める。
「エド、せっかくだからご馳走になろうよ」
「斎王・・」
いやだからご馳走って。
ボクが不満そうな顔をしたまま黙ってしまったので斎王は続けて言った。
「エド、私が言うのもなんだけれど」
そっとボクの手を取る。
「キミはもっと友達を作るべきだよ」



友達。
そんなもの要らない。
斎王だけ居ればいい。



斎王がボクに笑いかけてくれるなら、それだけでいいんだ。


 
「あーもう早くしないと食堂閉まっちゃうじゃん!」
十代が痺れを切らして叫んだ。
行かないと言っているのだからさっさと帰ればいいんだ。
そう、思ったのに。
何を考えたのか、十代は突然斎王の腕を掴んだ。
「早く行こうぜ」
そう言って斎王の腕を引っ張る。
「触るな!」
「別に触るくらいいいじゃないか」
「ダメだ」
ボクは十代から斎王を取り返した。
「うわーすごいヤキモチ焼きざうるす」
バンダナが呆れたように口を開いた。

わかってる。
馬鹿みたいだって。

だけど、やっと『もとの斎王』を取り返したんだから、もう少し独占していたっていいはずだ。



ざうるすは続けて言った。
「『ボクのアニキ』『ボクだけのアニキ』とか言ってる丸藤先輩といい勝負どん」
「ナニそれ!」
明らかにからかう口調に、チビっちゃいのが毛を逆立てた。
「喧嘩売ってるなら買うよ剣山くん!!」


「「やかましい!」」



声がハモって、思わず相手を見る。
万丈目、だ。
こいつも光の波動の被害者といえば被害者なのかもしれないけど、一時期ボクよりも斎王の側に居たんだよな。
しつこく言うけど。
だから正直それほど好きじゃない。
「ぷ」
斎王が噴出した。
ボクが心底嫌そうな顔をしたのがなんかツボにハマったらしい。
そんなに面白い顔だっただろうか。
「斎王・・」
「ああ、ごめんエド」
目じりに浮かんだ涙を拭いながら斎王は言った。
そういう顔もカワイイなぁ。
斎王はとっても美人だと思う。
「ほら、意地を張らないで。行こう?」
斎王は言いながらボクへ手を差し出した。


「私はキミが嫌なら他の誰とも手を繋いだりはしないから」



ズルイ。
そんな風に言われたら、行くしかないじゃないか。

 

斎王は鈍くさいくせに、こういうところがすごく鋭くって

そしてボクに甘すぎる。



ボクは黙って斎王の手を握った。



 

あんまり甘やかすと、本当にずっと放してあげないからね。

 

 

 



END

 




斎エド

 

はなしてあげなければいいよ!

みんな終わった後ってことで。
 
エドは独占欲が強くって
斎王さまにベタぼれで
ヤキモチ焼きなのです(笑)

斎王さまはエドには甘いといい。
美寿知とエドで斎王さまを取り合って
仲良く暮らせばいいと思います。

みな無事でよかった!


2006.09.30

 

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