■「キミの寝顔」(斎エド)■ 斎エド。アニキと翔と剣山くんと美寿知。
「斎王の見舞いに行きたい」
言い出したのは十代だった。 それに我も我もと弟分たちが便乗して、結局、十代とくっ付いてきた翔と剣山の三人で、外出許可を貰って島から出てきた。 住所を片手にまるでおのぼりさんだ。 途中見つけたカードセンターに寄りたがる十代を「後で!」と制して先を急ぐ。 それでもなんとか目的地が見えてきてほっと息をつく。 ようやく見えてきた斎王兄妹が居るはずの療養所近くで翔が言った。 「やっぱり何かお見舞いを買っていこうよ」 こういうとき気が回って仕切るのは翔であるから、兄貴分も子分も大人しく言う事を聞く。 そうして3人でお金を出し合って焼き菓子を購入した。 花とどっちにしようか悩んだが、要らないといわれたら自分たちで食べればいい。 というか、そっちが目当てだ。 受付で病室を教えてもらい、2階へ上がる。 奥が斎王の部屋でその隣が美寿知の部屋だそうだ。 それぞれ個室を与えられているらしい。 とりあえず十代は斎王の部屋から訪問することにした。 「斎王、元気か?」 軽い調子でがらり、と扉を開けると、其処は優しい光で満ちていた。 空気が違う。 「十代」 窓際のベッドに上半身を起こした斎王がこちらを見て名を呼ぶ。 囁くような小さな声だった。 「どうしたのアニキ」 入り口から中へ入ろうとしない十代を訝って翔と剣山が後ろから部屋を覗き込む。 個室だと聞いていたが、中に居たのは斎王だけではなかった。 ベッドサイドに置かれた椅子に腰掛け、斎王のちょうど膝の辺りに頭を預けるようにして、エド・フェニックスが眠っていた。 斎王は指を唇に当てて、静かに、と合図を送ってきた。 3人は思わず口を手で覆う。 「疲れているみたいだから、寝かせておいてあげたいんだ」 起こさぬように、小さな声でそう言ってエドを見つめる斎王の瞳はとても優しくて。 いつかテレビで見た、有名な教会のステンドグラスを思い出した。 綺麗な色とりどりのガラスに描かれた、宗教画。 「じゃあ、オレたち美寿知のほうへ行ってるから」 2人の世界に入り込めない雰囲気を感じて、十代は小声でそう言うと隣の部屋を指差した。 斎王は了解したとばかりに、にこりと笑う。 十代は軽く手を振ってそっと扉を閉めた。 「それにしても」 翔が買ってきたお菓子を口に入れて言った。 「斎王ってあんなに綺麗だったんだね」 すごい美人!と感嘆符つきで感想を述べる。 「兄さんはもともと綺麗だ」 美寿知がお茶を飲みながらそう言うと、剣山が小さく「この部屋はブラコン率が高いどん」と呟いた。 それを聞き咎められる前に言う。 「でもアカディミアに居た頃と全然カンジが違うどん」 「そりゃそうだろ、あの時は別人みたいなもんだったんだし」 十代が2個目の焼き菓子を口に運びながら言った。 さらに話題はエドに移っていく。 「寝てるとエドも可愛いねぇ」 「まったくざうるす」 しみじみと翔が言うと、剣山も頷く。 「普段は気が強くて生意気だからな」 「あと絶対メンクイだよエドは!」 「斎王には一目惚れか?」 「そうかもしれぬ」 見舞いに来た相手にお茶を入れてもらって、買ってきた焼き菓子を4人でパクつく。 この場に居ない人物をネタに、話は何処までも転がっていく。 そんなことは知らずに当の本人は隣の部屋で、柔らかな日差しを受けながら優しい眠りを貪っているのだった。 END 斎エド 二人の仲が公認だったらイイナ!ってことで。 アカディミアでも夫婦として有名になればいいよ。 美寿知と仲良くなって情報交換するようになればいいよ。 斎王夫妻の3年目の出番はまだですか。
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