ようこそ、デュエルアカディミアへ!
さあ、デュエルをしよう。
朝から喉が痛かった。
昼間は暖かいけれど、朝晩は冷え込むようになったから風邪をひいたかな、と思う。
「あれ、五階堂くん、風邪?」
廊下で咳をしたら知らない顔に声をかけられた。
知らないとは言っても、名前を知らないだけで、見たことがある。
同級生ではない、赤い制服。
身長は同じくらいだけれど。
「のど飴あげるよ」
丸い小さな眼鏡をかけたその人はポケットを探って飴玉を取り出した。
差し出されたそれを思わず受け取ってしまう。
「翔、オレも!なんかくれ、腹減った!」
横から別の手が伸びてきて飴を催促した。
まったくもう、とか言いながら、眼鏡の人が再びポケットを探って取り出した飴をその手のひらに乗せる。
「翔のポケットには何かしら入ってるな」
「アニキがいっつも『腹減った腹減った』って騒ぐからでしょ」
もう一人のために持ち歩いているらしい貰ったその飴と、騒ぐ二人を交互に見比べる。
確かこの間の「スター発掘デュエル」の時に見た顔だ。
憧れていた、万丈目準とのデュエルの時。
だからたぶん、上級生。
「ありがとう、ございます」
そう言ってぺこり、と頭を下げるとまた二人は騒ぐ。
「素直で可愛いね!」
「誰かさんとは大違いだな!」
万丈目さんが勝った後の胴上げで、一番近くに居た。
だから、たぶん
万丈目さんの友達。
とても強くて、カッコよくて。
ずっと前から憧れていた、万丈目さん。
あれからずっと不思議に思ってた。
どうして万丈目さんはデュエルに勝ったのにオシリスレッドに残ったんだろう。
「オシリスレッドって、楽しいですか?」
ふいに口をついて言葉が出た。
目の前で、楽しそうに騒いでいる二人を見ていたら急に聞いてみたくなったのだ。
唐突な質問に二人は顔を見合わせた。
「あ、すいません、あの、」
変なことを聞いてしまった。
謝って去ろうとした五階堂の言葉を、先の返答が遮った。
「楽しいぜ」
飴を貰った方がにっと笑った。
「まあ確かに」
水色の髪の人が続ける。
「寮はボロだし、寮長はネコだし、ご飯はあんまり美味しくないけどさ」
それはまあ事実だけど、と前置きして言う。
「でも毎日楽しいよ」
「万丈目くんも、楽しそうだったでしょ?」
万丈目クンモ楽シソウダッタデショ?
楽しそう、だった。
でも。
「でもお邪魔何とかなんて、変なモンスター・・雑魚カードじゃないか。カッコ悪いよ」
五階堂は不満そうに口を尖らせる。
中学のときはもっとカッコよかった。
攻撃力ゼロの、あんな変なカードを使ったりしなかった。
前よりずっと楽しそうだった、けど。
やれやれ、と手振りをつけてアニキ、と呼ばれた方が言った。
「お邪魔を使いこなすにはそうとうなタクティクスが必要なんだぜ」
「そうそう、そんでよっぽどヒネクレ者じゃないとね!」
「誰がヒネクレ者だ」
五階堂の背後から怒気を含んだ声が言った。
「あ、サンダーだ!」
「万丈目さん」
振り返ると其処に万丈目が立っていた。
「こんなところで下級生を苛めてないでさっさと行け」
「誰が苛めてるのさ、万丈目くんじゃあるまいし!」
「なんだと貴様」
小さいくせに、割と負けずに言い返す眼鏡の人と万丈目の口喧嘩をボケっと見てしまう。
こんな万丈目は見たことなかった。
ケンカしてるのに、楽しそう、だと思う。
「キミはデュエルが楽しい?」
突然声が降ってきた。
隣にやってきたイエローの制服の生徒だと気が付いて顔を上げる。
目が合うと、やはり同級生ではない顔がにこりと笑った。
デュエルが、楽しい?
「そんなこと、考えたこと無かった・・」
デュエルが楽しいかどうかなんて。
「じゃあ質問を変えよう」
「デュエルは好きかい?」
今度は迷わず頷いていた。
イエローの生徒はまたにっこり笑った。
「やっぱり好きなことは楽しくやりたいだろう?」
「好きなのに、辛い思いをしながら続けていくのは、キツイ」
最後の方は話しかけているというより、独り言に近いような呟きで、五階堂はどう返答したものか考える。
好きなのに、キツイ。
言っていることがよくわからない。
黙ってしまった五階堂にラーの生徒はもう一度笑いかけた。
「まあ、この学園に来たからにはキミもオレ達の仲間だ」
「歓迎するよ、新入生」
「寮なんて関係なく、楽しくやろう」
「はい」
差し出された手を握り返したら、少し驚いた顔をされた。
「素直だなー、万丈目とは大違いだ」
「万丈目さんの悪口を言うな」
憧れの先輩を悪く言われ、むっとして手を離す。
「残念だったな、三沢ぁ!そいつはオレのファンだ」
「間違ってるよね」
「万丈目みたいなヒネクレ者にならないうちにちゃんと更生させとかなきゃな」
「そうそう」
「うるさいんだよ、貴様らは!」
眼鏡の上級生を万丈目が小突くのを見て、五階堂は笑った。
楽しい、と思う。
好きなことだもの、楽しく続けたい。
新しい生活のスタート。
デュエルアカディミアへようこそ!
さあ、楽しくデュエルをしよう!
END
2年目突入ってことで
五階堂くん相手に十翔と三万で先輩風な話でした(^_^)
五階堂くんが意外に性格が可愛かったので書いときたかったんですよ。
負けちゃったけど
やっぱり万丈目さんはカッコイイ!
と思っててくれたら嬉しい。
この先も準たんのファンで居てくれたら嬉しい。
もう出番無いかもしれませんが・・(^^ゞ
でも結構好き。
アニキに振ろうと思っていた役は
三沢っちにやってもらいました(^_^)
アニキは説教するタイプじゃないしな。
にしても三沢っちってば2年目やる気あるのかしら・・(^^ゞ