■「意地悪したら許さない」(三万)■ 三万。五階堂くんとのデュエル後。翔と三沢。
もっと冷たいと思ってたんだ。
教室へ忘れ物をしたことを思い出して、翔は一人、取りに戻った。 急に、万丈目と新入生がデュエルするという話が舞い込んできて、バタバタと会場に向かったものだから置いてきてしまったのだ。 「あった、あった」 いつも使っている、シャープペン。 別に今日でなくてもいいのだけれど、無いと落ち着かない気がして。 「あれ?」 忘れ物も取ってきたし、さて寮へ帰ろうと校舎内を歩いていると何かが床を転がる音が聞こえた。 誰も居ないと思っていたパソコン教室からだ。 部屋を覗くと床に落ちていたのはシャープペンだった。 もちろん自分のではない。 誰のだろう。 床からたどって視線を上げるとその先に三沢が座っているのを見つけた。 「三沢くん」 翔は声をかけた。 「こんなところに居たの?万丈目くんのデュエル見に来ると思ったのに」 「ああ」 言いながら机の上に拾ったシャープペンを置く。 三沢は翔のほうを見て笑った。 「此処で見ていたよ」 示された画面を見るとデュエル結果が表示されている。 万丈目の勝利。 学園内のデュエルディスク使用のデュエルならば、情報は此処から内容を見ることが出来ることは、翔も知っている。 でも。 「・・見に来ると思ったのに」 翔はもう一度言った。 「そうだな」 三沢は簡潔に返事をする。 「相手の新入生、万丈目くんに憧れてこの学園来たんだって」 「・・知ってる」 「ふうぅーん」 翔は三沢の反応を見るかのように、わざと語尾を伸ばして言った。 情報を分析し、難しい方程式を解くようにデュエルを組み立てるのが三沢のやり方だ。 自分がデュエルするのではないとはいえ相手のことを調べるのは、当然といえば当然だろう。 だけど。 だから、来なかったのか。 「・・三沢くんて、意外に独占欲強いタイプなんだね」 「そうかもな」 翔の言葉に三沢は頷いた。 その横顔を見ながら翔は続ける。 「別に怒らせようが拉致監禁しようが構わないけど」 「泣かせたら許さないからね」 悲しませたら、許さない。 ぼんやりしている時や、何か考え事をしている時、シャープペンを回す癖があった。 くるくると繰り返し。 だけどぼうっとし過ぎていたのか、それが手を逸れて床を転がっていってしまった。 誰かの靴に当たって止まる。 白い手が、それを拾い上げた。 「ごめん、ありが・・」 言いかけて、止まる。 万丈目準だった。 翔は万丈目が苦手だった。 オベリスクブルーであることを鼻にかけて、見下した態度で。 高飛車で威張っていて。 小さい頃から虐められることも多かったから、こういうタイプが素直にモノを返してくれるわけが無いと知っていた。 きっとわざと遠くに投げたりするに違いない。 だけど。 「ほら」 予想に反して万丈目は翔にそれを差し出した。 「ふぇっ・・?」 思っていたのとは違う展開に翔は思わず変な声を出してしまう。 翔の反応に万丈目はいらいらと言った。 「貴様のではないのか」 「あ、ごめん、ありがとう万丈目くん!」 慌てて駆け寄って自分のシャープペンを受け取る。 「ありがとう」 翔がもう一度礼を言うと、万丈目は面白くも無さそうに鼻を鳴らして踵を返した。 一瞬、触れた手は、思ったよりずっと温かかった。 この学園に入ったばかりの頃。 「翔がそんなに万丈目が好きだなんて知らなかったな」 「そう?」 三沢の言葉に翔は澄まして答えた。 「別にレンアイカンジョウ持ってる訳じゃないからね?言っとくけど」 そんなことを三沢が心配しているとは思ってもいなかったが、一応言ってみる。 それからさりげない風を装って付け加えた。 「ただ、三沢くんが泣かすなら許さないよって言ってるだけ」 「具体的に、どうする気なんだい?」 「そうだね」 翔は少し考えるフリをした後、にこりと笑って言った。 「・・・切っちゃおうかな」
ずいぶん前にほぼ書き上げて放っておいた話なんですが今頃UP 三万といいつつ準たん不在(^^ゞ 翔黒っぽい(笑) でも翔は万丈目くん大好きなのですよ、ってことで。 仲良く喧嘩してる準たんと翔が好きです。 UPしないで放っておいたのは 準たんと翔は女の子のつもりだったからです。 女体化ってヤツですな。 「切る」って発想は男はしないだろ、と。 でも別に女体化って明記しなくても問題ないかな・・?と思って フツーにそのままUPしてしまった(^^ゞ 「ナニを切るの」って質問はナシでお願いします。 女の子のつもりで書いてたってことから連想してね。 こう言われたら男は超コワイと思うので 三沢を脅すために言わせてみました(笑)
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