■「其処を動くな」(三万)■ 三万。三沢復活捏造。
「まったく!!」
ブツブツと怒りながら万丈目は砂の上を歩いていた。 ただ闇雲に歩くのは苦痛だが、当てがあるわけではないので仕方がない。 「いったい何処に行ったんだあの馬鹿は」 馬鹿というのはもちろん三沢のことである。 素っ裸で走って行った、という目撃情報を最後に行方が知れない。 ナントヤラという博士と一緒に島を出たとかいう噂もあるが真偽の程は定かではない。 別に捜しているわけではない。 突然居なくなったら気分が悪いだけだ。 『そんなイライラしないでよアニキ〜』 万丈目の頭上に黄色い物体が現れて宥めるように言った。 もちろんそんな言葉は今の万丈目には届かない。 「やかましい!」 万丈目は一部の人間にしか見えない、自分の精霊に向かって怒鳴った。 怒鳴られたお邪魔は首をすくめる。 「だいたい島を出るならオレに一言断りを入れるべきだろうが!」 拳を握り締めて叫ぶ。 『そんなこと言われても・・・』 「オレはちゃんと言って行ったぞ」 『え、そうなんだ〜』 嘘である。 万丈目は三沢に負けて一度この島から出て行ったことがあるが、それを告げて出て行ったというよりは、出てく現場を押さえられてしまっただけだ。 特に、止めることもしないで、『行っておいで』と言った。 一言も無しに居なくなることはないだろう。 せめて同じ事を言ってやりたかった。 頭上のお邪魔に当たりながら進む万丈目の足が何かを踏んづけた。 地面とは違う感触のソレ。 ぎょっとして下を見ると踏んだモノが口を開いた。 「やあ万丈目」 万丈目の足の下でひらひらと手を振ってみせる。 「何が『やあ万丈目』だ!!」 ようやく発見した三沢の第一声に万丈目はがあ、と吠えた。 これ以上の八つ当たりはゴメンだとばかりにお邪魔が消える。 「貴様こんなところで何をしている!」 「・・・万丈目に踏まれてる」 万丈目は体重を掛けてぐりぐりと腹を踏んでやった。 「いたたたたっ。痛いって万丈目ゴメンって!」 ギブギブ!と地面を叩くのを見てようやく足をどけてやる。 「・・・で、何をしている」 三沢はホンの少し考えるような素振りを見せた。 それからゆっくり口を開く。 「自分探し、かな」 「自分探しぃ?」 万丈目は語尾を吊り上げた。 「そんなことしなくても、お前はただの優等生面したイヤなヤツだ!」 「そうかもな」 三沢は転がったまま笑った。 「でも何だかよくわからなくなってしまったもんでね」 「馬鹿が」 「まったくだ」 吐き捨てるように万丈目が言うと三沢は笑って同意した。 こういうところはまったく変わっていない、と思う。 「ところで万丈目」 三沢が話題を変えた。 「何だ」 「キミ何か食べ物持ってないかな。腹が減って動けないんだ」 「物乞いか、馬鹿め」 万丈目はフン、と鼻を鳴らした。 「プライド探しもしたらどうだ」 「そうだね」 ニコニコとあっさり頷く三沢が気に入らなくて、また力を込めて腹を踏んでやった。 たまらず悲鳴を上げる三沢を尻目に踵を返す。 「・・・万丈目」 「うるさい!」 三沢の呼びかけに万丈目は振り返って怒鳴った。 「今何か持ってきてやるから、其処で待っていろ!動くなよ貴様!!」 「待ってるよ」 三沢が神妙に頷くのを確認すると万丈目は走り出した。 『アニキってば嬉しそう〜』 再び出てきたお邪魔を追い払いながら購買へ向かう万丈目は、確かに少し嬉しそうに見えた。 END 年末に「もう三沢に関しては捏造するしかない!」と思って書いてたものなんですが 三沢復活の噂を聞いて とりあえずちょっと直してUPしてみました。 まあこんな風にはならないのわかってますが! その辺は大目に見てください(^^ゞ でも三沢が帰ってくる気配がしたから 準たんは目が覚めて捜しに行ったんだよ!(妄想)
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