「翔が元気ないんだ」
十代のヤツがぼそりと言った。
その場には居合わせなかったが、カイザー・・いやヘルカイザーとデュエルをしたという話はオレも聞いていた。
その際なんだか怪しい装置をつけてデュエルしたせいで丸藤翔は今保健室の住人になっている。
ヘルカイザーは変な趣味に目覚めてそれを弟にも強要したという噂だが、本当のところはよくわからない。
「此処はやっぱりヘルカイザーを捕まえて丸藤先輩の前で三つ指付かせて謝罪させるべきだと思うどん」
恐竜が阿呆な発言をした。
謝罪するくらいなら最初からやるわけないだろう。
こいつは「カイザー」を知らんから。
あの人は本当に弟を大事にしてたんだ。
其処までした以上、何か理由があるに違いない。
と、十代が恐竜に返す。
「三つ指って何か違くねぇ？」
「突っ込むところは其処か！」
思わずオレは怒鳴った。
「つか無理やりカイザーに謝らせても、悪者オレたちになるじゃん」
「無視か貴様！」
さらに流して十代は続ける。
「翔はオレのこと大好きだけどさ」
「いきなり惚気話か！！貴様いい加減にしろ！」
「でも兄ちゃんはもう別格で好きなんだから。そんなことしたら嫌がられるだろ」
「救いようのないブラコンだな！」
「お前に言われたくないと思う」
「其処は返してくるのか！」
オレは再び怒鳴った。
今までさらっと無視してたくせにどうでもいいところは突っ込んでくるヤツだ。
「こんなところで何騒いでるんだい？」
「吹雪さん」
「師匠」
「吹雪先輩」
其処に通りがかった師匠が声をかけてきた。
こういっては何だがこの人が絡むと話がややこしくなるような気がする。
「何か悪巧み？」
「悪巧みってそんな、人聞きの悪いこと言わないでくださいお義兄さん」
「キミにお義兄さんと呼ばれる筋合いはないから」
さりげなくお義兄さんと呼んだがやんわり否定された。
くっ・・。
「ヘルカイザーを拉致る計画を立ててただけだどん。別に悪巧みはしてないざうるす」
剣山が弁解しようとしてさらに墓穴を掘った。
十代が突っ込む。
「それじゃ悪巧みじゃん」
拉致じゃ犯罪だろう。
「へえ面白そうだねぇ」
「面白そうで済ますんですか師匠」
とても楽しそうに師匠が言った。
この人は本当に人生楽しそうだ。
「協力してくれよ吹雪さん」
「師匠に話したのは間違いじゃないか」
「オレもそう思うどん」
「お前が言ったんだろうが！」
余計な事を喋ったのはその口だろうがあ！！！
オレの突っ込みをまたも無視して十代は師匠と話している。
「翔が元気ないからさ、カイザーを連れてこようって話だったんだけど何処行ったかわかんねえし」
「なるほど」
「何かいい案ある？」
「此処はやっぱり罠を張るべきだね」
「罠か！」
「罠って・・・」
罠ってなんですか師匠。
「ほらよく雀とか捕まえる時に使うザルと棒で作るヤツ」
「ああ！！あれか！」
「ああじゃない！あんなんで捕まるか！！」
「亮は小鳥のように可愛らしいから大丈夫だよ」
「いやいや」
そういう問題じゃない。
可愛いか可愛くないかは罠で捕まるかには関係ないと思うんですが。
「何してるの兄さん」
「明日香」
「天上院くん」
「明日香先輩」
「亮を保護捕獲しようって計画を立ててるんだよ」
師匠が明るく告げた。
師匠の言葉に剣山が小さく呟く。
「保護捕獲って・・ヘルカイザーは絶滅危惧種かなんかざうるす？」
「拉致とか言うよりはまだマシだが」
こちらのこそこそした会話はもちろん聞き流される。
「亮を？」
「翔が元気ないからさ」
「そうね・・亮なら灯台に居るんじゃないかしら」
「灯台？」
「彼、灯台が好きだし」
「そういやよくぼえーっと意味もなく立ってたなぁ」
「ぼえーっとって・・他に言いようはないのか」
仮にも学園ＮＯ．１だったカイザーに対してその言いようは何だ。
「んじゃ灯台で罠を張ろう！」
「罠採用か！」
ザルを持って十代が叫んだ。
本気でそれで罠を作る気か貴様。
しかも餌は丸藤翔の写真にする気らしい。
師匠も自分のサイン入りブロマイドを渡したりしている。
それを取りに来て罠にかかるヘルカイザー。
あまり想像したくはないが。
「何を騒いでるんだ」
「エド、いいところに来た。お前も来いよ」
「何だ？」
「カイザーを捕獲するんだ」
「なんだそれは。興味ないね」
くだらない、とばかりにエドは吐き捨てた。
コイツは斎王がらみでないと非協力的だ。
しかし十代はそんなことはもちろん気にしない。
「何だよ付き合い悪いな。いいから来いよ大勢の方が楽しいって！」
「すでに主旨が違うだろう！」
遊び気分かすでに！
「あ、そうだ三沢も連れて来いよ万丈目。ほい」
「人の話を聞け！・・って何だ此れは」
「三沢のパンツ。いくらなんでも素っ裸じゃ不味いだろ」


　


「お断りだ！！！！」

ばし！

　

オレはパンツを地面に叩きつけた。

　

　

　

ＥＮＤ

　

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丸藤が居ない所で
変な悪巧み（笑）
だってお兄さん何処へ行ったかわからないっていうからさ。
丸藤以外はだいたい出せた、と思ったけど
三沢は名前だけだった・・
そういや斎王さまも名前だけだな(^^ゞ

ビミョーにいろいろカプが混ざってる気が(^^ゞ
一応十翔前提。
そして三万。
三沢の扱いをどうしたらいいのかもう本当わかりません・・(^^ゞ

剣山くんはヘルのことよく知らないから
あんまし好きじゃないんじゃないかと思うのです。
お兄さんは本当は自分が人形になっちゃっても弟を助けたいという思考の持ち主なんだよ。
弟大好きなの。