■「似てるけど」(ヨハ翔)■ 十翔前提でヨハ→翔みたいな(^^ゞ
昼休みに最近何とか場所を覚えた購買部へ向かったら、パンのワゴンの前で翔を見つけた。
あのパンはドローパンというのだと十代に教えてもらった。 中身が違うのだそうで、翔も手にとってあれやこれやと選んでいる。 真剣に選ぶその様子がなんだか可愛らしい。 「翔」 「ヨハン」 呼びかけると両手いっぱいにパンを抱えてちょこちょことこちらに寄ってくる。 ちょこちょこ、という表現がぴったりな感じの小柄な翔が食べるにしてはパンの数が多くはないだろうか。 「そんなに食べるのか?」 「これ、アニキの分」 「十代の?」 聞き返すと翔は嬉しそうにコクン、と頷いた。 昨日の夜、オブライエンとのデュエルの後倒れてしまったのには驚いたが、今朝授業の前に保健室へ行ったらもう元気だったという。 ああ、それで翔もこんなに元気なのか。 十代が、元気になったから。 黄色い制服を着た翔は、青い服を着ていたときよりもイキイキとしているように見える。 「それで、保健室でも鮎川先生がご飯持ってきてくれるんだけど全然足らないって言うから」 「パン持参で保健室か」 「うん」 「待ってくれ、オレも一緒に見舞いに行く」 ヨハンもドローパンをいくつか手にとって一緒に会計に向かう。 「一人じゃ保健室へたどり着けないんだ。方向音痴だから」 そう言うと翔は少し驚いた顔をして、それから笑った。 一緒に会計へ並ぶとレジに居た小母さんが声をかけてきた。 確か、トメさんという名だったはずだ。 「あら翔ちゃん、十代ちゃんが倒れたって聞いたんだけど大丈夫なの?」 「うん、今保健室。でももう大丈夫。すごい元気だよ。腹減ったって騒いでる」 「そう、そりゃよかったよ。たいしたことなかったみたいで」 「うん、本当に」 ああ、本当に十代が好きなんだな。 嬉しそうに答える翔を見ながら、そう思った。 「これ、あたしからのお見舞いね」 小さな声でそう言ってトメさんは翔の買ったパンを袋につめながら、オマケに菓子を入れてくれた。 「ありがと、トメさん」 翔が自分が貰ったかのように礼を言うのをみながら、さっきと同じ事を思った。 「人気者だな」 一緒に歩きながらそう言うと翔は驚いたように顔を上げた。 「何が?」 「十代が」 さっきトメさんが入れてくれたオマケの話だと気がついて、翔が頷く。 「アニキは誰にでも好かれちゃうんだよね」 「ふうん」 好かれちゃう、という言い方がちょっと気になった。 弟分以上の感情が其処にあるような。 まるで、 妬いているような。 翔が言った。 「ヨハンってちょっとアニキに似てるね」 「・・そうか?」 「うん」 似ているだろうか。 精霊が見える、と言う点では確かに似ていると思う。 「デュエルしてる時の感じとか、ちょっと似てるよ」 「人を惹きつけるっていうか・・そんな感じ」 似ている、だろうか。 『アニキは誰にでも好かれちゃう』 さっきの言葉が甦る。 では 翔は 「ノース校でも人気者だったんじゃないの?」 「いや」 翔の問にヨハンは首を横に振った。 「ノースは女の子居ないし、男臭い連中ばっかりだから、なんか浮いてたな。オレひょろひょろしてるし」 「ふうん」 翔がその答えに、意外だ、という顔をする。 「じゃあコッチに来れてよかった?アニキとも友達になれたし」 「そうだな」 ヨハンは少し考えて言った。 そっと翔の耳元に唇を寄せて囁く。 「翔とも会えたしね」 十代と自分は似ていると言う。 では 翔は 十代の事を思うように 自分のことも思ってくれるだろうか? 「ふうん?」 何処か期待を込めて翔を見る。 翔はわかったような、わからないような、そんな顔で小首を傾げた。 「ふうん・・って・それだけ?」 少し拍子抜けしてヨハンは聞いた。 付き合いの短い自分でもわかるほど、翔は十代のことが大好きなのだから。 似ている自分に意味深に囁かれて、この反応ではなんだか面白くない。 「それだけって言われても・・」 翔が何か続けようとした時、廊下の向こうから声が掛けられた。 「丸藤先輩!」 「あ、剣山くん」 「こんなところに居たどん。アニキが呼んでるざうるす」 「え、本当!」 翔は慌てて言った。 「ごめん、じゃあボク先に行くね。剣山くん、ちゃんとヨハンを連れてきてね!迷子になっちゃうから!」 そう言って廊下をたかたかと走って行く。 そうしてあっという間に角を曲がって見えなくなった。 その素早さに苦笑する。 十代のことになるとこんなに反応が早いわけだ。 そういえば十代のほうも、翔がピンチだと知ってからの行動は迅速だった。 割って入る隙がない。 どんなに似ているとは言っても所詮は違う人間、ということなのだろう。 翔にとって、十代の代わりなど居ないのだ。 ふと顔を上げると剣山と目が合った。 相手はぱっと目を逸らす。 どうも剣山はヨハンが苦手らしいのだが、それにしては過剰反応だった。 翔がヨハンを連れて来い、と言ったから一緒に居るものの、どうにも落ち着かないといった感じだ。 それが何故なのか。 可能性に行き着いて、ヨハンは聞いた。 「で、十代が呼んでるってのは本当なのか?」 「・・すいませんざうるす!」 嘘がすぐ顔に出る後輩は謝るといきなり走り出した。 大当たり。 多分、剣山はヨハンが翔の耳元に口を寄せたあたりから見ていたのだろう。 本当に何でも顔に出てしまうタイプだ。 走り去る剣山を見送ったヨハンは、はっと気がついた。 「あ、待て剣山!置いてくな!」 置いていかれては保健室にたどり着けない。 自力で其処へ行ける自信がまったくないヨハンは慌てて走り出した。
十翔前提でヨハン→翔(剣→翔) アニキ好き好きな翔にちょっと興味アリ、みたいな(^^ゞ 本編では明日香さんとレイがお弁当持ってきてくれてたし アニキも朝のうちに保健室から居なくなっちゃったですが オブとの対戦後に書いてた話なので 大目に見てください(^^ゞ 110話放映前に仕上げられなかっただけです(^^ゞ どうしようかなと思ったけど 半分以上出来てたので 仕上げてあげてみた。 そしてまた外している(ヨハ翔!・笑) 2006.11.19
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