予感の続きを意識してみました。
デュエルが終わった気配に遊戯は目を覚ました。
「もうひとりのボク・・・?」
答えはない。
確かにデュエルは終わった、と感じたのにもうひとりの<遊戯>は緊張を解かない。
まだ、続いているのだろうか。
遊戯は身体を起こした。
「・・・誰?」
誰か、いる。
ここは遊戯の心の中だから、遊戯ともうひとりの<遊戯>以外、誰もいるはずがないのに。
もうひとりの<遊戯>は今表に出ているからここには遊戯の他に誰もいないはずだ。
でも誰かがいる、と感じる。
・・・警告。
遊戯の中で何かが危険だと告げている。
それでも遊戯は部屋の外の様子を見るために立ち上がった。
「誰?」
遊戯の部屋の外で『誰か』が笑った。
嘲るように。
「・・バクラ・・くん?」
「・・へえ」
遊戯の問いに感心したかのように声が答えた。
「割とカンがいいんだね、器の遊戯。・・もっともはずれてるけど」
器の遊戯。
この呼び方をする人物には心当たりがある。
こう呼ぶのはひとりだけ。
「マリク」
「・・・また会ったね、器の遊戯」
マリクは遊戯の部屋に足を踏み入れた。
遊戯は一歩さがる。
「何故・・・ここに」
「協力者を得たんでね」
「協力者?」
「器は知らなくていいことだよ」
マリクは吐き捨てるように言った。
マリクがまた一歩近づき、一定の距離を保つように遊戯はさがった。
「それより、お前に関係ある面白い話をしてやろうと思ってね」
「面白い話?」
「生贄の話さ」
生贄。
それはこのM&Wではよく使われる言葉だ。
レベルの高いモンスターを召喚するためには、生贄として何枚かのカードを犠牲にしなければならない。
デュエルをするものなら誰でも知っていることだ。
そんなことをどうして。
「つまり」
遊戯がはっと気が付いた時にはマリクはもう目の前にいた。
伸ばされた腕を避ける間もなかった。
あっという間に床に押し付けられる。
「痛っ・・・!」
うつぶせの状態で頭を押さえられ、遊戯は呻いた。
「強い力を使うためには生贄がいるってことさ」
「・・・何・・?」
「これ以上器に教えてやるつもりはないけどね」
「・・マリク・・」
「・・・相手が見えないと怖いだろう?ナマイキな口もきけないみたいだな、器の遊戯」
マリクから逃れようと遊戯はもがいた。
しかし体重をかけられているために思うように動けない。
体格が違いすぎる。
「お前に何かしたら魂の方はどうするだろうね?ずいぶん大事にしているようだし」
・・・そんなにも。
<遊戯>のことが憎いのだろうか。
<遊戯>を苦しめるためならば何でも出来ると思うほどに。
「とりあえず生きてさえいればボクは構わないしね」
マリクの手が遊戯の服にかかった。
「・・・待ちな」
もう一人、誰か別の声。
「今そいつに危害を加えたら手を貸す話はなかったことにしてもらうぜ」
うつぶせの遊戯からは顔が見えない。
だけどこの声は確かに。
「バクラくん・・・?」
声は続けた。
「こいつはまだ利用価値がある・・。わかってるだろう」
「・・わかってるさ」
利用価値。
そして、生贄。
このふたつの言葉はつながってる・・・?
遊戯がその言葉の意味を捉えようとした、そのとき。
「・・・城之内くん!!」
遊戯はもうひとりの<遊戯>が苦しんでいるのを知った。
デュエルの相手は・・・城之内。
遊戯ともうひとりの<遊戯>の大切な親友。
「もうひとりのボク!」
必死に呼びかける遊戯を見下ろして声が言った。
「・・・潮時だろう。もうすぐここに王サマがやってくるぜ」
マリクが軽く舌打ちした。
「もう少しだったのに」
「お前が本来の目的を忘れて余計なことしようとしてるから悪いんだろうが」
「・・・まだ次があるさ」
マリクが遊戯を開放して立ち上がった。
「大事な・・・だからね」
遊戯が顔を上げたとき、マリクと声の主は闇に紛れていた。
声は確かに、千年リングの方のバクラ。
どういうことだろう。
彼らの言っていた言葉を探る。
考えなければならないことは多かった。
利用価値。生贄。バクラ。・・・そしてマリクのこと。
・・・そんなに。
辛かったのだろうか。
<遊戯>を憎まなければならないほど。
だけど今は、城之内ともうひとりの<遊戯>のことが気にかかる。
遊戯の呼びかけに<遊戯>の反応が返った。
遊戯と城之内のデュエルが始まる。
END
でんがなさん6000HITリクエスト、マリク×表。
予感の続きを意識してみました。
バクラ様のなにやらたくらんでる様子が自分では書いてて楽しかったのですが・・・。
ああ〜ごめんなさい。せっかくリクくださったのに〜(汗)
これってマリオモか?って感じで(汗)
マリク様がねぇ、最近自分の中で扱いが微妙なんスよ。
お馬鹿だからさ〜(おいおい!!)
その微妙なとこがもろに文章に出ちゃったって感じです。
スイマセン。
洗脳城之内戦あたりで書いてたんだと思うハナシ
2000.12.06