多分書いたのは古代編の始まる前だと思う・・
「ねぇ」
遊戯は闇に向かって声をかけた。
「そこにいるんでしょ?」
遊戯と<遊戯>の心の部屋の間にはひとつの廊下がある。
廊下と言っていいものなのかよくわからない。
先は暗くてどこに続いているのかもわからない。
だが自分の部屋から出てきた遊戯はその暗闇に向かって声をかけた。
闇が動く。
そしてその闇は白い影になった。
遊戯のよく知る人物。だが。
「・・・バクラくん」
それは遊戯のクラスメート、獏良了ではなかった。
もうひとりのバクラ。
千年リングの人格。
「よくわかったな」
「なんとなく、ね」
遊戯は答えた。
なんとなく、としか言いようがなかったからだ。
誰かいる、という感でしかなかった。
「なんでキミがここにいるの」
「もちろん欲しいものがあるからさ」
「欲しいものってなに?」
とぼけるバクラに遊戯は食い下がった。
「やけにしつこいな」
「・・・<もうひとりのボク>になにかするつもりなの?」
へぇ、とバクラは鼻で笑った。
「・・なんだ、オウサマが心配なのか」
バクラはゆっくり遊戯に近づいた。
遊戯は逃げなかった。
自分の部屋の入り口を背にバクラをまっすぐ見返してくる。
「教えてやってもいいが」
バクラの手が遊戯の顎を捉えた。
「ただじゃダメだな」
「・・・なにが欲しいの」
「ものわかりのいい奴は好きだぜ。・・・そんなにオウサマが大事なのか?」
バクラは遊戯の耳元に顔を寄せて言った。
「お前」
耳元にかかる息に遊戯は首を竦めた。
それから言われた言葉に反応する。
「・・え」
「オウサマよりお前の方が興味あるね」
「・・なんで・・・」
バクラは遊戯を引き寄せて向きを変えると壁に押し付ける。
「・・いた・・っ」
背中を打った遊戯は思わずうめいた。
「オレの言ったこと覚えてるか?」
「何・・・?」
「“千年パズルは遊戯にしか組み立てられない”」
覚えてる。
千年パズルをかけて御伽とD.D.Dで闘ったあの時。
負ける、と思った。
だけど。
あの時、バクラが来て・・・。
そして遊戯は戦況をひっくり返すことが出来たのだ。
「オレのものになったらその辺の話もちゃんとしてやるぜ?」
「・・・え?」
「知りたいんだろ?」
・・・知りたい、けど。
遊戯の返事を待たずにバクラは遊戯の唇を塞ぐ。
「・・・んっ」
バクラは口を閉じる遊戯の頬を強く押さえて無理に唇を開かせた。
そこから侵入してくるバクラの・・・。
だがバクラは唐突に遊戯の唇を開放した。
耳をすますようにあたりの様子を伺う。
その仕草はまるで野生の動物のようで。
「・・・オウサマが感づいたみたいだな」
遊戯が息を整えている間に元のように闇に溶ける。
「あいつが来ると面倒だ。・・・続きはまた今度」
含み笑いが闇の中から聞こえた。
「バクラくん!」
「・・・オウサマに危害を加える気はないさ・・味見のお返しにそれくらいは約束してやるよ。・・・とりあえず今のトコはな」
「まって!」
まだ聞きたいことが。
しかし遊戯の呼びかけにもう答えはなかった。
遊戯があきらめて自分の部屋に戻ろうとしたとき、<遊戯>が心の中に戻ってきた。
心配そうな顔をしている。
多分、いつもと違う気配を<遊戯>も感じているのだろう。
「相棒」
「・・・もうひとりのボク」
「なにか、あったのか?」
「・・・ううん。なんでもないよ」
「・・・そうか」
<遊戯>にそんな顔をさせるのが嫌で遊戯はバクラのことは言わなかった。
話せばもっと心配するに違いない。
納得したわけではないだろうが<遊戯>はそれ以上何も言わなかった。
<遊戯>に危害を加える気はないと言ったバクラの言葉をただ今は信じるしかない。
なんでもない、と<遊戯>に嘘をついた唇にバクラの感触が残っていた。
end
つっきーさん7777HITリクエスト、バクラ×表です。
ウチのバクラ様はキス魔だわ(笑)
どうしてもバクラ様だとシリアスな話が書きたくなってしまう・・・。
好きなんですな、バクラ様!(笑)
リクエスト、ありがとうございました!!
2000.12.08