とくん、とくん。
何の音？
・・・わからない。
規則正しく繰り返される、リズム。
温かくて気持ちがいい。
この音は・・・。


城之内くんの鼓動。


遊戯ははっと目を開けた。
気が付けばもう空は夕方の色。
眠ってしまっていたのだ。
・・ちゃんと起こすつもりだったのに。
遊戯は軽く唇を噛んだ。

昼休みに城之内は木陰で昼寝を決め込んだ。
もうすぐ予鈴が鳴るというのに起きる気配がない。
「城之内くん」
もう起こさないと。
名前を呼びながら軽く揺すってみたけれど、なかなか目を覚まさない。
疲れてるのかな。
城之内はバイトをしていて、昨日は特に忙しかったようだ。
疲れてるんだ、ね。
まだ予鈴まで少し時間がある。
もうちょっとだけ寝かせておいてあげよう。
遊戯は城之内の隣に腰を下ろした。

ちゃんと起こすつもりだったのに。
いつのまにか眠ってしまった。
寄りかかった体から伝わる鼓動があんまり心地いいから。
気持ちよくて、安心するから。
「城之内くん！」
半分泣きそうな遊戯の声に城之内はようやく目を開ける。
そしてのん気な第一声。
「・・あ〜よく寝た〜」
遊戯はもうそれどころではない。
「ごめんね、城之内くん。起こすつもりだったのに」
ボクも寝ちゃって・・・。
声はだんだん小さくなってしまう。
もう少し寝かせてあげたかっただけなのに。
「別に、大丈夫だろ。ノートはあとで獏良か杏子に見せてもらおうぜ」
本田はあてにならねぇからな、と城之内は付け加えた。
「ごめんね」
「いいって・・おかげでよく寝れたしな」
城之内は大きく伸びをした。
それから覗き込んでいた遊戯を抱き寄せる。
「城之内くん・・？」
「・・遊戯って抱き枕みたいだな」
「抱き枕？」
なにそれ、と小首をかしげた遊戯に城之内は説明してやる。
もっとも城之内も聞きかじりなのでかなりあやふやだ。
「なんかこのくらいの、こんな感じの形なもので」
片手で遊戯を抱いたまま、もう片手で宙に絵を書いてみせる。
「それをこう抱いて寝るとリラックスしてよく寝れるんだとさ」
城之内はもう一度遊戯を両手で抱きしめた。


嬉しくなる。


「ボクもよく寝れたよ」
城之内の腕の中で小さく告白する。

自分が気持ちよくて安心出来たように、相手もそういう気持ちにすることが出来たなんて。
大好きな、人を。


幸せってこんな気持ち？

自問自答。

答えは、胸の中。

　

END

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らぶらぶ。