■向日葵(城遊)■

■十二ヶ月を巡るお題■

向日葵(城遊)

 












ボク達の、大好きな花。

 

 



「少し急がなきゃね」
『昨日、もう少し早く寝ればよかったな』
走るほどではないが、時間に余裕はない。
急ぎ足の遊戯に寄り添うように、ふわりと現れた<遊戯>が申し訳無さそうにそう言った。
「ボクが悪いんだよ」
新しいゲームに夢中になっていたのは遊戯の方だ。
もうちょっと、もうちょっと、とつい夜更かしをしてしまった。
今日は城之内たちと一緒に、新しく出来たゲーセンに行くことになっている。
駅前の時計塔の前で待ち合わせだ。
「大丈夫!間に合わせるから!」
遊戯は細い路地を右に曲がった。
近道だ。



目の前に突然、黄色が広がった。


「・・向日葵だ」



他所の家の庭先に、たくさんの向日葵。
夏の青い空に映える、大きな黄色い花。
「ボク、向日葵好きなんだよね」
歩くのをやめずに遊戯は言った。
「何か見てると元気にならない?」

太陽に向かって、ちゃんと顔を上げているところが。
辛いことや悲しいことがあって俯いてしまっても、しっかりしろ、と元気付けてくれるような、そんなところが。


「それに何だか」

 

『「城之内くんに似てる」な』


言葉が被って、二人は悪戯っ子のように楽しそうに笑った。


明るく、前向きで、どんなときも諦めない人。
いつでも笑って、遊戯たちを励ましてくれる、親友。


家庭の事情は複雑なのに、普段の城之内からはそれはまったく感じられない。
そういうところも含めて、すごいと思う。
「似てるよね!やっぱりキミもそう思うんだ」
『ああ。この黄色い花びらの色とか』
「うん。そうだね」
花びらの色は城之内の明るい髪の色を連想させる。
遊戯は向日葵を見上げて笑った。
その様子を少しからかう様に、<遊戯>が言う。
『それに背の高い所とか』
「どうせボクは小さいよー」
もう!と遊戯が怒ったフリをする。
<遊戯>は笑いながら謝った後、さらに付け加えるように言った。


『・・・後、青空の下が似合うところとかな』


「・・うん!」
遊戯は大きく頷いた。
同じように感じていたのだと、それが嬉しくて。
「ね、キミも向日葵、好きでしょ?」
『ああ』
遊戯の問いかけに、<遊戯>は笑って答えた。


 


「間に合ったね」
『そうだな』
時間どうり待ち合わせ場所にたどり着くと、其処にはすでに城之内が待っていた。
バイト、バイトで忙しい城之内は、いつもは時間ぎりぎりの到着だ。
遊戯よりも早いことは珍しい。
「遊戯!」
城之内が遊戯に気が付いて手を上げた。

 

青い空の下で。

城之内が、笑う。



 
向日葵のように、一緒に居るだけで元気になれる。



 


「城之内くん、早いね!」
遊戯はそう言いながら駆け寄った。



ボク達の大好きな人。

 

元気を分けて、くれる人。

 

 




 

 

END







遊戯ちゃんも闇様も
城之内くん大好きだよね!って話で。
こんなに夏が似合う城之内くんですが
生まれは冬なんだよね(^^ゞ

 

2006.07.09



■十二ヶ月を巡るお題■

宿花(閉鎖されました)

 

 

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