■三が日を避けて正解だったね(城表)■

■十二ヶ月を巡るお題■

三が日を避けて正解だったね(城表)

 












「三が日を避けて正解だったね」
遊戯が言った。
境内はそれなりに人は居るものの、大混雑、というほどではない。
「そうだな」
城之内は頷いて言った。
「まあオレのバイトの都合に遊戯を付き合わせただけなんだけどな」
「でも去年はすごい混んでて、お賽銭箱までたどり着けなくてテキトーに投げたんだもん。それに比べたらゆっくりお参りできる方が全然いいよ」
「そか」
城之内は笑った。
「そうゆう混んでる時にフードのついたコート着てくるといいんだよなー」
「え、なんで?」
遊戯は小首を傾げる。
初詣とフード付きのコートの因果関係がわからない。
城之内は悪戯っ子のように笑った。
「遊戯みたいに賽銭箱にたどり着けなかった参拝客が投げた小銭がフードの中に入るから」
「本当に?」
「おう!全部で千円くらい入ってたことあるぜ」
城之内の武勇伝は続く。
「まあ頭に小銭ぶつけられてすっげー痛かったりしたけどな」
「ご、ごめん」
遊戯がぶつけたわけではないが、投げた経験があるのでつい謝ってしまう。
謝るなよ、と城之内は笑った。
「むしろ『ラッキー!!』ってなもんなんだからさ」
ぱちん、と指を鳴らしてペコちゃんのように舌を出してみせる城之内のお茶目な表情に遊戯も笑う。
「この後、年賀状買うの付き合ってくれねぇ?」
お参りを済ませ、腹ごしらえのために入ったバーガー屋で城之内が言った。
「年賀状?」
遊戯は聞き返す。
さっき新年の挨拶は交わしたがそういえば、今年はまだ城之内から年賀状は貰っていない。
城之内は遊戯の疑問符に頷いた。
「年末書くヒマも買うヒマもなくってさ」
年末は他の人と交代したり、休みの人の代打で入ったりと、城之内はバイトで大忙しだった。
「まだ忙しいし、もうすぐ新学期も始まっちまうし、売ってるやつにちょろっとメッセージ書き加えて出しちまおうと思ってさ」
残っていたコーラを飲み干して言葉を続ける。
「本当はちゃんと手書きで出したいんだけど、時間ないし・・・でもせっかく年賀状くれたやつに悪いから、ちゃんとオレも出しておきたいから」
出したのに、返ってこなかったとか、杏子なんかそういうこと五月蝿そうだし。
そう言って、笑う。

こういうところが好きだな、って思った。


律儀で義理堅い。
真っ直ぐな性格。


「獏良くんからきた?すごく綺麗だったよ」
「おう、きたきた。あいつのは凝ってるよなーああいう細かいこと好きなんだろうな」
そんな話をしながら年賀状を選んで、城之内のバイトの時間までの僅かな残り時間をカード屋で過ごして、遊戯の家の前で別れた。
「じゃあオレ、バイトあるから」
「うん、頑張ってね」
手を振ろうとした遊戯の耳元に唇を寄せて城之内はこそっと囁いた。
「遊戯には、もう年賀状出したから」
「え?」
「じゃあな!」
聞き返す間もなく、城之内は踵を返して走り去ってしまう。
さっき買ったヤツではなく、もうその前に出してくれたのだろうか。
家に入る前にポストを覗いてみたが、何も入っていなかった。
母親にも訊ねてみたが、今日は遊戯宛の郵便物は着ていないという。
今朝投函して、初詣に来たのだろうか。
それなら家に着くのは明日かもしれない。
そんなことを考えながら2階の自分の部屋に入り、上着を脱ぐ。
かさ、と乾いた音がした。
ファーの付いた、フードの中から。
慌てて中を覗く。
出てきたものは大きめのおみくじのように結ばれた紙。
広げてみるとまず赤い文字が飛び込んできた。


『大吉』


その下に『あけましておめでとう』のメッセージ。
それともうひとつ。


『今年も遊戯にとって絶対にいい年になるように』


城之内のものだと一目でわかる、力強い文字。
見ているだけで自然に笑みが浮かぶ。
元気を分けて貰える。




遊戯はおみくじ風の年賀状を大事に抱きしめた。

 

 

 

END






フードをつけてて小銭が入ってたという話は
友人から聞きました。
背が高いほうが有利のようです(笑)

城之内くんお誕生日おめでとう
 

2007.01.25



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宿花(閉鎖されました)

 

 

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