■蚊取り線香のにおい(城表)■

■十二ヶ月を巡るお題■

蚊取り線香のにおい(城表)
屋上で花火を見る遊戯ちゃんと城之内くん












城之内の住んでいる団地から、花火が良く見えるというので、屋上で見ることになった。
まだ花火大会は始まらない。
お菓子と飲み物を持ち寄って準備をする。
「うわ、蚊に食われちゃった」
腕をバリバリと掻きながら遊戯が言った。
「ちょっと待ってろ、遊戯」
そう言って城之内は一旦居なくなる。
戻ってきた時その手にはかゆみ止めと蚊遣り豚がぶら下がっていた。
「あ、豚だ」
「古風でいいだろ?」
電気コードで繋いで使うノーマットの蚊取り線香と違って、瀬戸物の豚は確かに古風だ。
可愛らしく口を開ける豚。
CMじゃないけど『日本の夏』ってカンジだ。
渦巻状の蚊取り線香に城之内がライターで火を点ける。
ライターを持つ、その様子がサマになっていて、遊戯はちょっと見惚れた。
「何だ?」
城之内が聞く。
見惚れてました、と言うことも出来ず遊戯は言った。
「城之内くんってなんか凄く手馴れてるよね、ライターつけるの」
「えっ」
城之内は慌てて持っていたライターを後ろ手に隠す。
「いやオレは別に煙草なんて・・!」
そんなこと一言も言っていないのに、この焦りようではバレバレだ。
「吸ってたの?」
「―――――・・遊戯とダチになる前は、ちょっとな」
城之内は言いにくそうに遊戯の問いに答える。
隠し事の出来ない、正直な人。
「でも、もう止めた」
止めた、という以上、本当にきっぱり断ったのだろう。
男らしいその指で煙草を持って、其れを吸う城之内は、カッコいいだろうなぁと思っていた遊戯はちょっと残念に思う。
「身体に悪いしな」
「そうだね」
遊戯は残念に思う心を抑えて同意した。
「じいちゃんの友達が胃がんで胃の殆ど取っちゃう手術したんだけど、お酒はちょっとなら飲んでもいいけど、煙草は絶対駄目って医者に言われたって」
「へえ。胃なら酒のほうが駄目っぽいけどなぁ」
城之内は吃驚したように言った。
「あーでも酒はいいんだ?」
「未成年は駄目だよ」
にやり、と笑って言う城之内に遊戯は一応釘を刺す。
「わかってるって!遊戯を酔わしてイケないことしようだなんて考えてないからよ」
「もう!城之内くんてば」
ふざけた調子で城之内が言うのに、遊戯もおどけた調子で返す。


軽い冗談なハズなのに、なんだか頬が熱い。 


どん、と大きな音がして空に華が咲いた。
「お、始まった!」
「綺麗だね!」
城之内の声に釣られるように、遊戯も空を見上げた。
どんどん、と続けて花火が上がる。



もう花火に夢中な城之内の隣で、ホンの少しだけ距離を詰めてみる。



蚊取り線香の匂いのする屋上で。



END






城表っていうか城←表みたいな。
久しぶりに城表書いた。
夏はやっぱ城之内くん!ってカンジですよね(^_^)
いやイメージ的にさ。
しかし冬生まれな城之内くん(^^ゞ


 



2008.07.12



■十二ヶ月を巡るお題■

宿花(閉鎖されました)

 

 

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