白いネコを見つけた社長の話
白いネコに会って初めて。
ずっと一緒にいたいという気持ちを知った。
「懐かしいもの見つけちゃった」
モクバが一冊の本を片手に部屋に入ってきた。
「何だ?」
仕事の手を休めて覗き込めばそれは『100万回生きたネコ』
ソファに座ってページを繰りながらモクバが言う。
「小さい頃は何で白いネコのときだけ猫が泣いたのかわかんなかったけど」
100万回生きて、最後に泣いたネコ。
確かに子供には難しいかもしれない。
その時執事が来客を告げた。
すぐに明るい声が入ってくる。
「わ〜懐かしいもの持ってるねぇ、モクバくん」
遊戯も読んだことがあるらしい。
オレはデータを保存してソファに移動した。
「いいお話だよね」
遊戯がモクバの手元を覗き込みながら言う。
「いい話か?」
「死んでしまうのに」
「そりゃ、死んじゃうのは悲しいけどさ」
遊戯はさらに言った。
「でも、ネコは白いネコと会って初めて大事なものを得たんだよ」
その『大事なもの』とやらが生きていく上で必要なものかと問われればオレは『要らない』と答えるだろう。
以前ならば。
・・・・今なら、何と答えるのだろう。
オレが自分の思考に嵌っている間に遊戯とモクバはメイドが運んできたケーキに夢中になっている。
「お前は何をしに来たんだ」
ケーキを食べに来たのか、と呆れ声で言ってやると遊戯はけろり、と即答した。
「ネコに会いに来たんだよ」
「あ、連れて来るぜぃ」
さっさとケーキを食べ終わったモクバが部屋を出て行くと遊戯はオレの耳元で囁いた。
「ボクのシロネコにね」
側に居たい
白いネコに会って初めて
愛を知ったネコのように。
END
社長にとって白猫は遊戯ちゃんなのよという話。
100万回〜というのは絵本です。結構有名だと思う。
2003.03.28