■煙草(海表)■

海表。
社長は多分煙草を吸えるんじゃないかと思って。

 











ここにいる、だけで。






久しぶりに登校したというのにあいにく自習になっていた。
迎えの車が来るまでの時間を持て余して屋上で一本火をつける。
別に煙草が好きなわけではない。
ただほんの少し時間を潰すのに丁度いいだけだ。
未成年が学校で、とうのは少々問題かもしれないが教師といえどこの学校で海馬に意見出来るものなどいない。

いるとしたら。

「あー!!煙草吸ってるぅ〜!」
今まさに思い描いていた当人の声が聞こえて海馬は背後を振り返った。
「遊戯」
燻らせていた煙草を壁に押し付けて消す。
5分ほどの暇を潰すためにつけていただけの、もう不要なものだ。
「説教でもしに来たのか」
「そういうつもりは無いけど」
完全に火の消えた煙草をもてあそぶ指先に遊戯の視線を感じる。
少し悪戯心が湧いて持っていたそれを床に投げ捨てると、遊戯はそれをさっと拾って海馬のポケットに入れた。
吸ってもいいが捨てるなということらしい。
普通煙草の吸殻なんぞ人のポケットに入れるだろうか。


こういうところが

飽きない。


海馬は笑った。
「説教はしないのではなかったのか」
「吸うのは本人の自由だもんね」
そう言いながら遊戯は胸に手を当てて大仰に悲痛な顔を作って見せた。
「でも海馬くんが肺がんにでもなったらモクバくんは悲しむだろうなぁと思って」
芝居がかったそのしぐさに海馬は乗ってやることにする。


「お前は?」


「え?」
「お前はどうなんだと訊いている」
海馬は遊戯の頬に手を伸ばしながら訊ねた。
柔らかな感触のその白い頬がみるみるうちに赤く染まる。


本当は答えなどわかっている。


海馬の瞳の中に楽しそうな色を見つけて遊戯が口を尖らせた。
「ボクだって悲しいよっ」
そう言って遊戯は暑くなった頬を隠すように海馬にぶつかってくる。

煙草を止めた者は口淋しくて
飴など甘いものを欲しがるという。


まさにそれだな、と海馬は思った。


「だから吸ってもいいけどほどほどにしてよね!」
照れ隠しのように海馬の制服に顔を埋めて言い募る遊戯の背中にゆっくり腕を回す。




持て余していたはずの時間が早く過ぎていくのを感じながら。



遊戯が、ココにいるだけで。

 

 

 

END


 



海馬様は煙草も酒もOKなんじゃないかなぁと勝手に思っているのですが。
お付き合いもあるしね。社長だし。まあたしなむ程度というか。そんなにはやらないと思いますが。
未成年だし。一応(笑)

 

2003.08.03

 

 

 

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