■FIND THE WAY(海表)■

海表。
昼寝する海馬様と付き合わされる遊戯ちゃん。

 











闇の中でさらに黒く
足元に絡みつく、闇
 


足が思ったように動かない。
それでも前に進もうとする海馬を妨害するかのようにさらに闇はねっとりと足元を捕らえる。
何処までも続く真っ暗な闇。
昏い闇の中からさらに奥底へ引きずり込もうと纏わり付くそれを、海馬は知っていた。
思念。
・・・憎悪。
別に自分のしたことが間違っていたなどとは思わない。
だがこんな夢を見るということはまだ拘っているということなのだろうか。
あの、男に。

足元の闇は徐々にその形を固めていく。

頭は酷く冷静にこれは夢なのだと判断していた。
こんなことが現実に起こるはずが無い。
夢のはずだ。
だが。
どうしたらこの暗い夢から抜け出せるのかそれがわからない。
何か錘でも乗せられたように、胸が苦しい。
足が重い。

それでも海馬は先へ進もうとする。

ふと。
風が吹いたような気がした。


「海馬くん」


聞きなれた声に顔を上げると其処に遊戯が立っていた。
いつもと同じ、笑顔。
遊戯はそのまま海馬に駆け寄るとその手を差し出した。
「行こう」
何のとまどいも無く差し出された手。
だがその手を取ることを海馬は僅かに躊躇した。
遊戯の周りには何も無い。
海馬の周囲にはコールタールのように粘りつく黒い闇。

ほんの少しの間。

その数瞬の間を遊戯は気にする風でもなく自分からさっさと手を繋いで歩き出した。
有無を言わせない動き。
「あっちだよ」
手を引く遊戯が海馬を振り返って言う。
海馬と繋いだ反対側の手で指差す先には確かに光が見えた。

暗い闇の中に射す光。

そちらへ行こうと遊戯は誘う。
だが海馬の足は重く思うように動かない。


遊戯の進む先に、光。
海馬の周囲には、粘りつく黒い闇。


足元ノ闇ガ遊戯ヲモ飲ミ込ンデシマウノデハナイカト思ッタ


「遊戯」
「何?」
海馬の声に遊戯は振り返った。
手は繋いだまま。
「先に行け」
「何で?」
心底不思議そうに問い返す遊戯に答えずさらに言葉を紡ぐ。
「後から行く」
「やだよ」
海馬の言葉を遊戯はいともあっさり蹴散らした。
「遊戯」
思わず語尾がきつくなる。
「やだって言ってる」
きつい言葉にも遊戯は怯まなかった。
「ボクは海馬くんと一緒に行きたいんだ」
海馬の目を見て。
はっきりと。
「ボクがそうしたいんだ」


そこで突然目が覚めた。
自室のソファ。
日当たりのいい此処でついうたた寝をしてしまったらしい。
やはり夢だったのだと認識するまでほんの数秒かかった。

遊戯の手の感触が残っている、気がした。

身体を起こそうとして白と黒の固まりに気づく。
「・・・・」
海馬は無言で自分の胸の上と足元で気持ちよさそうに寝こけているネコを振り落とした。
床に落ちたネコは心地よい眠りを邪魔されたことに抗議の鳴き声をあげる。
だがもちろん海馬はそれを無視した。
どうりで重いと思った。
おかげで変な夢を見てしまった。

自分の心の中を映す夢。

海馬が不機嫌に息を吐いたとき第三者の声がした。
「あ、起きた」
顔を上げると寝室の扉の前に遊戯が立っていた。
手にはベッドの上から持ってきたらしい毛布を抱えている。
「そんなトコで寝てると風邪ひくよ」
遊戯はぽてぽてと海馬の方へ歩いてくるとその上に毛布を広げた。
嬉しそうに毛布にじゃれつくネコを遊戯が軽く叱る。
「ほら駄目だってば。海馬くん疲れてるんだから」
その様を見ながら思わず問うていた。
「遊戯、お前何故此処にいる」
「は?」
海馬の台詞に遊戯はむぅと口を尖らせた。
「何だよー海馬くんが誘ってくれたんじゃないか」
「・・・ああ」
そうだった。
今日は珍しく完全にオフだったから遊戯を家に誘ったのだった。
だが遊戯が来るまでの間に眠ってしまったらしい。
「疲れてるならこんなところでじゃなくてちゃんと寝たほうがいいよ?」
自分を気遣って顔を覗き込んでくる遊戯。

まっすぐ自分を見る瞳。
其処にある光。

「そうだな」
遊戯の助言を受けて頷く。
その言葉に海馬から離れようとした遊戯の腕を掴まえた。
そのまま引き倒す。
バランスを崩して倒れてきた遊戯を抱きとめる。
「わわっ」
さっき広げられた自分の上の毛布を遊戯の上にも掛けた。
「もう少し寝ることにしよう」
「・・・・もう」
遊戯は海馬の腕の中で諦めたようにため息をついた。
「離してくれる気はないんだね」
「もちろん」
海馬の答えにもう一度息をつくと遊戯は笑った。
「本当に我が侭だなぁ」

呆れたような口調で。
けれどもどこか、嬉しそうに。


我が侭だと言いながら、それが嫌だとは言わなかった。


ボクは海馬くんと一緒に行きたいんだ。

一緒に居たいんだ。



ネコ達が再び足元に集まってきて毛布にもぐりこんだ。
ごそごそと寝やすい位置を捜していた遊戯も海馬の胸に頭を預けて目を閉じる。

 

そして海馬も遊戯の体温を感じながら目を閉じた。


 




陽だまりの中で。

















 

END

 




 



本当はギャグで落とそうと思っていたのですが意外にシリアスになってしまい
時間ばかりかかってしまいました。とほほ。
パパのお話はもっとちゃんと書きたいです。

このタイトルは実は絶対ウラオモで使おうと思っていたのですが他にタイトルが思いつかず(^^ゞ
ナカシマミカの歌です。種のEDだった。好きなの。

 

2003.10.06

 

 

 

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