■ジューンブライド(海表)■

■十二ヶ月を巡るお題■
ジューンブライド(海表)

 











ボクは雨が好きなんだ。

 

だって部屋の中に優しい音が溢れてる。 




 

 





「6月ってさ雨ばっかり降るからアタシ嫌いー」
帰り際、クラスメートのそんな声が耳に入った。

やっぱり普通はキライ、かな。

遊戯はちょっと考える。
確かに雨ばかり続いて気持ちまで落ち込むこともあるけれど、遊戯は割と雨が好きだ。
雨の日の町はいつもと違う顔を見せる。
木の葉から落ちる雨の雫や、水溜りに映る自分の姿。
さらさらと降り続く雨。

そういったものが、すべて、町を優しくしている気がして。

「ボクはキライじゃないなぁ」
だってボクの生まれた月だし。


遊戯は雨の降る空を見上げてそう呟いた。



「海馬くんは6月はキライ?」
唐突に問われた海馬は特に慌てる風もなく落ち着いて答えた。
「別に嫌いではない」
言いながら海馬はちらり、と視線を窓の外に向ける。
窓の外はまだ雨が降り続いている。
「梅雨は確かに鬱陶しいこともあるが」
「うん・・そうだよね」

やっぱり普通は雨って鬱陶しいって思うのかな。

遊戯の様子を見ながら海馬は続けた。
「だが雨の音は嫌いではない」
「音?」
遊戯は聞き返した。
ほんの少し部屋に静寂が落ちて、さらさらと雨の音が響く。

「静かに降る雨の音は、心を落ち着かせる」


ああこの音を海馬くんも好きなんだ。


遊戯は嬉しくなって笑った。
「それに」
海馬は続けた。
「海外では6月は女神ヘラの守り月として、この月に結婚すると幸せになると言われている」


「だから安心しろ」


そう言うと海馬は遊戯の手を取ってその指に唇を寄せた。







左手の、薬指に。







 




ボクは雨が好きなんだ。









だって部屋の中に、ほらこんなに優しい空気が溢れてる。






 

 

END








遊戯ちゃんの生まれた月だもの
社長はもちろん好きですよ。


お題は此方から
■十二ヶ月を巡るお題■
宿花(閉鎖されました)

 

2006.06.11

 

 

 

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