■手の温もり(海表)■

■十二ヶ月を巡るお題■
手の温もり(海表)

 














 

 





日のあたる暖かい窓辺のソファでうとうとしていた遊戯の額に何かが触れた。
冷たい、手のひら。
誰の手なのかなんて考えなくてもわかる。
遊戯はゆっくり目蓋を上げた。
「海馬くん」
「・・・起こしてしまったか」
部屋の主はそう言って手を離そうとした。
遊戯は離れようとしたその手を捉える。
「遊戯?」
「もう少し、こうしていて」
言いながら海馬の手を頬に当てる。
「冷たくて気持ちいい」
「お前」
海馬が言った。
「熱があるのではないか」
ほんの少し不機嫌そうな声。
でもそうではないことを遊戯は知っている。
今はもうすっかり治っているが、この間風邪をひいて具合が悪かった事を気にしてくれているのだろう。
心配、してくれているのだ。
「大丈夫だよ」
だから遊戯はその問に安心させるかのように、にこり、と笑って答える。
「ボク元々体温高い方だし」


頬に当てた手のひらの冷たさと反比例するかのように
遊戯の心の中に温かいものが広がっていく。

手の冷たい人は、心が温かいんだって。

そう言ったなら海馬はなんと答えるだろう。
多分、非ィ科学的だ、何の根拠もない、と切って捨てるのだろう。

それでも遊戯は信じられる。




手の冷たい人は、心が温かいんだよ。



 


遊戯は海馬の手のひらを頬に当てたまま、再び心地よい眠りに落ちていった。

 


 

END









冷たいけど温かいんだよ、ってことで。




お題は此方から
■十二ヶ月を巡るお題■
宿花(閉鎖されました)

 

2007.02.23

 

 

 

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