■十二ヶ月を巡るお題■
一年お疲れさまでした(海表)
遊戯はベッドの上に転がって雑誌を捲っていた。
小難しい経済関係の本で、普段なら遊戯にはまったく縁のないものだ。
そんな雑誌を何故わざわざ買ってきたのかと言うと、海馬が受けたインタビューの記事がこの号に載っているという情報をモクバから貰ったからだ。
忙しくて会えない分、こういうところで補完したい。
ページを捲ると其処に海馬の写真が載っていた。
インタビュアーの質問ににこやかに答える海馬。
『一年振り返って、今年は海馬社長にとってどのような年でしたか』
その質問に海馬は至極まともな返答を返していた。
意外なカンジだ。
「オレは過去など振り返らん!・・くらい言いそうなのになー」
遊戯は雑誌を抱いて独りごちた。
片手を前に突き出してコートの裾をはためかせながら高笑いをする海馬の姿が容易に目に浮かぶ。
あまりにそれがリアルだったもので、遊戯は自分の想像に、ぷ、と噴出した。
「遊戯、お客さんじゃぞい。海馬くんじゃ」
「えっ、はあい!!」
今まさに想像して笑っていた当の本人の名に遊戯は慌ててベッドから起き上がった。
玄関を開けると其処にいつものように黒い高級車をバックに海馬が立っていた。
「海馬くん」
「遊戯、今からウチへ来い」
相変わらず傍若無人、天上天下唯我独尊を地で行くような物言いだが、今日が仕事納めだったということを遊戯は知っている。
仕事が終わって、遊戯に会いに来てくれたのだ。
疲れているだろうに、わざわざ。
真っ直ぐ帰らずに寄り道までして。
海馬と過ごせる時間が嬉しいから、遊戯は一も二もなく頷いた。
「じいちゃん、海馬くんのうちへ行ってくるね」
ウチの中に声をかけてそのまま海馬の車に乗り込む。
「なんだそれは」
続いて乗り込んだ海馬が遊戯の抱えた雑誌を見てそう問うた。
「あ、持ってきちゃった」
そこで遊戯は本を抱えたままだったことにようやく気が付いた。
慌てたのでそのまま持ってきてしまった。
「海馬くんが出てる雑誌だよ」
「ああそれか」
広げて見せると、海馬は面白くもなさそうにそう言った。
「過去を振り返るなど、くだらん」
「そんなことを思い出させる前に、来年の抱負を訊ねるべきだろう」
遊戯は思わず噴出した。
「何だ」
笑い転げる遊戯に、海馬が不機嫌な声を出す。
「だって海馬くんはホントは絶対そう言うと思ってたんだもん!」
思ったとおりだったことがツボにハマって遊戯はなおも笑い続けた。
過去を振り返るなどくだらない。
前だけ向いて進む。
周りのことなど気にしない。
それが海馬だろう。
インタビューでの澄ました海馬ではなく本音の海馬を見られる立場に居ることが
嬉しい。
笑いすぎて浮かんだ涙を拭きながら遊戯は言った。
「過去を振り返るのは海馬くんらしくないから、そんなことしなくていいけど」
「でもたまには横を見てボクやモクバくんや磯野さんたちが居るってことも思い出してよね」
一緒に前を見ている、ボクたちを。
遊戯は雑誌を脇に置いて、海馬との距離を詰めた。
一年お疲れさまでした(海表)
遊戯はベッドの上に転がって雑誌を捲っていた。
小難しい経済関係の本で、普段なら遊戯にはまったく縁のないものだ。
そんな雑誌を何故わざわざ買ってきたのかと言うと、海馬が受けたインタビューの記事がこの号に載っているという情報をモクバから貰ったからだ。
忙しくて会えない分、こういうところで補完したい。
ページを捲ると其処に海馬の写真が載っていた。
インタビュアーの質問ににこやかに答える海馬。
『一年振り返って、今年は海馬社長にとってどのような年でしたか』
その質問に海馬は至極まともな返答を返していた。
意外なカンジだ。
「オレは過去など振り返らん!・・くらい言いそうなのになー」
遊戯は雑誌を抱いて独りごちた。
片手を前に突き出してコートの裾をはためかせながら高笑いをする海馬の姿が容易に目に浮かぶ。
あまりにそれがリアルだったもので、遊戯は自分の想像に、ぷ、と噴出した。
「遊戯、お客さんじゃぞい。海馬くんじゃ」
「えっ、はあい!!」
今まさに想像して笑っていた当の本人の名に遊戯は慌ててベッドから起き上がった。
玄関を開けると其処にいつものように黒い高級車をバックに海馬が立っていた。
「海馬くん」
「遊戯、今からウチへ来い」
相変わらず傍若無人、天上天下唯我独尊を地で行くような物言いだが、今日が仕事納めだったということを遊戯は知っている。
仕事が終わって、遊戯に会いに来てくれたのだ。
疲れているだろうに、わざわざ。
真っ直ぐ帰らずに寄り道までして。
海馬と過ごせる時間が嬉しいから、遊戯は一も二もなく頷いた。
「じいちゃん、海馬くんのうちへ行ってくるね」
ウチの中に声をかけてそのまま海馬の車に乗り込む。
「なんだそれは」
続いて乗り込んだ海馬が遊戯の抱えた雑誌を見てそう問うた。
「あ、持ってきちゃった」
そこで遊戯は本を抱えたままだったことにようやく気が付いた。
慌てたのでそのまま持ってきてしまった。
「海馬くんが出てる雑誌だよ」
「ああそれか」
広げて見せると、海馬は面白くもなさそうにそう言った。
「過去を振り返るなど、くだらん」
「そんなことを思い出させる前に、来年の抱負を訊ねるべきだろう」
遊戯は思わず噴出した。
「何だ」
笑い転げる遊戯に、海馬が不機嫌な声を出す。
「だって海馬くんはホントは絶対そう言うと思ってたんだもん!」
思ったとおりだったことがツボにハマって遊戯はなおも笑い続けた。
過去を振り返るなどくだらない。
前だけ向いて進む。
周りのことなど気にしない。
それが海馬だろう。
インタビューでの澄ました海馬ではなく本音の海馬を見られる立場に居ることが
嬉しい。
笑いすぎて浮かんだ涙を拭きながら遊戯は言った。
「過去を振り返るのは海馬くんらしくないから、そんなことしなくていいけど」
「でもたまには横を見てボクやモクバくんや磯野さんたちが居るってことも思い出してよね」
一緒に前を見ている、ボクたちを。
遊戯は雑誌を脇に置いて、海馬との距離を詰めた。
END
社長はたまには過去を振り返って反省すべきだと思いますが(笑)
またほぼ拉致だしな(^^ゞ
お題は此方から
■十二ヶ月を巡るお題■
宿花(閉鎖されました)
2007.12.23