■鬱々とした日々(海表)■

■十二ヶ月を巡るお題■
鬱々とした日々(海表)
海表でお誕生日遊戯ちゃんと台風

 














 

 

「いってきまーす」
そう言って玄関を開けた遊戯は、そのまま扉を閉めようとして失敗した。
がっしりドアを掴まれて抉じ開けられる。
閉めようと頑張ってみたが、力ではちょっと敵わない。
「何故閉める」
「あはは。おはよう、海馬くん」
尤もな問いを遊戯は笑って誤魔化した。
でも朝玄関を開けたら、そこに同級生が黒服と黒塗り高級車従えて仁王立ちしてたら、回れ右をしたくなるよね、フツー。
しかもこの状況はほぼ100%、拉致とか拉致とか拉致とかだ。
経験上遊戯は知っている。
もちろん遊戯も、海馬と共に過ごせるのならそれは嬉しいのだが、一応学生の身の上だ。
成績優秀とはお世辞にも言えない遊戯は、平日は出来たら勘弁して欲しいというのが本音でもある。
そんな遊戯の心情など知らずに海馬は告げた。
「喜べ遊戯、このオレがお前の誕生日を祝いに来てやったのだぞ」
その言葉は遊戯の『平日は許してください』という心内を吹き飛ばした。
「・・・覚えてて、くれたんだ」


 6月4日。
遊戯の誕生日。


 「当たり前だろう。オレを誰だと思っている」
フン、と鼻を鳴らして海馬が言う。
『当たり前』だなんて、そんな言葉が遊戯にとってどれだけ嬉しいか海馬はわかっているのだろうか。
自分の誕生日ですら、忙しくて忘れてしまうような人なのに。
自分の興味のない相手のことは、まったく無視する人なのに。
「ありがとう、海馬くん!」
遊戯は、えへへ、と笑った。
「で、今から?」
「そうだ」
一応確認してみる。
海馬は当然だろうといった答えを返した。
まあ予想は出来たことだが、さらに一応言ってみる。
「ボク、学校あるんだけど・・」
遊戯だけではなく、海馬だって学生なのだが。
「勉強なら後でまた教えてやる」
学校にめったに来ない海馬に教えてもらうのも、其れってどうなの、と思う。
実際海馬の方が優秀だから仕方ないと言えばそうなのだが。
結局、何を言っても拉致決定なようだ。
「海馬くんって梅雨を通り越して台風だよねぇ」
台風は秋のもののような気がしていたけれど、最近は来るの早いし。
梅雨の晴れ間を見上げながら、遊戯は小さく呟いた。
じめじめした空気を吹き飛ばす、暴風雨。
しかし其れに巻き込まれるのは遊戯にとって嫌なことではないのだ。
  

梅雨特有の鬱々とした日々とは、無縁な人。

  
遊戯は台風の目と一緒に車に乗り込んだ。
本日学校は台風のため、お休みだ。



 



END






社長って梅雨って言うより台風だよねぇという。
本人は中心だから無風なのです。
でも回りは大変(^^ゞ





お題は此方から
■十二ヶ月を巡るお題■
宿花(閉鎖されました)

 

2008.06.30

 

 

 

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