■山積みの宿題(海表)■

■十二ヶ月を巡るお題■
山積みの宿題(海表)

 














 

 

いよいよ夏休みも残り僅か、必死でやらなければ宿題は到底終わらないだろう。
いや死に物狂いでやったとしても終わるかどうかわからない。
1日の朝ギリギリまで、大変なハードスケジュールになっている。
遊び呆けていた自分を罵りながら、本気でお尻に火のついた遊戯が机の上に宿題を広げた30日の夜、携帯が着信を告げた。
ディスプレイには『海馬くん』と表示されている。
忙しい海馬とは、夏休みの間もろくに会うことが出来なかった。
普段なら大喜びで携帯に飛び付くところだ。
が、山積みの宿題を前にして、遊戯は本当に追い詰められていた。
遊びのお誘いなら残念ながら遠慮したい。
しかし相手は拉致とか拉致とか、遊戯を拉致っていくとこに関しては常習犯の海馬瀬人である。
やんわり断って、それで納得してくれるかどうか。
そして嫌な予感はたいていの場合外れない。
恐る恐る通話ボタンを押す。
「もしもし海馬くん?」
『遊戯、明日は暇か』
やっぱり。
しかしまだ、暇か、と此方の予定を聞いてくれるだけマシになった。
昔だったら即効拉致られるところだ。
一緒に居られるのが嬉しくて、つい流されてしまう遊戯にも非はあるが。
「ええと、ごめん海馬くん・・ボク宿題が」
皆まで言わせず海馬は言った。
そう言われると思っていた、という反応だ。
『ウチで一緒にやらんか?』
「ええ?!」
意外も意外、思ってもいなかった海馬の提案に、遊戯は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
海馬は其れを気にせず続ける。
『二人でやった方が早いだろう。わからないところは教えてやる』
ほとんど登校してこないヒトの方が成績がいいのもどうなの、とは思うけれども、その申し出は大変魅力的だ。
宿題も片付くし、海馬と一緒にも居られる。
だけど。
「・・でも海馬くん一人でやった方が早いんじゃないかな・・」
足を引っ張るのも悪いし、そう思って遊戯がごにょごにょ言うと海馬は言った。
『さっさと終わらせてデュエルでもしよう』
「え、ホント!?行くっ!!」
遊戯は海馬の言葉にあっさり食いついた。
海馬とデュエル出来るなんてこんな嬉しいことは無い。
食いついた遊戯に海馬は言った。
『では1日は学校まで送ってやるから泊ってくると家の者に伝えてこい』
「うん!」
ん、泊まり?
徹夜でデュエル?
疑問を抱かないではなかったが、遊戯は二つ返事で頷いた。
『それと』
携帯の向こうで海馬が人の悪い笑みを浮かべた気配がする。


『オレからの宿題として、“上手なキスの仕方”もたっぷり教えてやろう』


「えっ!」
言うだけ言って切れてしまった携帯を持ったまま遊戯は冷汗を垂らす。



明日はやはりハードスケジュールになりそうだ。





END







もちろんキスだけじゃ済まないし(笑)







お題は此方から
■十二ヶ月を巡るお題■
宿花(閉鎖されました)

 

2009.08.30

 

 

 

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