雪の夜(海表)
「わあ、見て海馬くん!雪だよ!!」
明日仕事が休みで良かった。
だからこそ遊戯を家に招いて、泊まらせることに成功したのだが。
そんなことを考えている海馬の隣で、窓から空を見上げた遊戯は雪だ雪だとはしゃいでいる。
そのはしゃぐ様を可愛らしいと見るべきか、それとも子供のようだと評価するべきか。
そんなことを考えながら見ていると、視線に気がついた遊戯がぷぅと頬を膨らませた。
「子供みたいだって思ったでしょう」
「自覚はあるのか」
半分当たっていたので、態とからかう様にそう言ってやる。
遊戯はさらに不満そうに唇を尖らせた。
「海馬くんだって同い年じゃないか」
「確かにな。だが、社会人は雪では喜ばん」
「どうして?」
遊戯は首を傾げる。
遊戯にとって、雪合戦して雪だるま作って、雪が降るということは、楽しいことがいっぱいあると言うことだ。
「まず出勤するのに面倒だ」
遊戯の家は自営業、しかも祖父の道楽のような店だから、車通勤ならタイヤにチェーンを巻かなくては、とか混むのを見越して早めに出なくてはとか、そんなことは思いもつかないのだろう。
「そっか・・」
学生ではあるが、社長として働く海馬との違いを感じたのか、遊戯は目に見えてシュンとしてしまった。
先のはしゃぎっぷりとの落差が激しすぎて、悪いことをしたような気分になる。
「昔はオレもモクバと一緒に雪だるまを作ったりしたものだがな」
フォローにもならないような言葉を口にすると、遊戯がぱあっと顔を輝かせた。
「作ろうよ、雪だるま!」
そう言って海馬の手をとる。
「明日、雪が積もったらモクバくんも誘って一緒に遊ぼう!きっと楽しいよ!」
雪が降ったら、面倒だ。
すでに社会人の発想しか出来なくなっている自分を、別に可哀相だとは思わない。
そういう道を選んだのは自分なのだから。
けれど、遊戯が、楽しいことを海馬と共有しようとしているのはわかるから。
自分だけではなく、海馬とその気持ちを味わいたいと思ってくれているのはわかるから。
そしてそれが、嬉しいから。
「まあたまには子供の遊びもいいかもしれんな」
勿体ぶった口調でそう言うと、遊戯は嬉しそうに笑った。
その耳元に唇を寄せて海馬は言う。
「とりあえず今夜は大人の遊びをするか、遊戯?」
END
大人の遊びが目当てです(笑)
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capriccio
2010.01.24