■初空月(海表)■

■十二ヶ月
初空月(はつそらづき)  人いきれ。つないだ手。秘密の願いごと。




 














 

「あけましておめでとう、モクバくん」
新年早々、弟を訪ねてきた客は遊戯だった。
その後ろにオマケ共の姿も見える。
玄関先で上着を着込み、出掛ける準備万端なモクバが嬉しそうに出迎えるのを海馬は階段の踊り場から見ていた。
いつしたのか知らないが、今日はきちんと約束があったらしい。
「これから、初詣に行ってくるね。兄サマ」
此方を見上げてモクバが言った。
初詣。
成程、遊戯が新年に訪れた理由が其れでわかった。
新年に企業の更なる繁栄を神仏に祈ることは、会社の行事として一応残ってはいるが、形ばかりの物だ。
海馬は基本的にそのようなものは信じていない。
欲しいの物は自分の力でもぎ取るまでだ。
とはいえ、モクバが初詣に行きたがるのは、神や仏を信じているからでもないようだった。
今日は特に神社で甘酒やお汁粉などが振舞われるのだと嬉々として語る。
「屋台も出てる筈だよ」
そういう遊戯もモクバと一緒で詣でることは二の次のようだ。
何をしに行くのだか。
「海馬くん」
まったくくだらない、とばかりに奥へ引っ込もうとした海馬を遊戯が呼びとめた。
「よかったら、海馬くんも一緒に行かない?」
馬鹿なのかコイツは。
正直そう思った。
モクバは王国の一件で何やら遊戯に恩を感じたのかどうかしらないが、いつの間にか仲良くなっている節がある。
しかし自分は慣れ合う気などなかった。
そもそも、遊戯とのゲームに負けたのがケチのつき始めだったのだ。
意識不明になるわ、会社は乗っ取りかけられるわ、ロクなことが無い。
係わり合いになる気はなかった。
そのハズだった。
それなのに、今日遊戯がモクバを訪ねてきたと知って、わざわざ玄関まで様子を見に来てしまったのは何故だろう。
そもそも遊戯だって、自分に関わって酷い目に会ったのは確かなのに、何故わざわざ弟を訪ねて来たりするのだろう。
何故自分を初詣に誘ったりしているのだろう。



訳がわからない。



しかし海馬はわからないことを、そのままにして置く気はなかった。
わからないのならば、この際はっきりさせればいいのだ。
とことん追求して、解明すればいい。
「5分待て」
5分で出掛ける準備を整える。
そう告げると、外野はブーイングをしたようだが、遊戯は嬉しそうに笑った。

 

 




まずは神仏に祈る、遊戯を観察するところから始めるとしよう。





END




 





海→←表みたいな。
仲良くなりたい遊戯ちゃんと
仲良くなりたい自覚がないので屁理屈こねる社長。


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Fortune Fate

 

2011.01.31

 

 

 

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