■十二ヶ月
七夜月(ななよづき) 再会の星祭。揺れる笹の葉。想いの短冊。
モクバの誕生日プレゼントを選ぶのに付き合え、と言ったらば二つ返事でやって来て、此方の仕事が終わるのを大人しく待っている。
パソコンに向かって忙しく手は動かしながら、海馬は遊戯の様子を観察した。
ソファに座って置いてあった社のカタログなど眺めている。
機嫌は良さそうだ。
此処の所忙しく会う暇が無かった。
その辺を遊戯はちゃんと心得ていて普段特に文句を言ってきたりはしないが、今回は海馬の方が先に我慢出来なくなった。
会いたくて。
実を言うと誕生日プレゼント云々はモクバの入れ知恵だ。
仕事も大事だけど息抜きもしなきゃね兄サマ、と実に兄思いのいい弟だ。
遊戯に会いたいなら丁度いい口実でしょ、とにこりと笑われては、其れを使うしかあるまい。
誕生日パーティにも来るように伝えておいてね、とは何度も念を押されている。
モクバも遊戯のことは気に入っているのだ。
早く仕事を終わらせて息抜きしたいと内心焦っている海馬の気も知らぬ気に遊戯は呑気に言った。
「そう言えば海馬くんは短冊になんて書いたの?」
「短冊?」
キーボードの上を走る手は止めずに訊ね返す。
「七夕の願い事だよ」
七夕。
そう言えばモクバの誕生日は世間で言うなら七夕だ。
其方のほうは失念していた。
「書いておらん」
「えーそうなんだ」
意外そうに遊戯は言った。
七夕はクリスマスのようにおもちゃ業界は大忙しなのかと思っていたらしい。
だから七夕にももう少し関心があると予想していたようだ。
社長として関心が無いわけではないが、個人としては失念していた。
7月7日はモクバの誕生日以上の日では無かった。
「…お前は『ゲームが欲しい』とでも書いたのではないか」
「どうしてわかったの?!」
遊戯は吃驚したように此方を見た。
わかるに決まっている。
全く七夕なのかクリスマスなのか。
苦笑する此方に気がつかぬように遊戯は言った。
「海馬くんは『家内安全』とか書きそうだよね。あ、『社内安全』かな?」
「なんだそれは」
工事現場の『安全第一』みたいな短冊だ。
「じゃあ『商売繁盛』とか」
どうやら遊戯は四文字熟語で纏めたいらしい。
「お前の中でオレはどれだけ商売熱心な扱いになっているんだ」
「えーだって海馬くんの仕事大好きじゃない。一に仕事二に仕事、三、四が無くて五に仕事ってカンジ」
まるで歌う様に遊戯は言う。
海馬がかまってくれるのが嬉しいようだ。
「別に其処まで仕事が好きな訳ではない。…他にもっと好きなものもある」
「え、何?」
此方が答えないでいると遊戯は少し考えて言った。
「わかったモクバくんでしょ!」
当たったでしょ、という、どや顔で鼻息も荒く遊戯が笑う。
海馬は表面こそ出さなかったが内心がくりとした。
「…モクバは好きとは少し違う。大切な家族だ」
モクバは確かに大事だが、今海馬の言っている『好き』とは違う。
其処の所を遊戯自身に当てて欲しいのだが。
「ええー?じゃあ何?」
海馬くんが仕事とモクバくん以外で好きなもの…。
唸っていた遊戯は今度こそ当てた!という顔でニパッと笑った。
「わかったカードだ!」
海馬は今度こそがくりと肩を落とした。
どうやら遊戯には直接言って聞かせないとわからないらしい。
口実を使ってまで呼びだして会いたいと思う此方の気持ちは。
海馬は打っていた書類の文面を保存しパソコンを閉じた。
其れからソファの遊戯に歩み寄り、ズイと顔を寄せた。
「……海馬くん、近いんですけど」
「当たり前だ。此れから実践込みでオレが誰を好きか教えてやろう」
「ええーモクバくんの誕生日プレゼント買いに行くんじゃなかったの?!」
七夜月(ななよづき) 再会の星祭。揺れる笹の葉。想いの短冊。
モクバの誕生日プレゼントを選ぶのに付き合え、と言ったらば二つ返事でやって来て、此方の仕事が終わるのを大人しく待っている。
パソコンに向かって忙しく手は動かしながら、海馬は遊戯の様子を観察した。
ソファに座って置いてあった社のカタログなど眺めている。
機嫌は良さそうだ。
此処の所忙しく会う暇が無かった。
その辺を遊戯はちゃんと心得ていて普段特に文句を言ってきたりはしないが、今回は海馬の方が先に我慢出来なくなった。
会いたくて。
実を言うと誕生日プレゼント云々はモクバの入れ知恵だ。
仕事も大事だけど息抜きもしなきゃね兄サマ、と実に兄思いのいい弟だ。
遊戯に会いたいなら丁度いい口実でしょ、とにこりと笑われては、其れを使うしかあるまい。
誕生日パーティにも来るように伝えておいてね、とは何度も念を押されている。
モクバも遊戯のことは気に入っているのだ。
早く仕事を終わらせて息抜きしたいと内心焦っている海馬の気も知らぬ気に遊戯は呑気に言った。
「そう言えば海馬くんは短冊になんて書いたの?」
「短冊?」
キーボードの上を走る手は止めずに訊ね返す。
「七夕の願い事だよ」
七夕。
そう言えばモクバの誕生日は世間で言うなら七夕だ。
其方のほうは失念していた。
「書いておらん」
「えーそうなんだ」
意外そうに遊戯は言った。
七夕はクリスマスのようにおもちゃ業界は大忙しなのかと思っていたらしい。
だから七夕にももう少し関心があると予想していたようだ。
社長として関心が無いわけではないが、個人としては失念していた。
7月7日はモクバの誕生日以上の日では無かった。
「…お前は『ゲームが欲しい』とでも書いたのではないか」
「どうしてわかったの?!」
遊戯は吃驚したように此方を見た。
わかるに決まっている。
全く七夕なのかクリスマスなのか。
苦笑する此方に気がつかぬように遊戯は言った。
「海馬くんは『家内安全』とか書きそうだよね。あ、『社内安全』かな?」
「なんだそれは」
工事現場の『安全第一』みたいな短冊だ。
「じゃあ『商売繁盛』とか」
どうやら遊戯は四文字熟語で纏めたいらしい。
「お前の中でオレはどれだけ商売熱心な扱いになっているんだ」
「えーだって海馬くんの仕事大好きじゃない。一に仕事二に仕事、三、四が無くて五に仕事ってカンジ」
まるで歌う様に遊戯は言う。
海馬がかまってくれるのが嬉しいようだ。
「別に其処まで仕事が好きな訳ではない。…他にもっと好きなものもある」
「え、何?」
此方が答えないでいると遊戯は少し考えて言った。
「わかったモクバくんでしょ!」
当たったでしょ、という、どや顔で鼻息も荒く遊戯が笑う。
海馬は表面こそ出さなかったが内心がくりとした。
「…モクバは好きとは少し違う。大切な家族だ」
モクバは確かに大事だが、今海馬の言っている『好き』とは違う。
其処の所を遊戯自身に当てて欲しいのだが。
「ええー?じゃあ何?」
海馬くんが仕事とモクバくん以外で好きなもの…。
唸っていた遊戯は今度こそ当てた!という顔でニパッと笑った。
「わかったカードだ!」
海馬は今度こそがくりと肩を落とした。
どうやら遊戯には直接言って聞かせないとわからないらしい。
口実を使ってまで呼びだして会いたいと思う此方の気持ちは。
海馬は打っていた書類の文面を保存しパソコンを閉じた。
其れからソファの遊戯に歩み寄り、ズイと顔を寄せた。
「……海馬くん、近いんですけど」
「当たり前だ。此れから実践込みでオレが誰を好きか教えてやろう」
「ええーモクバくんの誕生日プレゼント買いに行くんじゃなかったの?!」
遊戯は悲鳴を上げたが、勿論海馬は其れを無視した。
END
海表
鈍い子には実践で。
お題はこちらから
Fortune Fate
2011.07.27