暮古月(くれこづき) 灯の彩。鈴音が刻む急ぎ足。零時までに伝えたい。
あけましておめでとう。今年もよろしくね。
書いた文章を遊戯は送信せず、保存して携帯を閉じた。
『送らないのか』
<遊戯>が不思議そうにそう訊ねる。
勿論送り先が誰になっていたかちゃんと見ていた。
海馬瀬人。
ついこの間、相棒の初詣一緒に行かない?という有難い誘いを仕事だとか言う素っ気ない言葉で断りやがった相手だ。
「年が明けたら送るんだよ」
本当についこの間のことで、断られた直後はかなりがっかりしていた様子だったのに、遊戯は明るく言う。
「海馬くんも一緒に初詣行けたら良かったのにね」
お仕事じゃ仕方ないよ。
遊戯はそう言うが、大晦日まで社長の仕事がある会社なんて年中無休のスーパーじゃあるまいし、そうそう無いだろう。
誘い方が悪かったのだ、と<遊戯>にはわかっている。
「城之内くん達と一緒に初詣に行くんだけど、海馬くんも良かったら一緒に行かない?」
相棒らしい謙虚な誘い方だ、とは思う。
だが此れでは海馬が誘いに応じる訳が無い。
海馬は城之内くんや自分、そしてその他大勢と一緒くたになどされたくなかったのだ。
自分だけが特別扱いされたかったのだ。
自分だけを見て欲しいのだ。
恋する男の心理なぞ多分遊戯には全くわからないのだろう。
同じ相手を見ているからこそ、奴の心理がわかると言うのも、何とも不条理な話だ。
「遊戯、お友達がみえたわよ」
「はあい!」
階下からの声に遊戯は上着とマフラーを持って降りて行った。
当然<遊戯>も城之内たちが迎えに来たのだと思っていた。
しかし其処に居たのは海馬だった。
「え、海馬くん?」
「初詣に行くのだろう」
「う、うん。お仕事終わったの?」
海馬は答えなかった。
背後に何時もの黒塗りの高級車も黒尽くめのSP達の姿も無い。
徒歩で来たのか帰らせたのか、完全に遊戯の方へ合わせた姿勢だ。
<遊戯>は吹き出しそうになるのを堪える。
海馬のヤツ、ヤキモチ焼いてやがる。
つまり一纏めとして扱われるのは我慢ならないが、かと言って遊戯が自分の知らない処で他の連中と楽しく時を過ごすのもやはり面白くないと言う訳だ。
簡単に言うならそれこそ嫉妬というヤツである。
相棒はいつもお前のことばっかり話すのにな。
さて此れから城之内達がやってくる筈だが、この愚鈍な社長はどうするつもりなのか。
喧嘩をすれば遊戯は悲しむし、下手をすれば海馬よりも城之内の肩を持つだろう。
お手並み拝見と言ったところだ。
END
海表というか
海→←表←闇
社長の気持ちはわかるけど
味方してやる気はさらさらない闇様である(^^ゞ
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Fortune Fate
2011.12.25