物思いに耽るばかりの秋の宵
久しぶりの逢瀬だというのに遊戯はいつもと違った。
学校であれがあった此れがあったと聞きもしない凡骨の話まであれやこれやと話しかけてくるのが常だと言うのに、今日の遊戯は何処かぼんやりしている。
「なんだ、浮かない顔だな」
「そうかな」
窓の外を眺めていた遊戯が此方を振り返った。
その顔に憂いは無いように見えるが、一応聞いてみる。
「なにか悩み事でもあるのか?」
「うーん…悩み事っていうのかなあ」
遊戯はうんうん唸ってから言った。
「ボク毎年この時期になるとすっごく頭使うんだよね」
「…ほお」
一瞬間が開いてしまった。
遊戯の成績はお世辞にも良いとはいえず、ゲーム以外のことについては頭脳派とは言い難い。
その遊戯が頭を使うことがあるとは正直驚きだ。
海馬の返答に遊戯はムッと頬を膨らませた。
「今、ちょっと馬鹿にしたでしょ」
「いや。…それよりお前が何にそんなに頭を使っているのか知りたいな」
さらりと誤魔化して先を促すと、遊戯は言うか言わないか迷っていたようだが結局口を開いた。。
「ええっとね…誰かさんのお誕生日に何を上げたら喜んで貰えるのかってこと」
誰か。
言われて思い当たるのは自分の誕生日だ。
そう言えばもうすぐだった。
ああ忘れていた、という表情を遊戯は読み取ったようだ。
「ボクにとってはすっごい大事なことなんだよ!だって喜んで貰いたいもん!!」
大好きな人の誕生日だもん。
大好きな人に喜んで貰えたらすっごく嬉しいじゃない。
言い募る遊戯の主張に思わず頬が緩む。
もうすでにそれだけで嬉しいのだと。
遊戯は解っているのだろうか。
「…本人に聞いてみればいいのではないか?」
「それはそうなんだけどね。内緒で用意して吃驚させたいってのもあるじゃない」
って、もう今年はこんな話しちゃってる時点で内緒でなんて無理かあ。
遊戯はふうと息を吐いてみせた。
其れから改めて、と言った顔で問う。
「ねえ海馬くん、お誕生日プレゼント何が欲しい?」
「そうだな」
海馬はほんの少し考える素振りを見せる。
「お前にリボンでも巻いて貰おうか」
END
海表
プレゼントはお前で、なんてベタですよ社長(笑)
お誕生日おめでとうございます!!
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現世の夢
2012.10.25