■冷たさが張り詰める冬の夜明け(海表)■

■季節4題
冷たさが張り詰める冬の夜明け



 










 

初日の出を見ようと誘われて海馬コーポレーションの屋上に連れてこられた。
正直、誘われた時は富士山の山頂とかに連れて行かれるんじゃないかとちょっと心配したんだけど、其処まで遠出されなくて良かった。
富士山ほどではないんだろうけど、寒い。
ボクが小さくくしゃみをすると海馬くんは毛布を持ってきてくれた。
ボクに被せてくれた毛布を広げて、海馬くんに被せ直して、其処へ潜り込む。
あったかい。
二人で居るとあったかいね。
ボクが笑うとボクの背中で海馬くんも少し笑ったのが解った。
空は段々明るくなってきている。
海馬くんと毛布にくるまってボクは街を見下ろす。
あ、ボクの家。
亀のゲーム屋の屋根はちょっと特徴があるから、此処からでも良くわかる。
「どうした」
海馬くんがボクが日の出る方向を見ていないのに気がついてそう言った。
「あ、うん。此処からだとウチも良く見えるなって思って」
「そうだな」
「ボクの家からも良く見えるよ、このビル」
だってこの街で一番大きなビルだもの。
「夜寝る前に会社を見て海馬くんはまだお仕事してるのかな、って思う」
ビルの上の方に灯りが付いているのを見て、無理しないでねって思う。
海馬くんも頑張ってるんだからボクももっと頑張らなきゃって思う。
色んな事を考えて、最終的に、やっぱり海馬くんのこと好きなんだなあって思う。
そう思うと心の中があったかくなる。
こうやって二人で居る時みたいにあったかくなる気がする。
「夜仕事をして遅くなった時、オレも良くあの屋根を、お前の部屋の窓の灯りを探す」
海馬くんは言う。



「あの灯りの下にお前が居るのだと思うと心の奥が少し暖かくなる気がする」


海馬くんもボクのことを考えてくれていたなんて。
離れていても繋がってるみたいで嬉しい。
離れていても二人で居るみたいにあったかい。



肩越しに振り返ると、海馬くんはとても優しい声で言った。
「ほら、遊戯。日が昇るぞ」
初日の出よりも今は海馬くんを見て居たいんだ。


「あけましておめでとう海馬くん」

 




今年もよろしくね。

 





END

 




海表
初日の出を二人で見る

 


お題はこちらから
現世の夢


 

2012.12.29

 

 

 

 

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