好き過ぎて簡単には言えない
海表
武藤遊戯はインドア派である。
勿論大好きなゲームの為になら何処へだって出掛けて行くアクティブさは持ち合わせているが、基本的には家の中の方が好きなのだ。
対して海馬瀬人は同じようにゲームが好きではあるが、まず行動するタイプだ。
アクティブなんて言葉通り越して想像を超えたぶっ飛んだことをするタイプである。
そんな瀬人にいきなり拉致られて何処かへ連れて行かれること数回、流石の遊戯も学習した。
自分の誕生日は忙しさにかまけて忘れるような人なのに、人の誕生日はきちんと覚えている人だということ、そして意外にイベント事が好きだということである。
つまり今までの経験を踏まえて予測するならば、遊戯の誕生日には玄関開けたら拉致コースどころか、日付が変わった時点で迎えが来る可能性が高いということだ。
遊戯はインドア派である。
そして出来たら人生平穏に暮らしたいと思っている。
けれど瀬人は遊戯のとても大切な人で、平たく言うならば所謂恋人だった。
好きな人と誕生日を一緒に過ごしたいけれど、大仰なことをされるのは正直勘弁して貰いたい。
結果、遊戯は誕生日に欲しいモノを予め瀬人に告げておく作戦に出た。
「海馬くん、あのね、もうすぐボクの誕生日なんだけど」
「知っている」
瀬人はあっさり頷いた。
「あの、ボク、実は欲しいモノがるんだ」
「なんだ」
自分からプレゼントを強請るなんて切り出しにくかったが、此処で躊躇していては拉致られコースだ。
「海馬くんに、ボクのこと『好き』って言って欲しい」
誕生日に出来るだけ沢山、キミからの『好き』が欲しい。
なんだそんなことか、と言われるかと思ったのに、瀬人は黙った。
「海馬くん?」
「条件がある」
「条件?」
「オレが『好き』だと言ったらお前も『好き』と返せ」
そんな条件を突きつけられるとは考えていなかった。
「オレだけが一方的に言うのでは、恋人同士とは言えないだろう」
「…うん、そうだね」
確かに瀬人の言う通りだ。
貰うばかりでは駄目だ。
「好きだ、遊戯」
「…面と向かって言われると恥ずかしいんだけど」
貰うばかりでは駄目だけと解っては居てもどうも恥ずかしくてもだもだしてしまう。
瀬人は澄まして言った。
「お前が言えと言ったのだろう」
「そうだけど、まだ誕生日じゃないし」
「オレは何時だって言いたいぞ。ただ、なかなか言う機会がないだけだ」
言わないけれど行動で示すタイプだ。
「でもそんなの気にしないで言う方かと思ってた」
「そんなことはない。何時言えばいいのか、どんな時に言えばお前の心に響くのか、何時だって考えている」
瀬人はいつだってちゃんと考えてくれてるのだ、と遊戯は知った。
突拍子もないとしか思えない言動も、どうすれば遊戯が喜ぶか、考えての結果なのだ。
そう思ったら自然と笑みが零れた。
「海馬くん、大好きだよ」
「改まって言うな」
照れているのか、拗ねているのか。
どちらとも取れる口調でそういう瀬人に、遊戯は笑った。
武藤遊戯はインドア派である。
けれどぶっ飛んだことをする大好きな恋人に振り回されるのも悪くは無いと思っている。
END
海表
遊戯ちゃんお誕生日おめでとう!!
社長も常識で測れない人ではあるけれど
やっぱ普通の高校生っぽいところもある…よね!ってことで
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恋したくなるお題(配布)
2013.06.04