■またひとつ惚れ直した(海表)■

■発展途上の恋のお題
・またひとつ惚れ直した(海表)

 










 


海馬くんは意外にマメな人だ。

やることのスケールが他とは違ってでかい人だから、結構大雑把なとこがあるんじゃないかと思っていたけれど、社員の誕生日を全部覚えていて、声をかけたりするらしい。

何それスゴイ。

あれだけ居る社員の誕生日をすべて覚えているなんて。
ボクにはとても無理だ。
「スゴイね海馬くん」
ボクがそう言ったら、海馬くんはいつものように鼻で笑ってこう言った。
「人心を掌握するためには必要なことだからな」
ナニソレ。
誕生日に社長に「おめでとう」って声をかけて貰える会社なんて、なんかアットホームな感じでいいなあと思ったのに、この一言で台無しだ。
「海馬くんはボクの誕生日も人心掌握の為に覚えててくれただけなの…」
そんなこと言うつもりはなかったのに、つい口から零れ出てしまった。
そうだ、なんて言われたら立ち直れない。
そう思っていたら、海馬くんはまた鼻で笑った。
其れから大きく手を振って宣言する。
「馬鹿め!このオレがお前を社員などと同等に考えていると思うのか!」
海馬くんらしいと言えば実にらしい回答なんだけど。
会社の人の事を思うと喜んでいいのか微妙な所だ。


そんな訳で海馬くんがボクの誕生日をちゃんと覚えててくれているのは確かな筈なんだけど、何も言われないからボクはもだもだしていた。


誕生日に城之内くんたちとの予定を入れちゃって、海馬くんとハチ合わせたりしたら、また揉めるかもしれないし、かと言って何も誘われていないのに開けておくのも自意識過剰な気がする。





そんな5月も半ばを過ぎたある日、モクバくんと遊ぶ機会があった。
モクバくんと遊ぶのは結構楽しい。
ゲームの合間にボクの知らない昔の海馬くんの話が聞けるのも楽しみの一つだ。
そろそろ休憩しようぜ、とモクバくんが言い出したので、テーブルを挟んでお茶をいただく。
他愛ない話をしていたら、モクバくんが言った。
「遊戯、再来週ってなんか予定入ってるか?」
「え、再来週?なかったと思うけど…」
突然再来週って言われても、何日だかわからなくて、ボクは壁のカレンダーに目をやった。
「あ、再来週はもう6月なんだね」
何の気なしに言ったんだけれど、モクバくんは、しまった、と言う顔をした。
「モクバくん?」
名前を呼ぶと、モクバくんは髪の毛をわしわしと掻いてから言った。
「あーもー、遊戯、お前の誕生日だよ!オレ、兄サマにさり気なく予定を聞いておけって言われたんだ」
モクバくんの話によると、今日ボクと会うのだと言ったらそう頼まれたのだそうだ。
サプライズを狙っているのだからさり気なくだぞ、と念を押されたので、ばれてしまったことは黙っていて欲しい、と言う。
ボクが頷くとモクバくんは大きく息を吐いた。
「全く兄サマもそんなの人に頼まないで自分でさっさと予定押さえちゃえばいいのにな」
「そうだね」
というか、海馬くんならばそうすると思っていた。
此処だけの話だけど、とモクバくんは声を顰める。
「兄サマってば、遊戯が城之内たちと先に約束しちゃったらどうしようかって、らしくなくうだうだしてたんだぜィ」
「え、ホントに?」
「だってオレ、遊戯に電話しようとしちゃ止めてる現場を押さえちゃったもん」


海馬くんが。
ボクが予定どうしようってもだもだしてたみたいに、海馬くんもいろいろ考えてうだうだしてたとか。

嘘みたいだ。

どうしようどうしようって馬鹿みたいに悩んでるのはボクだけだと思ってた。

海馬くんも同じだったと知って何だか嬉しくなる。


「此れ、内緒だかんな」
口の前で人差し指を立てるモクバくんに大きく頷いて見せる。
「そんな訳だから予定空けといてくれよな」
「勿論」



海馬くんは結構マメな人だ。

ボクの誕生日もちゃんと忘れずに祝ってくれると思う。







だからボクは当日朝から黒塗りの車が横付けされようが、ヘリで迎えが来ようが、動じないように心構えをしておかなきゃ。









 

 

 




END




海表
誕生日にお互いもだもだする海表
遊戯ちゃんお誕生日おめでとう!!


 


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2015.06.04

 

 

 

 

 

 

 

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