■夜の王(闇表)■

闇表パラレル。
ほとんど台詞のみで進むお芝居調の暗いお話です。









昔々あるところに夜の王が住んでいました。
孤独な寂しい王です。

 




 

 

 

「こんにちは」
「いやこんばんは、なのかな」
「ここはいつでも暗いから今が昼なのか夜なのかわからないんだ」
「ボクは外に出ないし」
「キミの顔もよく見えないほど暗くてごめんね」
「ああでもそれ以上こっちへ来ないでくれるかな」
「ボクのことは知っているよね」
「噂くらいは聞いたことがあるはずだよ」
「ボクは夜の王」
「死の王とも呼ばれてるけどね」
「ボクに触れるものはみな死ぬ」


「知っている」


「そうだよね」
「ここまで来るくらいだもの」
「ボクを殺しにきたの」
「ボクは殺せないよ」
「ボクに触れるものはみな死ぬ」
「剣もボクに触れれば錆びて崩れる」
「拳銃だって同じことだ」


「知っている」


「西の国の人がたくさん死んでいるのはボクのせいじゃないよ」
「あれは伝染病だ」
「移る病気なんだよ」
「薬の作り方を教えてあげる」
「だからそのまま帰ってくれないかな」
「ボクを殺すことは出来ないよ」
「だから」
「ボクのことは放っておいてくれないかな」
「どうせもうすぐボクは死ぬから」
「・・寿命だよ」


「知っている」


「オレは」
「お前の最後を見届けに来た」
 


「ボクの最後を?」

「それは無理だよ」
「ボクは一人で死ぬんだ」
「早く帰ってくれないかな」
「お願いだから」



「死の王は」
「死ぬときにその力を他人に譲る」
「触れたものすべてに死をもたらす力を」


「譲らなければ死ねないから」



「・・・どうしてそれを知っているの」


「前の死の王の力を受け継いだ」
「受け継ぐ前は普通の人間だった」



「どうして知っているの」


「触れたものは全て死ぬ・・・腐ってしまうから何も口にすることが出来ない」
「外見は若いけれど」
「実際はただ人よりも遥かにゆっくりと衰弱死に向かって生きているだけだ」
 

「・・・どうして」

「長い間、一人にしてすまなかった」


「キミは」



「来ないで」
「どうして戻って来たの」
「ボクはこの力を持ったまま死ぬんだ」
「ボクはこの力を死の国まで持っていくんだ」


「無理だ」


「無理じゃないよ」


「ボクはもう死ぬ」
「だから」
「それ以上近づかないで」
「お願いだから」


「その力を持ったまま死ねば」
「死の国でも・・・ひとりだ」

「誰にも触れられない」



「わかってる」
「いいんだ」
「こんな思いを誰かにさせるくらいなら」
「またキミにさせるくらいなら」


「オレは」
「お前にもうそんな思いをさせたくないんだ」

「だから」

 

「来ないで」

「死の王」


「いや・・・遊戯」
 

 

「触らないで」
「お願い」


「お前に・・安らかな死を」


「もうひとりのボク」

 

「お前がまたこの地に帰ってくるのを待っている」

 

 
相棒

 

 

 

 

 



 
昔々あるところに死の王が住んでいました。
孤独な寂しい王です。
王は其処でただ一人を待っているのでした。


自分の半身を。


そしてその腕に抱かれる日を。








END







わかりづらく不親切に台詞ばかりで進むお話(^^ゞ
ちょっと書いてみたかったのですよ。お芝居風?かなり実験的。
でも気に入ってます。
死の王の力を譲るってのはFF8で魔女がその力を譲らないと死ねない、みたいのがあったのでそんな感じで。
死の国ってのはソウルソサエティ(ブリーチ)みたいなイメージ(^_^)
ようするに二人は死ぬときにしか触れ合えないのですよ。

・・・雰囲気で読んでください。


 

2003.09.13

 

 

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