■瀬人と父の日のプレゼント■

海馬家シリーズ
父の日も近いある日、遊戯ちゃんとチビちゃんの会話・チビちゃん2,3歳。




海馬家とは

遊戯ちゃんと社長が夫婦で(にょたではないです)
長男は闇様で次男が乃亜王子というパラレルシリーズです。
基本は海表。
詳しくは此処から




武藤遊戯は高校を卒業すると思い切り良く海馬家へ嫁に行きました。
嫁、という表現は世間一般的には正しくないかもしれません。
武藤遊戯という人物は、小柄で細く大きな瞳が印象的な可愛らしい容姿を持ってはいましたがまぎれもなく「男の子」でしたから。
ですが海馬瀬人と武藤遊戯は「恋人同士」でありましたので海馬邸で一緒に暮らしだしたということは結婚したも同然ということでしょう。
男同士ではありましたが。
そうして二人の間に待望の第一子が生まれました。
何度も繰り返しますが二人とも男です。
普通に考えれば子供が出来るわけなどありません。
でもこの場合そんなことは些細なことなのです。
気にしてはいけません。
ここで問題なのはその生まれた男の子が遊戯が<もうひとりのボク>と呼んでいた古代エジプトの王様『アテム』の生まれ変わりだった、ということでした。

 

 

***************

 

モクバとの約束の時間まではまだ30分以上あった。
「早すぎたか」
腕時計を確認して瀬人はもう一度シートに凭れかかる。
取引先からの帰り道、学校帰りのモクバを玄関前で拾って帰社する予定だったのだが。
少し早かったようだ。
モクバはそれなりにスクールライフを楽しんでいるようだ、と思う。
瀬人は学校というものに価値を見出さなかったが、後に遊戯と出会ってその考えを少々改めた。
遊戯と会う時間を作るために登校するようになった。
モクバは、自分とは違う。
もちろんモクバが学校というものをどう捉えているのかはわからない。
行ってみて其処に意味がないと思えば副社長業に専念すればいい。
だが行ってみないことには判断は出来ない。
だからとりあえず学校優先とさせていたのだが、間違いではなかったようだ。
そんなことを考えながら車内に居た瀬人はまだモクバが帰宅しないと見ると車の扉を開けた。
まだ会社に仕事が残っている。
だがほんの僅かな時間でも遊戯の顔を見ていたくて。



いつもなら玄関を入るか否かの間で遊戯が飛んできて「お帰りなさい」と言ってくれるのだが、今日は様子が違っていた。
こんな時間に帰宅したからかと思ったがそうでもないらしい。
奥から赤ん坊の泣き声が聞こえて瀬人はそちらへ足を向けた。
「赤ちゃんは何でも口に入れようとするから・・ボクが気をつけなきゃいけないのにごめんね」
開け放たれたリビングのドアから遊戯の声が聞こえてくる。
「ありがとう、<もう一人のボク>」
腕の中の赤ん坊をあやしながら遊戯が小さな頭を撫でる。
どうやら赤ん坊が何か口にしようとしたのを<遊戯>が慌てて阻止したらしい。
赤ん坊の方はそれで泣き出したようだ。
「それ、海馬くん?」
赤ん坊をあやして部屋の中をうろうろしていた遊戯が視線を落として訊いた。
<遊戯>が床に広げた紙の回りにはクレヨンが散乱している。
「もうすぐ『ちちのひ』だから、かけって。モクバがいうから」
「へえー上手に描けてるねぇ!」
どうやら何処かで『父の日』の事を聞いて、それが何なのかモクバに尋ねたらしい。
モクバは絵でも描いてプレゼントしてやれ、とでも言ったのだろう。
遊戯の賛辞に<遊戯>も嬉しそうに笑う。
部屋に入ろうとした瀬人はしかし次の遊戯の言葉で足を止めた。
「もう一人のボクは海馬くんのこと大好きだもんね」
「おれはあいつなんかきらいだぞ!!」
思いっきり否定する<遊戯>を他所に遊戯の楽しげな声が続く。
「だって嫌いならそんな上手に描けないでしょ?」
「きらいだってかこうとおもえばかける!」
「そうかな?」
ムキになる<遊戯>に遊戯は楽しそうにそう言った。
「嫌いな人のことなんか其処までちゃんと見てないと思うけど。すごく特長捉えてるよ」
「そんなことない。あいつなんかきらいだ」
「そうかなぁ?」
ただ疑問符で返してくる遊戯に<遊戯>はうーと唸った。
降参の合図だ。



「・・・本当は・・・・・ない・・」





それから<遊戯>が小さな小さな声で何か言ったが何と言ったか瀬人にはそれは聞こえなかった。
遊戯の嬉しそうな様子が伝わってきただけだ。



だけど、それで十分だった。


 

 

***************

 


父の日に渡された絵には紙いっぱいにクレヨンで決闘服を着て高笑いをする瀬人が描かれていました。
「あいぼうにじょうずだってほめられたんだぜ!」
偉そうに胸を張る小さな頭を瀬人はくしゃりと撫でてやりました。


この絵はきっと大事にされることでしょう。



海馬家は今日も平和です。



END

 

 





チビちゃんは大きくなったら遊戯ちゃんを社長から奪って嫁にするんだ!と思ってるけど(本気)
でも社長のことも本当は嫌いじゃないんだよ、みたいな(笑)
チビちゃんが言ったのは
「本当は嫌いじゃない」
素直じゃない言いようが父親似(^_^)
本家「闇っ子転生家族計画」さまではすでにお馴染みの海馬家次男坊「乃亜」
無理やり登場(笑)
だって出したかったんだもの!
王子大好きです。
これから活躍させたい・・・(希望)


2004.06.20

 

 

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