■瀬人とチビと猫のなで方■

海馬家シリーズ
ネコと仲良くしたいけど上手く出来ないチビちゃん。0〜1歳。




海馬家とは

遊戯ちゃんと社長が夫婦で(にょたではないです)
長男は闇様で次男が乃亜王子というパラレルシリーズです。
基本は海表。
詳しくは此処から




武藤遊戯は高校を卒業すると思い切り良く海馬家へ嫁に行きました。
嫁、という表現は世間一般的には正しくないかもしれません。
武藤遊戯という人物は、小柄で細く大きな瞳が印象的な可愛らしい容姿を持ってはいましたがまぎれもなく「男の子」でしたから。
ですが海馬瀬人と武藤遊戯は「恋人同士」でありましたので海馬邸で一緒に暮らしだしたということは結婚したも同然ということでしょう。
男同士ではありましたが。
そうして二人の間に待望の第一子が生まれました。
何度も繰り返しますが二人とも男です。
普通に考えれば子供が出来るわけなどありません。
でもこの場合そんなことは些細なことなのです。
気にしてはいけません。
ここで問題なのはその生まれた男の子が遊戯が<もうひとりのボク>と呼んでいた古代エジプトの王様『アテム』の生まれ変わりだった、ということでした。

 

 

***************

 

ソファに腰掛けて新聞を読んでいた瀬人は足元に気配を感じて紙面から目を離した。
足に頭を擦り付けるように、ネコが二匹。
白いネコと、黒いネコ。
元々このネコ達は遊戯が拾ってきたネコだ。
遊戯の家では飼えない事情があったため海馬の家で飼うことになった。
なりゆきとはいえ今ではりっぱな海馬家の一員だ。
このネコ達は二匹とも比較的おっとりとしていて人間大好きな甘えたネコなのだが、最近ちょっと問題があった。
「にゃー」
ネコのものではない声。
<遊戯>だ。
猫を追いかけてきたらしい。
ハイハイが出来るようになってからというもの<遊戯>の世界は一気に広くなった。
何処へでも行ってしまう。
もっとも遊戯の傍からは離れないのでとりあえず危険はないのだが。
しかしハイハイ侮るなかれ。
遊戯の気配のないところまでは行かないとはいっても、これが意外に早いのだ。
ノンビリしたネコ達にとっては突然現れた強敵であった。
いきなりしっぽを握られたり、ぎゅうと押さえられたり。
どうにも加減というものがわからないらしい。
本人はネコのことが好きで仲良くしたいだけなのだが、ネコの方はたまったものではない。


好きなものを、離したくない。
そう思う気持ちはわからないではないが。


しかしつい昨日もシロい方のしっぽを捕まえて離さなかったため、救出にきたクロにとうとうネコパンチを食らっていたというのに、まったく懲りていない。
ものすごい勢いで泣いていたが、それでもネコと遊びたいらしい。
この諦めの悪さは天性のものなのか、それとも遊戯に似たのか。
ネコの方は高速でやってくる懲りない<怪獣>から逃げてきたらしい。
瀬人の足元で相手の出方を伺っている。
「・・・ふむ」
瀬人は少し考えて読んでいた新聞を棒状に丸めた。
それからその棒の先でネコの方へ寄ってくる<遊戯>を突付く。
「やー!」
もちろん<遊戯>は嫌がってそれを避けようとする。
其処へもう一度。
「うー」
新聞を払おうとするかのように手を振った<遊戯>は失敗してペタン、と尻餅をついた。
みるみる両目に涙が浮かんでくる。
と、思う間に火がついたように泣き出した。
「どうしたの?!」
文字通り遊戯が飛んできて<遊戯>を抱き上げる。
説明を求めて視線を送ってきたので瀬人は正直に言った。
「そいつがネコを追い掛け回すので新聞で小突いただけだ」
「もう・・・」
新聞で出来た棒を広げながらの言葉に遊戯は呆れた声を出す。
「よしよし、泣かないで<もう一人のボク>」
「にゃーが・・」
泣きながら<遊戯>が訴える。
「うん、ネコと遊びたいんだね」
「うー」
そのネコの方は遊戯がきたことでもう安心、と思ったのかしわになった新聞を読む瀬人の足元で寛いでいる。
泣いていた<遊戯>が落ち着くのを待って遊戯は瀬人の隣に腰を下ろした。
シロの方が様子を見るようにソファの上に乗ってくる。
「ネコと遊ぶにはもっと優しく触ってあげなきゃ駄目だよ」
遊戯はシロの喉元を撫でてやった。
ゴロゴロと喉を鳴らすネコはとても気持ちが良さそうだ。

 



「こうやって『好きだよ』って気持ちを込めて撫でてあげてね」




<遊戯>が手を伸ばすとネコは少し身を引いた。
「うー・・」
嫌がられてまた半べそをかく<遊戯>の手を遊戯は握るとネコにそっと触れる。
「こんな風に、優しくぽんぽんって叩いてもらうのも好きなんだよ、ネコは」
遊戯の言葉どおりネコは喉を鳴らし始めた。
その様子をみていたもう一匹が自分もかまって欲しくて寄ってくる。
ネコに囲まれた<遊戯>が嬉しそうに笑った。


 

***************

 

 


その日の午後、昼寝をする<遊戯>の背を遊戯が寝かしつける時に良くやるように瀬人は軽く叩いてやりました。
ぽんぽん、と優しく。
遊戯の言葉を思い出しながら。


「こうやって『好きだよ』って気持ちを込めて撫でてあげてね」

 

海馬家は今日も平和です。



END

 

 




チビちゃん、ネコと仲良くなるの巻(笑)
パパは子育てに協力的です(多分)
「やられたら嫌なことは他人にもやらない」
小突いて教える父(笑)
そしていろんなことを社長に教えてるのは遊戯ちゃん、みたいな。

2004.07.06

 

 

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