■かまってちゃんと浜辺の焼きそば■

海馬家シリーズ
夏休みにみんなで海へきました。チビちゃん4〜5歳。




海馬家とは

遊戯ちゃんと社長が夫婦で(にょたではないです)
長男は闇様で次男が乃亜王子というパラレルシリーズです。
基本は海表。
詳しくは此処から




武藤遊戯は高校を卒業すると思い切り良く海馬家へ嫁に行きました。
嫁、という表現は世間一般的には正しくないかもしれません。
武藤遊戯という人物は、小柄で細く大きな瞳が印象的な可愛らしい容姿を持ってはいましたがまぎれもなく「男の子」でしたから。
ですが海馬瀬人と武藤遊戯は「恋人同士」でありましたので海馬邸で一緒に暮らしだしたということは結婚したも同然ということでしょう。
男同士ではありましたが。
そうして二人の間に待望の第一子が生まれました。
何度も繰り返しますが二人とも男です。
普通に考えれば子供が出来るわけなどありません。
でもこの場合そんなことは些細なことなのです。
気にしてはいけません。
ここで問題なのはその生まれた男の子が遊戯が<もうひとりのボク>と呼んでいた古代エジプトの王様『アテム』の生まれ変わりだった、ということでした。

 

 

***************

 

 

「あいぼう、オレかきごおりがたべたい」
足に纏わりついて<遊戯>が遊戯を見上げる。
「うん、いいよ。今作ったげる」
遊戯は小さな遊戯の目線にあわせてしゃがむとそう言った。
「オレが作ってやるよ。海の家でバイトしたこともあるんだぜ、オレ」
横からバイト王城之内がやってきて言う。
バイト経験豊富な城之内の言葉に遊戯は笑った。
「じゃあお願いしていい?城之内くん」
「いっぱい!」
「おう!サービスしてやるぜ!!」
<遊戯>のおねだりに城之内が笑って答えたところで遊戯が警告カードを提示した。
「駄目だよ、そんなに食べたらお腹壊すから」
「えー」
「だから、ボクと半分コしよ?」
にっこり笑ってそう提案されれば<遊戯>に否はない。
遊戯につられるように嬉しそうに笑って頷いた。
しかし別のところから抗議の声が上がる。
「ちょっと待て」
もちろんこの不機嫌な声の主は瀬人だ。
「どうしたの海馬くん?」
「何故凡骨どもが此処に居るのだ」
瀬人の不満も尤もだった。
何故なら此処は海馬家のプライベートビーチ。
<遊戯>の幼稚園が夏休みに突入し、『せっかくお休みなんだから何処かへ一緒に行きたい』という遊戯の望みをかなえるために此処へきたのだ。
遊戯は<遊戯>に子供らしい思い出をたくさん作ってあげたい、と思っているらしい。
とにかく此処は海も綺麗だし、景色も綺麗だし、言うことなしな場所である。
プライベートビーチであるから他に人影も無く、好きなだけ海で泳ぐことも出来る。
はずだった。
それなのに何故か城之内以下いつものメンバーが顔を揃えているのだ。
仕事の関係で遅れて浜辺にやってきた瀬人は不機嫌絶頂だった。
はっきり言えば瀬人は遊戯さえ居ればいいのだ。
<遊戯>だって本当は居なくていいくらいなのだ。
そりゃ不機嫌にもなるだろう。
「ボクが呼んだんだ」
遊戯が答えた。
「ごめんね・・だって大勢の方が楽しいかと思って」
しかし下から見上げるようにしてそう謝られてしまっては瀬人に怒りを持続させる術はない。
「まあ・・いいだろう」
「そうだ、けちけちすんなよ海馬!!」
「やかましい!」
「喧嘩しないでよー」
せっかくまあいいか、という気分になったのに城之内の一言で瀬人はキィと怒鳴った。
その間も城之内の手は休むことなくカキ氷を作っている。
プライベートビーチ故に此処には海の家など出ていない。
しかし屋台の焼きそばやカキ氷といったものは何故か美味しそうに見えるものだ。
その場の雰囲気というものがそう感じさせるのかもしれない。
そういう雰囲気も<もう一人のボク>に味あわせてあげたいなぁという遊戯の願いを瀬人はもちろん叶えてやろうとした。
そこでこの「海の家」だ。
カキ氷を作るためのセットやもちろん焼きそばセットなど、海の家でありそうなものはおおよそ揃えてある。
本当は短期のバイトを雇うか、磯野に作らせるつもりだったのだが。
そもそもこういうセットを用意していることを遊戯に言ったのが間違いだった。
そんなものがあると知れば遊戯は「みんなでわいわい作った方が楽しい」と考えるに決まっていたのだ。
遊戯と<遊戯>はきゃあきゃあ言いながら城之内の削った氷に赤いシロップをかけている。
まあ、いいか。
瀬人は浜辺に用意してあったチェア―に腰を下ろした。


遊戯が、楽しいのなら。


あくまでも息子のことは念頭に無い瀬人だ。
実にわかりやすい。
瀬人の沈黙をどうとったのか遊戯が傍へやってきた。
「ごめんね、海馬くん。疲れてるのに騒いで・・」
どうも遊戯の謝罪は的がずれている。
疲れているところへたくさん人を連れてきて騒いだため不機嫌になったと思ったらしい。
そうではなく、ただ単に遊戯と二人っきりで過ごしたかっただけなのだが。
というかそもそも息子を連れてくることが目的なので最初からそれは無理なのだが。
とにかく遊戯ときたら自分関係のこととなると激烈に鈍いのだ。
人のことならばすぐにわかるくせに。


そう思っていると目の前にスプーンが差し出された。
赤いシロップのかかった氷。
「これ美味しいから食べてみてよ」
目を上げるとにっこり微笑まれる。
食べ物で気を引こうという、瀬人が遊戯に対してよくやる戦法なのだがこれが実は瀬人に対しても結構有効なのであった。
つまり「はい、あーん(ハートマーク付き)」という状態だからだ。
そんな美味しい状況を瀬人が逃すわけは無い。
気乗りしない風を無理に装って口を開ける。
「美味しい?」
「・・・まあまあだな」
ただの氷に市販のシロップをかけたカキ氷など本来なら何の感慨も抱かないのだが、遊戯が笑うので瀬人はそう答えた。
「あいぼうー」
「あ、ごめんね、<もう一人のボク>」
そもそも<遊戯>のリクエストだったのに瀬人に先に食されて不満そうな声を出す相手に遊戯はスプーンいっぱいにカキ氷を差し出した。
だが<遊戯>はそれをじっと見ているだけで口を開けようとしない。
「どうしたの?」
「このスプーンじゃやだ」
「え?何で??人が使ったスプーンだから?」
遊戯の問いにくすくすと楽しそうな笑い声が被った。
獏良だ。
「違うよ、遊戯くん。<遊戯>くんはね、海馬くんの使ったスプーンだから嫌なんだよ」
「・・・どうして?」
心底理由がわからない遊戯の質問には答えず獏良は続けた。
「そのスプーン、一回遊戯くんが使ってみてよ?」
「?」
はてなマークはそのままに遊戯は言われたとおりカキ氷を口に運ぶ。
「じゃ、もう一回<遊戯>くんに」
獏良の言葉に従ってもう一度<遊戯>にカキ氷を差し出す。
<遊戯>はむぅと口を尖らせて獏良を見たが今度は大人しくそれを食べた。
「ひゃはははー」
特徴のある笑い声が響く。
「王様オマエ、わかり易すぎだぜ!!」
「うるさいぞバクラ!」
ゲラゲラと笑い続けるバクラに<遊戯>はきぃと怒鳴った。
こういうところが実は瀬人にそっくりなのだが本人は幸せなことに気がついていない。
「だいたいおまえなんかよんでないぞ!だいいちなんでおまえは」
「こら」
<遊戯>の言葉を遊戯が柔らかくたしなめる。
第一なんでお前は子供じゃないんだよ?!と続けようとした<遊戯>は怒られてモゴモゴ言った。
「そういうこと言っちゃ駄目だよ?」
「だって・・バクラが」
「獏良くんが来てるのに、バクラくんだけ置いてきぼりじゃあ可哀想でしょ?」
何とか言い訳しようとする<遊戯>に遊戯は重ねて言った。


「それでなくてもバクラくんは寂しがり屋さんなのに・・・」


「ちょっと待て!!!」
絶妙のタイミングでバクラの突っ込みが入った。
「誰が寂しがり屋だ、おい!!!」
「うるさいよ」
遊戯に詰め寄ったバクラの頬を獏良がみにょん、と引っ張る。
「あにひやがる、やろるし!!!」
注釈を入れさせていただくと『何しやがる、宿主!!!』である。
この口調では凄まれてもまったく怖くないが、もともと獏良はそんなことでは怯まない。
「だいたい、『王様』とか『宿主』とか呼ぶのいいかげんやめて欲しいんだけどなー」
「でもボクも<もう一人のボク>ってつい呼んじゃうし・・」
にっこり笑顔で口調は柔らかなまま、むにむにとバクラの頬っぺたを引っ張る獏良に、遊戯がフォローを入れようとする。
「うん、まあいいんだけどね」
「遊戯―!獏良―!焼きそば作るから手伝えよー!」
それを城之内の声が遮った。
勤労学生城之内はどうしても習性でそういう作業の中心にいるようだ。
「行こ、遊戯くん」
城之内の呼びかけに応じて獏良が遊戯を振り返る。
「こんな『かまってちゃん』達ほっといてさ」


「誰が『かまってちゃん』だ!!」


バクラが宿主の台詞に反応して怒鳴った。
「ちょっと待て!!『達』というのは何だ!!」
やや遅れてチェア―からも同様の怒鳴り声が上がった。



 

 

***************


 

 

それから城之内を中心にして全員で手伝って焼きそばをたくさん作りました。
『みんなでたべたやきそばはとってもおいしかったです』
<遊戯>の絵日記に描かれた楽しそうな絵を見て遊戯は幸せそうに笑いました。
もちろん瀬人も。



海馬家は今日も平和です。



END

 

 





まず最初に謝ります。
すいませんm(__)m
バクラ様が子供(転生)ではないのは私の趣味です。
バク獏がしたかったんです(バク獏には見えないけどな・笑)
「かまってちゃん」ってあんまし言わないかな。
かまって欲しくて自分に気を惹こうとあだこだ騒ぐコのことです(笑)
獏良くんに言わせるとバクラ、社長、チビの3人(^_^)
 

盗賊王を子供にしても良かったんだけど
そうすると誰と誰の子にしようか悩むので。
バクラ様と盗賊王は私的にはちょっと別物なんだけど
世間ではあまりそうではないし(^^ゞ
獏良くんとバクラ様の子供が盗賊王ってのは・・それってどうよ?と思いまして(^^ゞ
盗賊王はあまり幸せな子供時代をおくってないので
どうせ子供(転生)にするならうんと幸せにしてあげたい。
チビちゃんのように親に愛されて大きくなって欲しい。
それが無理ならバク獏で、みたいな(笑)

 

2004.09.04

 

 

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