遊戯ちゃんと闇様が社長のうちでメイドのバイト。
女装ですので注意。
「どうした相棒」
長い廊下を並んで歩きながら<遊戯>が遊戯に訊きました。
「え・・・」
さっきから遊戯の歩き方が変なのに当然<遊戯>は気が付いていました。
右足を少し引きずっているような感じです。
だけど遊戯は自分から痛いとか辛いとかは言ってくれないのでした。
心配をかけたくないという遊戯の気持ちはわかります。
だけど<遊戯>としてはもっと頼って甘えて欲しいのでした。
「ん・・・ちょっと」
案の定、遊戯は<遊戯>に余計な心配をさせないように言葉を濁しました。
「・・・相棒」
だけどそんなことで誤魔化しきれないのもわかっています。
何しろ二人は二心同体。
とても近い位置に遊戯と<遊戯>はいるのですから。
今は事情により身体が分かれていますが。
二人は今海馬邸のメイドのアルバイトをしているのでした。
この海馬邸にいる間だけ別々の身体になることが出来るのです。
細かいことは突っ込まないでください。
なにしろギャグなんですから。
「ちょっと靴があたって・・・」
ここで言わないと益々<遊戯>が心配するのはわかっていましたので遊戯はもう正直に打ち明けることにしました。
靴擦れが出来てしまったようです。
ただそれだけで。
たいしたことはないんです。
「靴?」
だけど<遊戯>は眉根を寄せました。
海馬邸は日本国内にある屋敷ですがその中では外国のように靴を履いたままです。
メイドである遊戯たちにもメイド用の靴が配布されていました。
赤、と言ってもワインレッドの高級そうな靴です。
とても履き心地はいいのですが何しろ新しい、なれない靴。
どうも足にあたるのです。
「見せてみろ」
そう言って<遊戯>は丁度廊下の突き当たりにあった花瓶をぽいっと下に降ろしました。
花瓶と言っても花は活けていませんでしたので壺と言った方が正しいかもしれません。
とにかく放り投げましたのでもちろん、花瓶は割れます。
当然です。
「もう一人のボク!」
遊戯が焦って呼びかけましたが<遊戯>はそんなことなどお構いナシです。
遊戯の身体をひょいっと抱き上げて花瓶の置いてあっった台の上に遊戯を座らせました。
<遊戯>は花瓶なんかより遊戯のほうが大切なんです。
それはわかりますが他人の家のモノ、しかもこの場合ご主人様のモノなんですが。
それすら<遊戯>にとってはどうでもいいことなのでした。
それから遊戯足元に膝をつき、靴をゆっくり脱がせます。
遊戯は今日、素足でした。
ストッキングなども海馬家のメイドには支給されているのですがあの感触がどうも遊戯は好きになれないのでした。
それでいつもは家から靴下を持参するのですが今日は忘れてしまったのです。
それで靴擦れを起こしてしまったようです。
「赤くなってるな」
「たいしたことないよ」
遊戯は言いました。
本当にたいしたことはないんです。
「でも」
だけど<遊戯>は納得できないようでした。
遊戯の『大丈夫』はあまり当てにならないことを知っているからです。
「・・・痛そうだ」
言いながら<遊戯>はその赤くなった遊戯の足にそっと唇を当てました。
「ひゃぁ!」
遊戯は驚いて足を引っ込めようとします。
だけど<遊戯>の力は強く、なかなか離してくれません。
<遊戯>が遊戯を見上げてきます。
その視線に見つめられることがなんだかすごく恥ずかしくて顔が赤くなるのを止められません。
「離してよ、もう一人のボク」
「何故?」
「何故って・・・」
問い返されて遊戯は困りました。
「だってそんなこと、普通しないよ・・・」
足にキス、だなんて。
確かにあまり一般では見かけない行為です。
だけど<遊戯>は平気で言いました。
「よく『舐めときゃ直る』って言うじゃないか、相棒は」
遊戯はぐっと詰まりました。
確かにそう言ったこともあります。
「だ、だけど・・・」
遊戯がなんとか言い返そうとしたとき、第三者の声がしました。
「どうした」
「あ、海馬くん」
海馬家の主人、海馬瀬人でした。
本来ならご主人様と呼ばなければいけないのでしょうが遊戯はついいつもどおり呼んでしまいます。
瀬人の方もそのことについてはあまり気にしていないようです。
もっとも一度<遊戯>の方が『ご主人様』と呼んだ時には即座に『やめろ!』と叫びましたが。
トリハダが立つのだそうです。
効果音は『ゾゾゾ』でお願いします。
瀬人はもちろん壊れた花瓶に気がつきましたが無視しました。
どうでもいいことだからです。
さすがお金持ち、太っ腹!・・と言いたいところですが単にソレに興味がないだけでした。
もしかして<遊戯>はそれがわかっていてやっているのかもしれません。
「どうしたんだ、遊戯?」
瀬人の後ろから彼の弟のモクバが顔を出しました。
「うん、靴擦れが出来ちゃったみたいで・・・」
「ふーん・・・」
遊戯の足をモクバは覗き込みます。
「とりあえず、バンソコ貼っとく?」
モクバは持っていたカバンの中から小さな箱を取り出しました。
「こないだ、遊戯に貰ったやつだけど、いい?」
「うん」
コンビニで買ったキャラクターの絵のついた絆創膏。
たまたま他に無かったから買っただけのものだったのですがこのキャラクターが実はモクバの好きなものだと知って箱ごとあげたのでした。
「貼ってやるよ」
そう言ってモクバは遊戯の足に絆創膏を貼ってくれました。
「ありがとう!」
嬉しそうに礼を言う遊戯と対照的に<遊戯>の方はなんだか面白く無さそうな顔をしています。
まあ・・・気持ちはわからないでもありませんが。
モクバも油断できない。
と<遊戯>が思ったかどうか。
それは本人にしかわかりません。
度胸のある方は訊いてみて下さい。
おまけ
ただ<遊戯>が瀬人の次の言葉でさらに不機嫌になったのは確かです。
正確には瀬人の行動で、ですが。
「新しい靴を用意してやる」
そう言って瀬人は遊戯を抱えあげたのです。
お姫様抱っこ、というヤツです。
「歩けるから降ろして!」
と暴れる遊戯を抱えた瀬人の後ろを
「降ろせと言ってるだろう!!」
とやはり騒ぐ<遊戯>が追いかけていきました。
モクバはちょっとため息をついて、でも楽しそうにその後をついて行きました。
遊戯の脱いだ、片方の靴を持って。
本日の支出
花瓶・・・・・・・・・・300000
オーダーメイドの靴・・・ 45500
(消費税別)
ココのご主人様はメイド(約一名)に甘いようです。
END
オーダーメイドで靴を作ったらどのくらいかかるのかしら?と思って調べてみたら
靴(本体)代27500+直し代6000+仮縫い代12000
計45500円ナリ。
・・・高っ!
それとも直し代と仮縫い代は靴代に入ってるのかしら?
2003.02.10