■手紙(モク表)■

小姑様シリーズ・モクバ→表(?)表受
大混戦(笑)




小姑闇様シリーズとは
遊戯ちゃんを溺愛してる闇様が
大事な相棒を守るため邪な心を持って近づいてくる輩を撃退する話(ちょっとウソ・笑)です。
遊戯ちゃん逆ハーレム状態。でも無自覚。









上履きの上にピンクの封筒。





珍しく余裕を持って登校したオレは下駄箱で遊戯と会った。
「おっす、遊戯」
「城之内くん、おはよう。今日は早いんだね」
遊戯の笑顔を見ながらああ、とかなんとか答える。
今日は朝からついてるな。
小さな幸せを噛み締めるオレの後ろ頭を遊戯の声がつついた。
「あれ?」
「なんだ、遊戯?」
自分の靴箱を覗き込みながら不信な声を出した遊戯に何事かとオレも覗き込む。

靴箱の中に見慣れないピンクの封筒。

シンプルだが女の子らしい感じのピンク色の封筒を遊戯は手にとった。
表には可愛い字で“武藤遊戯様”
「なんか・・・ラブレターみたい・・」
自分で言ってなんだか恥ずかしくなったのか遊戯はほんの少し頬を染めた。
・・・嬉しそうだ。
「みたい、じゃなくてラブレターなんじゃないのか?」
茶化すように言いながらオレは心穏やかではなかった。
ラブレター。
どこのどいつだ。

遊戯にラブレターなんて出す命知らずは!

オレ達がどれだけ苦労してると思ってんだ。
その“苦労”の張本人は今は姿こそ見えないがかなり不機嫌な様子だ。
遊戯が首から下げた千年パズルがかなり不穏な雰囲気を発している。


はっきり言って怖い。


<遊戯>の遊戯に対する執着って言うか独占欲って言うか、とにかくソレは結構来るものがある。
溺愛してる、ってのが一番近いかもな。
ヘタに遊戯にちょっかいを出そうものならたちまち罰ゲームの餌食だ。
それでも懲りないんだよな。
オレを含めて。
「ラブレターならもう一人のボクにだね」
なんでやねん、とオレは思わず突っ込みを入れる。
「お前宛じゃないのか?」
遊戯宛じゃなくて<遊戯>宛の方がまだオレとしてはいいんだが。
遊戯は封筒をひっくり返した。
裏には差し出し人の名前はない。
「とにかく開けてみろよ」
「う〜ん・・・」
遊戯は難色を示した。
人宛の手紙を読むのはイヤだ、というのがその言い分。
「最近、もう一人のボクちょくちょく出てきてるからボク宛じゃないと思うんだよね」
「そんなことわかんねえだろ」
遊戯は自分がどれだけ魅力的か知らないから困る。
<遊戯>の方がカッコいし、もてる、と信じて疑わない。
ああまあ何にも知らない女子なんかは<遊戯>をカッコイイ!とか思うのかも知れないけどよ。
何でアイツが最近よく出てくるかって言うと遊戯に寄って来る御伽だの海馬だのを牽制したり撃退するためなんだぜ?
真実を知らないって怖いことだよな。
それでも開けることを渋る遊戯に重ねて言う。
「もうひとりの遊戯だってお前宛だったら見るの嫌だと思うぜ?」
嘘。
もし遊戯宛だったら<遊戯>は気になって気になって見たくて仕方ないだろう、と思う。
言えないだろうけど。
「・・・うーん」
「だからさ、とりあえず“2人”で読んでみろよ」
中に相手の名前とか書いてあるかもしれないだろ、と言うと遊戯はそうだね、とようやく納得して頷いた。



まだ人もまばらな教室の隅で遊戯は封筒を開けた。
オレは離れた自分の席でそれをちらちら気にしてる。
遊戯はもうひとりの<遊戯>となにやら相談している、ようだ。
なにしろもうひとりの<遊戯>はオレには見えないからよくわからないのだが、そんな感じ。
と、遊戯がとことことオレの所に来て言った。
「城之内くん、ちょっと見てくれる?」
困惑した様子で言いながら便箋を差し出す。
オレは封筒とお揃いのピンク色の便箋を受け取りながら聞いた。
「見ていいのか?」
「うん」
見ていいってことはとりあえずラブレターじゃなかったってことだよな?
ああ、よかった。
遊戯には悪いがオレは心の底からホッとして便箋に目を落とした。
そこに書かれていたのは。


『今日、放課後、体育館裏』


「・・・・・・・・・・・」
・・・・何だこりゃ。
思わずぽかん、と口を開けたオレに遊戯が言った。
「ね、コレってラブレターじゃ・・・ないよね?」
「・・・・あんまりそれっぽくねえな」
体育館裏ってのはまあ学校によって違うのかもしれないが普通教師は来ないし、人もめったに通らないし、あんまり素行の良くねぇ生徒がリンチだのカツアゲだのそういったしょうもないことに利用する場所ってなイメージがある。
そういや牛尾に呼び出されたのも体育館裏だったっけ。
そんであのとき遊戯が・・・。
・・・っと。
それどころじゃなかった。
オレは回想に入りたがる意識をむりやり手紙に向ける。
中にはそれだけで差出人の名前はやっぱり書いていない。

しかし・・・。
ピンクのレターセットで、体育館裏で、ぼこぼこ?

・・・何だかよくわからない。
遊戯も“体育館裏”という場所が引っかかっているようだ。
「もうひとりのボクが“ラブレターじゃないならオレ宛だ”とか言うんだよ」
・・・嬉しそうだ。
<遊戯>が。
<遊戯>相手にケンカを売って相手が無事に済むとは思えない。
敵となったら容赦しないからな、アイツ。
海馬のように性格が悪くって図々しくて図太いヤツなら何をされても平気な顔をして社会復帰してくるだろうが普通の人間にゃ、無理だ。
無理無理。
とりあえず行ってみることにしたらしい遊戯にオレは密かについていくことに決めた。
もしラブレターでなく体育館裏な用事だとしたら相手が危ない。
―もしラブレターだったとしたら。
横から来た見ず知らずのヤツに遊戯をとられてなるものか。
とまあこれがオレの本音なんだが。


「まだ来ないみたいだな」
「静かにしてろよ、馬鹿」
小声で話す。
御伽はむっとしたようだったが大人しく遊戯に視線を移した。
放課後、体育館裏に向かう遊戯を追っていこうとして御伽に捕まってしまった。
遊戯関係のこととなると御伽はカンがいい。何かあった、ってすぐにわかるらしい。
これは結構すごいことだと思う。一種の才能だな。
しかしおかげで面倒なことになってしまった。
しつこく何があったのか聞くのでざっと訳を話して連れていくことにした。
騒がれて他の連中にばれるよりマシだ。
そしてこうやって物陰から遊戯を見ている、と言うわけ。
なんちゅーか・・・デバガメみたいだ。
ちょっと情けなくなる。
でもまあまだ御伽だけでよかった。
これで見つかったのが獏良とかだったらもっと騒ぎがでかくなるに決まってる。
あいつは自覚ナシで話をかき回すのが得意だからな。
「おい」
そんなことを考えていたら向こうで動きがあった。
御伽が指差した先に。
「モクバ!?」
「し!!声がでかい!!」
思わず大きな声を出しそうになって御伽に睨まれた。
慌てて口元を押さえる。
なんでモクバが?
「何の用だ、モクバ!!」
・・・<遊戯>か。
いきなり怒鳴りつけるなって。仮にも相手は子供なんだし。
まあ声が大きいからこっちにまで聞こえていいけどな。
普通の人間なら<遊戯>の剣幕に押されちまうとこだが、しかしモクバも負けていなかった。
「お前なんかに用はない!もう一人の方を出せよ!」
「相棒に何のようだ!」
モクバのセリフを聞いて<遊戯>がますますピリピリしてるのがわかる。
遊戯に何かあったら・・・、って心配なのはわかるけどよ。
モクバは確かにあの野郎の弟だけど、本人はアニキが大好きなただの生意気なガキだと思う。
そんなに噛み付かなくてもいいんじゃないか?
アニキが大好きってとこが問題なのか。
まあでも大丈夫だろうが何かあったらすぐ出て行けるようにしていると、ふ、と遊戯の雰囲気が変わった。
「この手紙くれたのモクバくんなの?」
モクバはこくんと頷いた。
なんか・・・<遊戯>に対してと態度が違うような気がする。
つーかなんでモクバが高校の下駄箱に手紙なんか入れてんだよ。
兄の教育が悪すぎる。
「ボクに何の用?」
「遊戯にM&Wを教えてもらおうと思って・・・」
「ボクに?」
遊戯が驚いた声を出した。
「海馬くんは教えてくれないの?」
「兄サマ忙しいから・・・。それに兄サマに上手くなったとこが見てもらいたいんだ」
「じゃあボクより<もうひとりのボク>のがいいんじゃない?」
「ヤダ!!遊戯がいい!遊戯のが好きだ!」
おい!!!
さりげなく告白すんなよ!!
モクバ、お前もか。
・・・待て待て、相手は子供だ。
とオレは必死に自分に言い聞きかせる。
横で御伽は憤死しそうなイキオイだ。
落ち着け、馬鹿!
御伽を宥めてる間に遊戯の方も<遊戯>の文句を封じたらしい。
何だかんだいっても遊戯は言い出したら聞かないヤツだしな。
<遊戯>だって敵わない。
あのくそったれの無駄に豪華な家に行くらしい。
アイツ遊戯になんかしてこないだろうな・・・?
まあ大丈夫だろうけど。<遊戯>がいるし。

「いいなぁ」

手をつないで仲良く去っていく遊戯とモクバの背中を見ながら御伽が呟いた。
・・・あのなぁ。
心底羨ましそうに言うな!!情けねぇ!
しかしオレも本当は同感だった。


高校生ふたりの羨望の眼差しを受けながらモクバと遊戯は迎えの車の中に消えた。




翌日。





珍しく遊戯が不機嫌に登校してきた。
な、なんかあったのか?!
海馬のヤツになんかされたとか・・・!
いやしかしそれだったら<遊戯>が黙ってるわけがない。
パズルの方は沈黙を守っている。
「どうしたんだよ、遊戯」
「城之内くん」
御伽も気にしてこっちの様子を窺っている。
「昨日の手紙はモクバくんからだったんだ」
「そうだったのか」
知ってる、とも言えずにオレは白々しい返事をした。
すまねぇ、遊戯。
心の中で手を合わす。
「それでモクバくんとこ遊びに行ったのにさ」
「うん」
「海馬くんが帰ってきたら<もうひとりのボク>となんかよくわかんないけど、ケンカみたいになっちゃったんだ」
あ・・・そう。
まぁ・・・原因はわかんないでもないけどな。
「それでふたりでデュエル始めちゃって」
遊びに行って死闘か。
遠慮したいわな、確かに。
と思ったら遊戯の意見は違っていた。
「ボクだって海馬くんとデュエルしたいのに、ひどいと思わない?」
ずる。
思わずコケる。
ちょっと話の観点がずれてるような、気がするんだが。
うう〜ん・・・あいつらはマジケンカっつーか、遊戯をめぐって戦ってるんだと思うんだけどな。
遊戯は全然その辺わかってない。
「<もうひとりのボク>ってば全然悪いと思ってないんだよ!」
しかしちょっとふくれてみせる遊戯は可愛い。
可愛いけど。
「まぁそう怒るなって。昼休みにオレとやろうぜ」
いつまでも怒ってるやつじゃないがオレは機嫌を直してもらうために言った。
「オレのデッキも少し変えたんだ」
「ホント?」
遊戯の顔がぱっと輝いた。
嬉しそうににこにことオレを見上げる。
単純。
そういうとこも可愛いんだけどな。
これで<遊戯>に対しての怒りも薄れちまうだろう。




「ひとつ貸しな」

オレの言葉は<遊戯>に届いたのかどうか。











END





遊戯ちゃんもてもて。

2001.07.08

 

 

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