■シンデレラ(海表)■

小姑様シリーズ・海馬×表、表受
文化祭で劇をやることになりました。配役は・・・(笑)




小姑闇様シリーズとは
遊戯ちゃんを溺愛してる闇様が
大事な相棒を守るため邪な心を持って近づいてくる輩を撃退する話(ちょっとウソ・笑)です。
遊戯ちゃん逆ハーレム状態。でも無自覚。









「それでね。文化祭でやる劇の主役に海馬くんが選ばれたんだけど・・・」
「断る」
控えめな遊戯の言葉は間髪いれずに拒否されました。
しかし遊戯のほうもそんな反応は重々承知していましたのでまったく怯みません。
「海馬くんなら似あうと思うんだけどなぁ」
「貴様・・・」
遊戯が本気で誉めているのはわかるのですが役柄が役柄だけに海馬は素直に喜べませんでした。
それどころか貶されているように聞こえます。
海馬は額に青筋を浮かべて遊戯を睨みつけましたが、もちろん遊戯には何の効果もありませんでした。
「海馬くん、セリフ覚えるの早いだろうし」
ニコニコ笑いながら遊戯は続けます。
「あんまし練習しなくても大丈夫、でしょ?何でも出来ちゃうもんね」
「当然だ」
ふん!と鼻息も荒く海馬は答えました。
遊戯はおだてているわけでは決してなく、本当にそう思っていますし、実際海馬瀬人はなんでもこなせる“天才”と呼ばれるタイプの人間でした。
天才となんとかは紙一重とかいいますが。
とにかくここで『当然』と言い切れるところが海馬のすごいところです。
海馬との交渉を遊戯に任せてことの成り行きを見守っていた城之内以下クラスメート達は心から感心しました。
「それにこれに出てくれたら出席日数をオマケしてくれるって先生が」
もともと担任の「忙しい海馬くんにも学校行事の思い出を作ってあげましょう」とかいう海馬に言わせたら“余計なお世話”な一言から始まった今回のキャストなのです。
しかし遊戯の誘惑にぴくり、と海馬の眉が動きました。
忙しく、出来れば学校などなるべく行かないで済ませたい海馬には大変魅力的な条件です。
練習などに参加しなくともソツなくこなせる自信はありました。
海馬が興味をしめしたのを見てここまで黙って見ていた獏良が口を開きました。
「ちなみに相手役は遊戯くんだよ」
「よしやってやろう」
獏良の一言が決定打になり海馬は尊大に主役を引き受けました。


演目は
 


シンデレラ


***


今日は最終的な練習日です。
体育館で最初から最後まで衣装を着けてやってみるのでした。
遊戯も海馬も本番と同じ衣装を着けています。
あまり練習に参加しなかったにもかかわらず海馬の演技はなかなかのものでした。
ほぼ完璧と言えるでしょう。
「やっぱりすごいなぁ海馬くんは」
「当たり前だ。このオレを誰だと思っている!」
遊戯の賞賛の声に海馬は高笑いで答えました。
相変わらずです。
これさえなければ本当に完璧と言っても差し支えないと思うのですが。
その頃舞台の袖では継母と義姉達がよからぬ相談をしていました。
「要するに、だ」
義姉役の城之内がドレスをたくし上げて言いました。
こうしないと裾が汚れると杏子から文句を言われたからです。
ちなみに杏子が監督役でした。
「オレ達の役は海馬を苛め抜けばいい訳だよな」
「任せてくれ!!」
ちょっと違うような気がしますが、義姉その2役の御伽は大きく頷きました。
かなり力が入っています。
「頼もしいねー」
継母役の獏良がのんびりと言いました。
御伽は本当は遊戯の相手がしたかったのです。
でも海馬に決まってしまってちょっと面白くないのでした。
「ところで肝心の遊戯くんはどこへ行ったのかな?」
「え?」
獏良が舞台を眺めて言いました。
見るとさっきまで舞台の上にいたはずの遊戯は影も形もありません。
もちろん海馬の姿も見えませんでした。
「しまった〜〜!!!」
城之内が頭を抱えて叫びました。
「はやく捜さないと大変なことにっ!!御伽、お前遊戯の着替えのとこから千年パズルとって来い!!」
「わ、わかった」
城之内の慌てように御伽もつられてばたばたと駆けだしました。
「なんか面白そうだね」
獏良だけがのん気に遊戯を求めて走り出した城之内のあとをついて行ったのです。
 

その頃遊戯は海馬に体育用具室に連れ込まれてマットの上にいました。
海馬に伸し掛かられた状態で、城之内の危惧した通り「貞操の危機」です。
しかし本人はそうとは感じていませんでした。
お芝居の練習だと思っているのです。
身体が小さく大人しい遊戯はこういった催しで主役格の役等もらえたことはありませんでした。
そのため、この役をやるのをとても楽しみにしているのです。
海馬がもっと練習しよう、などというのですっかりそのつもりなのでした。
なんだかヘンだな、とは思っているのですが。
しかし海馬はキレイです。
メイク役の女子がつけた口紅がシンデレラにしては赤すぎるようにも思いましたがそれさえ海馬には似合っているのでした。
少々ごついような気はしますが黙っていれば顔立ちは整っているし、身長もあるし“モデル並みの美人”で通るでしょう。
黙っていれば、のハナシですが。
そんなことを考えていると海馬の顔がだんだん近づいて来ました。
こんなシーン、あったっけ??!!
ここで初めて遊戯は焦りました。
どうみてもキスシーンのような感じです。
シンデレラにそんな場面があったでしょうか。
白雪姫なら王子様が姫にキスするシーンがあったような気がしますが。
断っておきますが白雪姫だって姫の方が王子を襲うシーンなんてありません。
「ちょ、ちょっと海馬くん!」
「なんだ」
必死で海馬の顔を押し退けようとする遊戯に海馬は不機嫌に答えました。
「ボク王子様なんだけど」
「細かいことを言うな」
細かいことでしょうか?
遊戯は右手を押さえられてしまいました。
海馬とはかなり体格差がありますからもがいてもどかすことが出来ません。
さらに海馬のあいている手は遊戯のベルトにかかりました。
「なんでベルト外すのさ〜〜!?」
「・・・お前を食べるため」
「それ、赤ずきんちゃんだよ!!」
狼ですからそれほど遠くはない感じです。
「少し黙っていろ」
遊戯のズボンのベルトを外し、シャツを引き出していた海馬の手が遊戯の顎を捉えました。
「か、いば・・く・・・」



その時。




「遊戯!!!無事かっ!!」
「遊戯くん!」
大音響とともに体育用具室のドアを蹴破った城之内が飛び込んできました。
その後から御伽、獏良が続きます。
「城之内くん!」
遊戯が叫び終わる前に金色の物体が空を舞い、海馬の頭にとてもいい音を立てて激突しました。
「投げないでよ!」
それがなんだかすぐにわかった遊戯が抗議の声を上げました。
遊戯の大切な千年パズルです。
遊戯がいつもは首からかけて肌身離さずもって歩いているそれを今日は稽古の為に外していたのでした。
これは結構硬いものです。
海馬は思わず頭を押さえてうずくまりました。
大変痛そうです。
「か・海馬くん、大丈夫?」
大事なパズルを拾い上げ、いつもの習性で首にかけながら遊戯は問い掛けました。


が。



次の瞬間海馬の身体は部屋の壁に激突していました。
蹴り飛ばされたようです。
もうもうと舞う埃の向こうに小柄なシルエットが見えます。
額に目のような形のものが光っているのが扉の近くにいる城之内たちにもわかりました。
背中を嫌な汗が流れていきます。
「やばい!御伽、<遊戯>を止めるぞ!!」
「え??」
「このままじゃ死人が出る!」
死人、まではいかなくともマインドクラッシュで廃人、くらいはするでしょう。
城之内とて海馬は大っ嫌いなのですがなるべくなら平穏にことを済ませたいのです。
大切な友人が犯罪者になるのは止めなくてはいけません。
「海馬くんなら丈夫だから平気じゃない?」
「そういう問題じゃねえ!!」
笑顔でわりとひどいセリフを獏良が言いました。
確かに1回マインドクラッシュを喰らった割に見事社会復帰をとげている彼ではありますが2度目も大丈夫とは限りません。
・・いや平気かもしれませんが。
普通の人間とは少々違うのですから。
城之内達がそんな問答をしている横を抜けて<遊戯>に近づいた命知らずがいました。
本田です。
本田は持っていた台本を丸めて<遊戯>と海馬の頭をぽかり、と叩きました。
臨戦体制に入っていた<遊戯>と海馬は虚をつかれた形でフリーズ状態です。
遊戯はウジャトの紋を浮かべたまま、海馬はブルーアイズを握りしめたまま。
「まったくせっかくの衣装を汚しやがって」
本田は今回裏方で大道具などの担当です。
大道具だけでなくいろんなことも手伝ってかなり大変そうだったのを遊戯は知っていました。
「ごめんね、本田くん」
心から申し訳無さそうに遊戯が言いました。
いつの間にか遊戯に戻っています。
城之内は安堵のため息をつきました。
殺人現場に居合わせるなんてはめにはならないですんだようです。
「まあいいさ。そんなに汚れてないようだしな」
「うん。ホントにごめんね」
重ねて謝った遊戯に本田は言いました。
「もういいって。ほら、練習の続き、続き!」
「うん、海馬くん、いこ!」
本田に急かされて遊戯が海馬の手を引っ張ります。
たくらみを阻止された海馬は面白く無さそうに遊戯に手を引かれて舞台へ戻りました。
計画は完璧だったはずなのにどこで失敗したんでしょう。
海馬の思考を遊戯の声が破りました。
「海馬くん、やっぱり似合ってるよ」
「何?」
思わず海馬は聞き返しました。
「とってもキレイだよ」
ニコニコと笑いながら。
王子様は自分よりも身長の高いお姫様をエスコートしてご機嫌です。
遊戯の機嫌に反して海馬はとても誉められているとは思えませんでした。
なにしろお姫様役ですし。
だけど遊戯の手がとても温かかったので、文句は言いませんでした。
遊戯の体温が指先から伝わってくる感触。
これはこれでいいか、と思ったのでした。






このお話はとりあえずここでおしまいです。







しかし。
本番、シンデレラは12時になって階段を駆け下りるシーンで上から<王子様>に突き飛ばされたとか、されなかったとか。



ただ王子役を楽しみにしていた遊戯に拗ねられた<遊戯>がご機嫌をとるのに苦労したという噂はどうやら事実のようです。

 

 

 

END






最後の<王子様>は当然闇様で(^_^)




2002.05.01

 

 

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