■海馬家の闇(乃表)■

小姑様シリーズ・乃亜→表、表受
アニメ番外・乃亜→表っつーか・・・。タイトルの割にギャグですので(^_^)




小姑闇様シリーズとは
遊戯ちゃんを溺愛してる闇様が
大事な相棒を守るため邪な心を持って近づいてくる輩を撃退する話(ちょっとウソ・笑)です。
遊戯ちゃん逆ハーレム状態。でも無自覚。









「うわーすごいねぇ!」
遊戯が感嘆の声を上げた。
オレも確かにすげぇなあとは思うがコレを作ったのがあの野郎だと思うと遊戯のように感心できない。
まあこういう素直で可愛いところが遊戯のイイトコなんだけどな。


学校帰り、遊戯は校門前で待っていたモクバに家に来て欲しいと頼まれた。
あっさりと二つ返事で了承した遊戯にオレも付いていくことにした。
遊戯だけじゃ心配だからな。
今日がバイトのねぇ日でよかったぜ。
何しろ海馬の家の門を潜っていいことがあった例なんかないからな。
何度もひどい目にあってるって言うのに遊戯のヤツは危機感がない。
海馬のヤツがヘンなことしてこないように見張ってなくては。
モクバのヤツはちょっと『城之内は呼んでない』って感じの嫌そうな顔をしたけど知らん顔して迎えの車に乗り込んだ。

海馬の家に着くとあの野郎が居てこっちははっきりと言った。
「凡骨などには用はない!」
「うるせえ」
遊戯だけなんか寄越せるかっての。
お前が何するかわかんないからな。
オレが守ってやんなくちゃ。
まあこんなこと言ったら遊戯が「ボク女の子じゃないよ」なんて臍を曲げるから言わないけど。
「ケンカしないでよ二人ともー」
いがみ合うオレ達の間に遊戯が割ってはいる。
ヤツがふん!と顔を背けたのでオレもふんとそっぽを向いた。
「遊戯こっち」
モクバが遊戯を呼んだ。
海馬が動いたので遊戯もそれに付いて歩き出す。
オレも遊戯の半歩後を付いていった。
モクバがひとつの部屋の前で立ち止まった。
「会いたいって、言うからさ」
言いながら扉を開く。
部屋の中に立っていたのは。
 

「乃亜、くん?!」


遊戯が叫んだ。
確かにそこに立っていたのは乃亜だった。
海馬乃亜。
海馬の家の本当の子供だかなんだかで子供の頃死んだらしいが、コイツのおかげでひどい目にあったんだ。
海馬家の闇だかなんだか知らないがこいつらに関わるとマジでロクな事がない。
「遊戯」
乃亜は遊戯の名を呼んでにっこり笑った。
「・・・本物?」
遊戯はゆっくり乃亜に近づく。
乃亜と会ったのはバーチャルの世界だったから遊戯の疑問も尤もだ。
「本物だよ、遊戯」
乃亜は遊戯の手を取った。
「ボクは現実の身体を手に入れたんだ」

要するに、だ。
モクバがどうも乃亜に同情的で、海馬のヤツに乃亜の身体を作ってやって欲しいと頼み込んだらしい。
あのバカ兄貴は弟には弱いからな。
・・・誰か今人のことは言えないだろうとか言わなかったか?
空耳か。
「海馬くんありがとう」
なんて礼を言ってるところを見ると遊戯も一口噛んでいたらしい。
「このオレにかかればこんなこと容易いわ!」
などといつも通りの海馬節で高笑いをしているがヤツも遊戯に尊敬の眼差しにまんざらでも無さそうだ。
まあとにかく人工皮膚だかなんだか知らないがぱっと見とてもヒューマノイドとは思えない。
普通の、人間の子供だ。
そして冒頭の遊戯の台詞になるんだが。
「よかったねぇ」
遊戯は嬉しそうに乃亜の髪を撫でた。
よしよし、って感じで。
小さい子相手にやるような仕草だ。
外見はバーチャル世界で会った時と同じ子供のままの姿だけど中身は俺たちと同じくらい、または年上なハズだから嫌がるかと思ったが乃亜は大人しく遊戯にされるがままになっている。
心なしか嬉しそうにさえ、見えた。
ずっとこんな風に人に触れられたことなんかなかったんだろうなぁ。
あんな電脳世界で、ひとりぼっちで。
そう思うと少し可哀想な気もしてくる。
・・・遊戯ほどじゃないがオレも相当お人よしだ。
あんなにひどい目にあわされたのにな。

乃亜の頭を撫でていた遊戯の手がふと止まった。
くるり、と海馬を振り返る。
「ねえ海馬くん!」
とてもイイコトを思いついた、と言った表情だ。
「このひゅーまのいどっての、もう一人のボクのも作ってくれないかなぁ?」
ああなるほど、そうすりゃもう一人の遊戯も実体が手に入るって訳だ。
「貴様らとこいつとでは事情が違う。無理だ」
オレが納得して頷くより早く海馬のダメだしが出た。
「どうして?」
即座に却下されて遊戯は少々しょぼくれる。
でもいい案だと思うんだけどなぁ。
遊戯と<遊戯>と同時に遊んだり出来る訳だし。
まてよ、2人になるってことは。
少なくともイイトコロで突然チェンジされたりってことはなくなるわけで・・・・。
「貴様らの場合、クローンを作った方が早い」
「って、おい!!」
オレが考えに耽ってる間に明らかに違法な話になっていたので慌てて止めた。

「瀬人は」
黙って見ていた乃亜が口を開いた。
「タイプAが好きなのかい?」
タイプA?
こっちの遊戯のことか。
まあ・・そうだろうな。
聞かれた海馬は答えない。
用心してる、って感じだ。
乃亜はこいつの親父の実の息子だしな。
何か企んでるかも、と思うのも無理はないか。
でもこいつら、すごく似てると思うんだけど。
海馬の沈黙をどうとったのか乃亜はフッと笑った。
ちょっとやな予感がしたり。
乃亜は遊戯の手を取った。
「遊戯」
そのまま遊戯の目を覗き込む。
「ボクはこれからちょっと寝ようと思うんだけど」
そこで乃亜は言葉を切った。
それからちょっと言いにくそうに続ける。
その仕草がなんて言うかものすごく。
演技派。
って感じで。
「ボクが起きるまで傍にいてくれないか?」


「目が覚めたとき、ココが現実だとわかるように」


だー!!
遊戯の手を両手で包むようにしてちょっと目を潤ませて『お願い』している乃亜はどう見ても可哀想な子供にしか見えない。
すごーく嘘っぽいんだが。
そう思うのはオレの思い過ごしか?
でもこれはどう見てもあからさまに海馬に対する嫌がらせだ。
騙されるな、遊戯!
が。
「うん、いいよ」
案の定遊戯は言った。
ああもう・・・少しは人を疑えよ!
とオレが言う前に海馬が乃亜を遊戯からべり、と引き剥がした。
乃亜が不満そうに口を尖らせる。
それからまた何か思いついたようで、に、と笑った。
とことこと海馬の後ろに居たモクバに近づいてさっき遊戯にしたように手を取る。
「じゃあモクバ、一緒に寝よう」
「だめだ!!」
海馬が怒鳴った。
乃亜の手から弟を取り返す。
向こうの世界で乃亜がモクバを人質にとったこと根に持ってる、よな。これ。
どっちにしろブラコンだよな。
「帰ろうか、城之内くん」
「え?・・・<遊戯>?」
揉める海馬家を他所に<遊戯>が言った。
いつの間にか交替して<遊戯>になっている。
<遊戯>もあんまり乃亜のことよく思って無いからなぁ。
遊戯のこととなるとどうも過保護になるところがあると思う。
そのまますたすた部屋を出て行こうとする<遊戯>の後をオレは慌てて追いかける。
モクバが俺たちに気が付いて車を出す、と言ったが<遊戯>はやんわり断った。
海馬と乃亜の言い争う声を後にオレたちは家路についた。

 

とにかく当分は厄介ごとの増えた海馬の近くには遊戯を近づかせない方がいいだろう。




オレたちの意見は珍しく一致した。









END

 





モクバちゃんが王子の身体作ってくれるように兄サマに頼んでもいいって言ってくれたので(^_^)


2002.08.25

 

 

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